第20話 鬼灯(ほおずき)
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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杏寿郎が任務に旅立った後、霧香は響凱の元へ向かった。
使役鬼となった響凱は現在、海野家の本家にある『鬼灯(ほおずき)』という結界の中で過ごしている。
その結界の中では朝や昼間でも日光が当たることはない、簡単にいえば一日中暗いのだ。
灯りといえば提灯のような小さな光が無数に天上に吊るされている、それが植物の鬼灯に似ているので五大呪術家の一門では『使役鬼が暮らしている結界』を『鬼灯』と呼んでいるのだ。
「響凱、体調はどう?」
獣の肉を持って響凱のいる庵に入る霧香。
「霧香か、小生は大丈夫だ。鬼であるのだからすぐに回復するのは知っているだろう?」
「うん、でも・・・あんなに自分の腕を噛んでいたから」
柱合会議前の裁判で五大呪術家の使役鬼が人を襲わないという証を立てるため飢餓状態で試された響凱。
霧香を喰わない様に自分の腕に喰いつき、離さなかった。
鬼なので欠損すれば再生するのだが、使役の術を戻し、倒れた響凱の元に駆け寄った彼の腕は悲惨なものだった。
よほど強く噛んでいたのだろう、牙の跡が深く残り、肉も抉れ、骨が見えていた。
「あの時、再生するとわかっていても悲しかったんだよ・・・響凱が耐えてくれたのは嬉しかったけど、腕があんなになるまで噛み付いて・・・あれじゃ、腕を食いちぎってもおかしくなかったんだから」
「それくらいしなければ小生は己を御しきれなかった、お前を喰わずにいれるなら腕の一本や二本食い千切ってもいい」
霧香の頭を撫でる響凱。
鼓の屋敷ではあれだけ狂暴だったのが嘘のようだ、『懐かれたな』と苦笑する霧香。
そして用意して来た獣の肉を差し出す。
「はい、ご飯だよ」
「ああ、いただこう」
響凱は獣肉に噛り付く。
「鬼灯(ここ)にはもう慣れた?」
「ふむ・・・最初は他の鬼たちがいたので難儀したが、何とかなっている」
通常『鬼は群れない』と言われているが、五大呪術家一門の鬼たちは仲が良い。
各一族の鬼たちは各家に鬼灯が作られ、共同で生活をしている。海野家の使役鬼は響凱を含めて七名いる。
「晴哉兄さんと那津蒔兄さんの鬼は年長者が多いけど上手くやれてる?」
「ああ、あの五人には術の手ほどきを受けている。少しでも主であるお前の役に立ちたいからな」
「音羽とは?」
「お呼びですか?」
振る向くとかつての勇翔だった音羽が立っていた。
「お久しぶりです、霧香様」
「音羽、昔みたいな呼び方でもいいんだよ?」
「いいえ・・・私は今や『使役鬼』となった身分、恐れ多いです」
昔から実直で遠慮がちな勇翔、鬼され名を『音羽』に変えても性格までは変わらなかったようだ。
「音羽には友のように接してもらっている、小生の書き物をよく読みに来てくれる」
「そうなの?」
「ああ、鼓を奏でる際も笛を持って来て一緒に合わせることもある」
「へえ~!」
勇翔は昔から楽器が上手く、姉の椛の舞の練習にも付き合っていた。
「響凱の鼓は響きがいいので私の笛と合わせやすいのですよ」
霧香を挟んで座る音羽。
「そっか・・・上手くやれてて良かった!」
微笑む霧香、長らく孤独に過ごしてきた響凱がいきなり複数いる鬼の住処へ入り、戸惑っていないか心配だったが一安心だ。
「響凱!邪魔するぞ!」
そこへ男鬼が二人入ってきた。
「紅虎(べにとら)!黒椎(くろつち)!」
紅虎と黒椎は那津蒔の使役鬼だ、二人とも戦国時代に戦の最中、鬼舞辻によって鬼にされた。
そのおかげもあり戦で死にはしなかったのだが、人を喰わずにいられないことと、愛する家族に会いに行くことができなくなり、死に場所を探していたところ海野家の先祖に出逢い使役鬼となった。
完全に鬼として堕ちる前に使役鬼になったことから人間の頃の記憶を持っている。
獣肉を与えられてから血鬼術を発現させている、その能力も優れており、二百数年鍛錬した結果大した武闘派になったのだ。
「おお、霧香!今日も甲斐甲斐しく世話焼きにきたのか?」
「いいでしょ!私の初めての鬼だもん!」
「『初めて』か、初々しいね!」
最初に絡んできたこの鬼が黒椎、少々お調子者だが兄貴肌で音羽も頼りにしている。
「黒椎、主の妹御だぞ・・・口の利き方に注意しろと何度も言ってるだろう」
「いいじゃねーか!那津蒔も気にしねーよ!」
黒椎を注意しているのが紅虎だ、黒椎より少し前に入ったので先輩という立ち位置だが黒椎は気にしてない。
「全くお前という奴は・・・百年経っても二百年経ってもその主に対しての言葉遣いを直そうとは考えないのか?」
「あ?だってよ、そもそも俺の性格を理解して気の合う『次の主』を探してくれてんだ。主自身も『様』付けしなくていいって言ってんだから構いやしねーよ」
またしてもため息をつく紅虎。
「いいよ、紅虎。私も黒椎は『お兄ちゃん』だと思ってるし」
「恐縮です、霧香様・・・しかし、我らも古参といわれる身ですので黒椎にはその自覚を持ってもらいたいものです」
「ああ?阿古夜(あこや)と雲雀童子(ひばりどうじ)のことか?」
「そうだ、俺たちが古参としてしっかりしなければ響凱はもちろんあの二人にも示しがつかんだろう」
阿古夜と雲雀童子というのは晴哉の三人の使役鬼のうちの二人で音羽と同時期に使役鬼になった者達だ。
「特に雲雀は子供だ、年長者が言い聞かせねばいけない」
「相変わらず真面目だなぁ、お前」
「お前がだらしなさすぎるんだ、少しは響凱の素直さと音羽の謙虚さを見習え」
「けっ・・・」
ドカッ!と三人の前に胡坐をかく黒椎。
「おっ、獣肉じゃねーか!いただ・・・」
「駄目!これは響凱の分!」
「何だよ、一つくらいいいだろ?」
「だーめ!後で那津蒔兄さんにもらうんでしょ?響凱は治療のために早めに持って来てるんだから食べないで!」
「へいへい、すいませんね~」
手をヒラヒラさせながら獣肉から身を引く黒椎。