第10話 使役術
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「小生はお前を信じる・・・小生をお前と共にいさせてくれ」
大粒の涙を流している響凱は膝を折って霧香の手を握り締める。
「ありがとう、響凱」
身を屈めた霧香はもう片方の手で帳面を取り出す。
「これから『使役』の契約を始める」
「『使役』の術・・・?」
「人と鬼が契約を結び、主従関係になる。
でも五大呪術家は『縛る』ために結ぶんじゃない、『協力』するために結ぶ。
私もあなたを恐怖で縛るつもりはない、あなたを『家族』として迎え入れたい」
「・・・・・」
「あなたが恐れているあの人から・・・救うことはできる」
呪符を響凱の体に貼ると赤黒い糸が何本も現れる。
血のような糸が響凱の体に脈打ちながら繋がっている。
「あなたの体には『呪い』がある・・・あの人の呪いが・・・」
「!」
自分の体の呪い・・鬼舞辻のことを話したら発動する破滅の呪い。
「私のことを喋ってはいけない・・・私はずっと見ている」
〈あの方に言われた・・・呪い〉
「響凱」
「つっ・・・」
霧香の両手が響凱の頬に触れた。
「使役鬼は普通の鬼より辛い。
普通の鬼と同じく太陽の下には出られない、人の肉は食べてはいけない、血鬼術で同族を殺すことになる・・・。
でも一つだけ違うことがある。
私はあなたを見捨てない、ずっと一緒にいる、私の命が尽きるまで――・・・ずっとあなたと共にいるよ」
「・・・・」
「最後にもう一度聞くね、あなたは私と一緒にいることを望みますか?」
〈温かい・・・〉
人間の温もり・・・自分が人間だった頃、感じたことがあるもの。
〈ああ・・・人間とは『こんなに温かく、鬼にも心を開いてくれる優しき者』だったのか・・・〉
『諦めなよ、つまらないよ――・・君の書き物は全てにおいてゴミのようだ!
『美しさ』も『儚さ』も『凄み』もない、もう書くのは止めにしたらどうだい?
紙と万年筆の無駄だよ、最近は昼間、外に出て来ないし、そんなふうだから君は『つまらない』のさ、趣味の鼓でも叩いていればいい・・・だがそれも人に教えられるほどのものではないがね』
グシャッ―――・・・
人間の頃の記憶が蘇る、自分の書き物を酷評され、原稿を足で踏みつけられた。
「・・・・・」
踏まれた原稿とうなだれた響凱が残る。
カサ―――・・・カサ――・・・
「?」
気力もない自分の前で一人の少女が原稿用紙を拾っている。
「?」
トントン・・・
少女は拾い終えた原稿用紙を揃えて、響凱に差し出した。
「はい、あなたの大事なもの」
しゃがみ込んでニッコリ微笑んで手渡してくる。
「ゴミなんかじゃないよ、その作品も・・・あなた自身も――・・・響凱」
「!?」
響凱は手渡された原稿ごと少女の手を握った。
「つっ――・・・ああああぁぁっ――・・・!!」
そうだ、一人いればいい・・・認めてくれる相手が一人いれば、それでいいんだ。
響凱は頷いた、認められた喜びと己のこれまでの行いへ後悔の涙を流しながら――・・・。
――――――――――――――――
「!」
炭治郎は霧香の言う通り、見ているしかなかった。
霧香が波流門の術を発動した後、屋敷の回転がピタリと止まった。
〈どうなっているんだ?霧香さんは何をしたんだ?〉
戦闘を回避できたのは有り難いが、術の内側で何が起こっているのかわからない。
しかし水の膜が解かれるのにそう時間はかからなかった。
「霧香さんっ!」
「炭治郎」
「倒したんですか!?あの鬼を!」
「うん、人を喰っていた悪鬼の響凱はいなくなったよ」
そう言ってあるものを差し出す。