「君の顔に文句はない！こぢんまりとしていて色白で良いんじゃないかと思う！」

「殺すぞテメェ！！かかって来いッ！！」

「ダメだ、もうかかって行かない！」

「もう一発頭突いてみろ！！」

「もうしない！」




「ねえ～！」

「「！」」

「あなたたち、もうそのくらいにしたら？特に顔の綺麗なあなた、今、平気な顔してるけど徐々に体に頭突きの影響が出てくるわよ～！」

琴乃が注意するも美少年の方はますます頭に来たようで・・・。

「ああ！？邪魔すんじゃねェ、女ァ！！それともお前が俺とやり合うか？」

「力比べは負ける気がしないけど・・・でも無理をしない方がいいわよ～！」

「『負ける気がしない』だとォ・・・？上等だァ―――っ！！俺は嘴平伊之助だァ！！覚悟しろォ！！」

「『はしびら』・・・・珍しい名前ね～？どういう字を書くの～？」

「！？」

『字』と聞かれて少し動揺する美少年。

「お、俺は読み書きができねェんだよ！名前ならふんどしに書いてある・・・っ！？」

すると美少年の動きが止まった。

「あら？」

「「「「？」」」」


しばらく立ち尽くしたままだったが、少し立つと後ろ向きに倒れてしまった。

「うわあああァァ―――っ、倒れた！？死んだ？死んだ！？」

善逸が騒ぐ中、琴乃が様子を見に行く。

「いいえ、これは脳震盪ね～。まあ、あれだけ『良い音』させてたらこんな状態にもなるわよね、それにしても頭蓋骨が骨折してないのは、不思議なくらいだわ」

「え？割れてない？嘘でしょ？」

「触った感じ割れてないみたい」

「頭突きしたあいつもそうだけど、こいつもどんな頭蓋骨してるのよ！！」

青ざめて叫ぶアカリ。

「炭治郎・・・もう頭突き禁止ね」

「何でですか？」

「危ないから」

「あ、はい！鬼と闘うとき以外は使いません！」

「鬼と闘う時も踏まえて使わないでほしいな・・・」






――――――――――――――――

「ハッ！」

脳震盪で気絶してしまった猪の美少年・嘴平伊之助はしばらく眠った後、急に起き上がった。


「うあああァァ――――っ！！」

「ギャアアアァァ―――！！起きたァ！！」

「勝負、勝負ゥ！！」

「寝起きでこれだよ、一番苦手だよ、これ！！」

伊之助は起きて早々、善逸を追い回す。

「琴乃さあぁぁ―――んっ、助けてェェ―――ッ！！」


「あら、起きたの？彼」


「・・・・・」

善逸が琴乃の後ろに隠れたため自然と琴乃達のやっていることが目に入る。

「何してんだァ！お前ら！！」

「「「「埋葬」」」」

「ま、埋葬？」

「起きたのなら伊之助も手伝ってくれ、まだ屋敷の中に殺された人がいるんだ」

「生き物の死骸なんて埋めて何の意味がある！？やらねェぜ！手伝わねェぜ！！そんなことより俺と戦え！！」

〈この子は何でここまで『戦い』に執着するんだろうか・・・〉

その気持ちは霧香だけでなく、琴乃やアカリ、善逸も同じである。

「そうか・・・」

しかし、ここには伊之助の言葉を別の意味で変換する人が一人。

「傷は痛むからできないんだな？」

「は？」

「いや、いいんだ！痛みの我慢できる度合いは人それぞれだ。亡ってなる人を屋敷の外まで運んで土を掘って・・・埋葬するは本当に大変だし、力仕事は琴乃さんが手伝ってくれるし、墓づくりも善逸や霧香さんたちがやってくれている。伊之助はもう少し休んでいるといい！」


『ニコーッ』と笑う炭治郎に対し、伊之助は怒り出した。
二人は根本的に考えがズレている・・・。


「はあ―――ん！？舐めるんじゃねぇぞ！百人でも二百人でも埋めてやるよ！！俺が誰よりも埋めてやるわ！！」


それからの伊之助は早かった、負傷をして尚且つ炭治郎に頭突きをされたはずなのに、ピンピンして屋敷の中から遺体を運んで、墓穴を掘り埋めて、墓石を置く。

あっという間に埋葬が終わった。