第1話 雪の剣士
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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実際、山を下ってみるととんでもなかった。
暗いし、酸素は薄いし、寒い・・・しかもとても罠が多い。
刃物がないだけでも良しと考えるべきだったかもしれないが、それでもとんでもなく過酷だった。
まだ『幼い』と言われる十歳の女の子相手でも鱗滝師匠は容赦はしなかったのだ。
約束の夜明け前に小屋に辿り着き、鱗滝師匠から認められたは良かったものの、その後の体の基礎を叩き込まれるのは更なる過酷さだった。
「ゼェー・・・ハアー・・・ゼェー・・・ハアー・・・本当に殺す気ではなかろうか」
何度この言葉を吐いたか、最初は釣り罠、引っ掛け罠、石や木材を使った飛び罠、落とし穴など少し擦り傷を作る程度のものだったのが、次第に刃物が増えて行き、飛び罠も手裏剣や苦無、落とし穴の中にも剣山のように刃物が出迎えてくる。
そして木刀での素振り、十や百の値ではなく千回以上の振りを山下りの後にやらされた。
そして体捌き、どんな体制に陥ろうとも受け身を取れるようにすることや技を繰り出せるようになるため組み手で教わった。
正直、ここまでで脱落者や死者が出ると言われたことも納得がいった。
これでは罠に落ちて最悪、命も落とすし、厳しい修練に根を上げる者も出てくるだろう。
でも私は耐えた、理由は『一門に生まれた者の役割を果たすため』だったと思う。
当時、十歳の私は鱗滝師匠に弟子入りする前から父から兄や姉と一緒に異形の術や陰陽術を習っていた。
しかし、私は兄や姉ほどの才能はなく、中の中という中途半端な実力しかなかった。
『鬼』と相対したとして果たしてやっていけるだろうか・・・
両親もさぞ悩んだことだろう、そこで『鬼狩りの候補者』の件にいたったのだろう。
私も自分の能力をもっと知りたかったし、何より『呼吸』というものに興味があった。
呪術家の技だけでは心もとない私も鬼狩りの能力を身につけられれば、兄たちや姉と肩を並べられるかもしれない。
そう思った・・・・。
しかし、現実はそれすらも私から遠ざけた。
――――――――――――――――
それは師匠の元へ弟子入りして三年が経過したころだった、私は十三歳になり、真剣を持って師匠と呼吸の会得の修練に本格的に入っていた。
「こうですか?」
「いいや」
「こう?」
「違う」
「んん~?」
「唸っている暇があったら体を動かせ!」
「いだいっ!?」
水の呼吸法と型を教えてもらい始めてから既に一年が経っていたがどうしても体に呼吸法も型も落とし込めずにいた。
「いでで・・・今日もボロボロだぁ~」
「大丈夫?霧香・・・」
その頃、私には数か月違いで入門した姉弟子がいた。
真菰だ、彼女は私と違い一つも二つも上の段階の修練をしていた。
兄や姉、勇翔さん以外にこんなに楽しく話した相手もいなかった私にとって彼女はライバルでもあると同時に親友だった。
「良いんだよ、真菰・・・」
「霧香・・・」
「『飲み込みが遅い』っていうのは・・・自覚してるもん」
だって・・・聞いてしまったのだから。
半年前、経過報告として師匠と実家に帰った。
久しぶりの我が家、師匠は両親と話があると席を外していたので私は厳しい修練のことも忘れて兄や姉、勇翔さんと話した。
兄たちは修練を怠らずに励んでいてますます力を付けていた、姉からは怪我の心配をされて、勇翔さんからは元気づけられた。
ところがふと自分の部屋に取りに行きたいものがあったのを思い出し、兄弟団欒の席から抜けた。
その時だ、別室にいる両親と師匠の声が聞こえたのは・・・・。
「それは本当か・・・?」
「ああ」
「?」
障子の影から話し声に聞き耳を立てた。
「霧香が水の呼吸を会得するのは難しいかもしれん」
「っ!?」
声が出そうになったが、留めた。
自分が『呼吸』を覚えることが出来ない可能性がある・・・師匠はそう言っている。
「海野家は異形の術の中で『水』の属性を持つ一族だが・・・それであるが故に、水の呼吸と霧香の中にある異形の呼吸が噛み合っていない様に思える」
衝撃だった・・・今まで水の呼吸と『水』の異形、同じ『水』だから一番波長が合うだろうといわれてきた。
それを私の代で覆されたのだ、自分は剣士になれないかもしれない。
そんなことは考えたくもなかった。