第15話 隊律違反
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「全集中・・・水の呼吸・拾壱の型―――」
〈拾壱の型!?〉
驚くのも無理はなかった、炭治郎が鱗滝から伝授された水の呼吸には『壱』から『拾』までの型しかなかったからだ。
「『凪(なぎ)』」
男が静かに発すると累の糸は一本残らず切られ、散り散りになった。
〈何だ?何をした?奴の間合いに入った途端、糸がばらけた〉
一本も届かなかったのだ、今までよりもより硬く最高に切れ味の鋭い糸が・・・。
『拾壱の型・凪』は富岡義勇が編み出した彼だけの技だ。
『凪ぎ』とは無即状態の海のこと、海水は揺れず鏡のようになる。
義勇の間合いに入った術は全て凪ぐ、無になるのだ。
信じられない累はもう一度血鬼術を発動せようとするが義勇の刀の方が早かった。
今度こそ累の頸は斬り落とされた。
〈くそっ、くそっ・・・殺す、殺す、あいつらだけは必ず、殺してやる!!〉
そう思い霧香と炭治郎を見た、二人は各々の『大事な人』の元へ寄り添っていた。
炭治郎は動かすのが辛い体で何とか這いずって妹の元へ辿りつき覆いかぶさるように抱きしめている。
霧香は元に戻った響凱の頭を抱いて泣いていた。
「響凱、良かった・・・あんな無茶して・・・」
「小生にとってこの程度、なんでもない」
「いくら鬼が日輪刀以外の武器で斬られても大丈夫だからって・・・私は響凱が傷つくのは悲しいし、苦しいよ・・・」
「小生にとってはお前が傷つく方が悲しいし、苦しい・・・もう、あんな無茶はしてくれるな」
「・・・・うん」
大粒の涙を零しながら微笑む。
「ありがとう、弟を守ってくれて」
「お前と『お前の大事なもの』は小生が守る、お前が小生を守ると誓ってくれたように・・・」
霧香は懐から円盤を出した。
「さあ、後は大丈夫だから・・・海野家の鬼灯で休んで」
「ああ、そうさせてもらう」
『観世水』の模様がまた輝くと響凱の姿は消えていた。
それを見た累はふとある時、母親の鬼に問われたことを思い出した。
『累は何がしたいの?」
この問いに関して累は答えられることができなかった、自分には人間だった記憶が朧気だったから。
だから本物の家族の絆に触れれば、記憶がもっと鮮明に戻るかと思っていた。自分の欲しいものがわかると思っていた。
〈そうだ・・・俺は・・・〉
累の脳裏には遥か昔の記憶が広がった。
それは鬼ではない自分・・・・人間だった頃の記憶。
自分は身体が弱かった、生まれつきだった。
他の子供たちが広い大空の下で元気に遊んでいるのに自分はずっと狭い部屋の中で布団の上で寝ているしかできなかった。
走ることはもちろんできなかったし、歩く事さえ・・・。
ただ、苦しかった。
でも白い背広を着た赤い瞳を持つ男・鬼舞辻無惨が現れたことによって変わった。
「可哀そうに・・・私が救ってあげよう」
鬼舞辻によって累は雪の降る夜、鬼になった。
累は両親に喜んで欲しかった、自分が生まれつき体が弱いことで両親が苦しんでいたことを知っていたからだ。
自分が『丈夫な子供』だったら、どんなに両親は救われるだろうか・・・。
いや、今からでも救える。
この鬼舞辻無惨という男が自分を『丈夫』にしてくれる!
『これで両親の喜ぶ顔を見ることが出来る!』
累はそう思っていた、しかし・・・累の両親は違った。
『丈夫な体』を手に入れても陽の光に当たることが出来ず、人を喰わねば生きられない体になってしまった息子を両親はひどく嘆いた。
父は怒り、母は泣いていた。
そしてあろうことか・・・・累を殺そうとしたので累は両親を殺した。
『ごめんね・・・丈夫な体に、産んであげられなくて・・・ごめんね・・』
『大丈夫だ、累っ・・・一緒に死んでやるから・・・!』
母は最期に自分に謝り、殺そうとした父は罪を共に背負って死のうとしてくれていた。
だが、自分は気づかずに己の手で両親を殺めた。
後悔した、自分で『本物の家族の絆』を壊してしまったのだから・・・。
「全てはお前を受け入れなかった親が悪いのだ、己の強さを誇れ」
そんな累に鬼舞辻は慰めの言葉をかけた。
累もその言葉に縋るしかなかった、そうしなければ壊れてしまいそうだったから。