第1話 雪の剣士
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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『霧香、お前を鱗滝に弟子入りさせる』
それは私が十歳の頃に言われた突然の父からの言葉だった。
『弟子入り・・・?』
『そうだ、平安の時代より陰陽術で鬼と闘って来た私たちだが時代の経過とともに彼ら(鬼)の能力が高まりつつある。
そのため我ら呪術一門からも鬼狩りを輩出することになったのはお前も知っているだろう?』
『はい』
『政府から公に認められてはいない鬼狩りだが、鬼の力を削ぐには十分な能力を持っている。
お前にもその能力、呼吸を会得してほしいのだ』
私の家は平安時代から続く陰陽師の一族だ。
陰陽師とは今でいう神職だ、厄払いや祈祷、天候を読み解き、良き道標を人に巡らせる。
『戦闘』などという『力仕事』とは全く無縁といってもいいだろう。
しかし、私の家は違うのだ・・・・いや『私たちの一族』は違うのだ。
表向き『陰陽師』という厄除けや祈祷を行うものたちがいるが、私たちの一族はいわば裏の存在だ。
平安時代より霊力が高く、異形の力が使えたがために帝から『鬼退治』を命じられ『裏の陰陽師』として行動することになった一族。
五大呪術家――
安倍晴明を始祖とし、その安倍晴明が妖との間に成した五人の子供が私たちの先祖だ。
陰陽師として能力は安倍晴明、異形の術は妖、2つの術を扱える私たちの先祖は鬼退治にはうってつけだったのだろう。
書物にしか記されていないが、平安時代にも人の闇はあるもので『人ならざる者』を『鬼』と称した。
その鬼たちが夜な夜な蔓延っている。
『鬼』は普通の攻撃では倒すことが出来ない。
そのため『特殊』な力を持つ者が必要だったのだ。
『霧香――、私たちの一門は産屋敷家と協定を結ぶにあたって『一族から鬼狩りの子供を出すこと』を条件として出され、受け入れた。
跡継ぎ以外の子供を少なくとも一人は出さなければならないの・・・』
『・・・・』
父の横に並んで座っている母が言った。
『我が家からはあなたを『鬼狩りの子供』として出すことに決めたの・・・わかってちょうだい』
『・・・・・・』
『でも、これだけは覚えておいて。
私たちはあなたを見捨てるわけじゃない、強くなってほしい・・・そのために鱗滝様のところに弟子入りさせるの。最終的に最終選別に出すかを決めるのは鱗滝様よ、あの方が『無理』だと判断された時は、遠慮なく帰ってこればいいわ。
でも、『無理』だと言われるまで呼吸を会得は諦めては駄目よ。最初から諦めるのは教わる方に対して失礼ですからね』
『はい』
『霧香、辛い道に進ませる父と母を許してくれ』
その数日後、私は鱗滝左近次の元へ旅立つことになった。
「霧香ちゃん」
「勇翔さん」
「今日から鬼狩りに弟子入りするんだってね」
この人は勇翔さん、晴哉兄さんと同い年で兄さんが小さい頃から家に仕えてくれている隠密同心だ。
産屋敷家でいう影みたいなものだ、裏の陰で私たちには大ぴらに動けないことをこなしてくれている。
「狭霧山だったね、山の気温はここより寒いだろうから体には気を付けるんだよ」
「うん」
「晴哉様たちや椛様のことは俺に任せて」
「うん」
「必ず、生きて帰ってくるんだよ」
「うん!」
正直、鬼狩りの修練や選抜がどういうものかは知らない。
でも、他門の鬼狩りをしている人たちの話ではまさに『生き死にを別けるもの』らしい。
私の一門でも過去に呼吸の途中で死んだ者、選抜試験で戻ってこなかった者もいると聞いた。
それでも子供を輩出するのは御家を鬼から守るためと『表』の世界を守るためのこともあるのだろう。
勇翔さんに見送られて、私は狭霧山に住む鱗滝左近次を訪ねた。
彼の印象は正直奇妙だった、大人としては小柄だ。自分の兄である晴哉は二十歳だったが六尺(180cm)ほど身長があった。
それに対してこの師匠は五尺と五寸くらいだろう・・・そして少し頼りなさそうに見えた。
「お前が海野霧香か?」
「はい」
「わしは鱗滝左近次、今日からお前の師匠になるわけだが・・・・その前にお前が剣士としてやっていけるのか試させてもらう」
「え?」
「ついて来い」
そう言われて私は狭霧山の頂上へ連れて行かれた。
そこで言われた最初の試練は『山下り』だった、夜が明ける前に先ほどいた山小屋まで戻って来いと言われた。
この時まで私は『なあ~んだ、ただ山を下るだけか』と甘い考えをしていたのだった。