「こいつら馬鹿か！隊員同士でやり合うのがご法度だって知らねえのか！」

「アンタが言うんじゃないわよ！伊之助！！」

「彼らは自分の意志で動いているわけではないわ、動きが妙よ」

ユラユラ動く隊員は一人ではなく、複数人現れ、襲いかかってきた。



キリキリキリ―――・・・


「妙な音がする」

「音？何ですか？」

「何かを引っかけてるような・・・括っているような・・・」

「括る？つっ！」

霧香の話に夢中になっていたせいか目の前にきた隊員への反応が遅れた炭治郎。

「ウラアアァァ！！ボサッとしてんじゃねーぞ！！」


隊員の後ろから突進してきた伊之助に救われる炭治郎。

「伊之助っ・・・ありがとう！」

「（ホワホワホワ・・・）」



「・・・・・」


倒れている隊員を見ている霧香だが、あるものを見えた。

「みんな、少しその隊員たちの注意を私から逸らして！」

「何か分かったの？」

「うん！これで隊員たちを救える」

「わかったわ！さっさとしなさいよね！」

琴乃とアカリが霧香に向かわないよう壁になってくれる。


「使役術・解！」

懐から小さな円盤を取り出す霧香。

「来い、響凱！」


円盤の『観世水』の模様が光ると響凱が現れる。

「呼んだか？小生を」

「うん、あなたの鼓の力を貸してほしいの」

「承知した」


響凱は鼓を叩く。
そして霧香は呪符を取り出す。



「波流門・鬼術――・・・『波紋鼓（はもんつづみ）』」




ポーンッ――・・・ポポン――・・・



ザーッ・・・ザーッ・・・



響凱が鼓を鳴らすごとに水が隊員たちの体に振り落ちる。


『！』


炭治郎たちは隊員の体の異変に気付いた、彼らの体には糸が何本もつけられていた。

「それだ！その糸を斬れば彼らは解放される！！」

「そう・・・そういうことね！！わかればこっちのものよ！！」

今度はアカリが懐から円盤を取り出す。


「使役・解放！来なさい、燕薇（えんび）！」


『巴（ともえ）』の模様が光ると人型ではあるが手と尻に羽が生えたのような鬼が出てきた。

「お呼びでしょうか？アカリ様」

「あの隊員たちを括ってる糸を斬ってほしいの！全員を助けるにはあなたの力を使った方が手っ取り早いわ！」

「畏まりました」

燕薇は飛翔した。

「行くわよ！炎羅門・鬼術――・・・『紅飛燕（べにひえん）』！」


燕薇の体を炎が纏い、突っ込むと一人また一人と素早く背中の糸を燃やされていく。



バタバタバタッ・・・・




糸を斬られた隊員たちはその場に倒れ込む。


「こ、これは？それにあの鬼―――・・・」


『あの鬼』というのは響凱のことだ、霧香は確かに倒したと言った。
しかし倒したはずの響凱がここにいる・・・どういうことか？

「炭治郎くん」

その時、肩を叩かれた。振り向くと琴乃が立っている。

「ここは霧香たちに任せて、私たちは『操っている本体』を探しましょう」

「本体・・・？」

「隊員たちの傍を見て」

「っ！？」

言われるまま見ると小さい蜘蛛が何匹も死んでいる。

「これは・・・」

「おそらく彼らについていたのは『蜘蛛の糸」よ、その糸で操っている者がいる。
霧香とアカリの術で糸をいっぺんに斬ることは可能だけど、本体が見つからない限り、蜘蛛たちはまた出てきて糸を紡いで繋ぐ。

これでは『人形』を倒してもキリが無くなるわ、本体を斬ってしまった方が得策よ」

「わかりました！」

「伊之助くんも手伝って」

「言われるまでもねぇ！！」



すると三人の上に影が射す。