第84話 柱最強の過去
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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稽古を終えた霧香の元へアカリたちが水を持ってきた。
「よく頑張ったわね」
「おめでと」
「はあ・・・はあ・・・・ありがとう」
水の入った竹筒を受け取り、倒していた身を起こして少しずつ飲み始めた。
「訓練を達成した、実に喜ばしい」
そこへ行冥がやってきた。
「海野霧香、黒鉄琴乃、焔アカリ、お前たちは岩の訓練を見事達成した。これにて全ての柱稽古は終了となる。
そしてお前たちのこれまでの任務での奮闘と人々に対しての行いを評しよう、私は君たちを認める」
行冥の言葉に『?』マークを浮かべる三人。
「力ある者として弱き者を救い、仲間を救った、それは我々にとって鑑(かがみ)というものだ。誇ると良い」
「悲鳴嶼様、それは少し違います」
「?」
霧香の言葉に今度は行冥が首を傾げた。
「確かに私たちの功績は大きいものかと思います、ですがそれは私たちだけの考えではありません。
煉獄様、宇随様を初め任務で導いてくださった柱の皆様、炭治郎や善逸くん、伊之助くん、禰豆子・・・そして他の隊士の皆様、そしてここにいる華陽隊の仲間達がいてくれたからこそ下せた判断であり、行いです。
私も誰かが欠けていれば、あれほど素早い判断や行動はできませんでした。
お褒め戴いたのは恐縮ですが――・・・やはり私はまだ自分はあなたや他の柱の皆様には及ばないと思っています、ですから『一人前』と仰るのはまだ早いです」
「・・・・・・」
霧香の答えに行冥の口角が少し上がった。
「お前も他の二人と同じようなことを言うのだな」
「え?」
二人を見れば恥ずかしそうに頬を掻いたり、そっぽを向いている。
「心根が真面目で純粋、そしてまことに心に挿す言葉・・・・そんなお前だからこそ煉獄は惚れたのだろうな」
「つっ・・・////」
行冥は涙を流しながら空を見上げた。
「私は人を疑わずにはいられない性分だ――・・・昔のことがあってから」
手の数珠をジャリジャリ鳴らしながら過去を思い出していた。
「もう・・・八年以上前になるだろうか、昔、私は寺で身寄りのない子供たちを育てていた。
皆、血の繋がりはないものの仲睦まじく、お互いを助け合いながら家族のように暮らしていた。私はずっとそのように生きていくつもりだった」
〈そういえば琴乃が言ってたな・・・悲鳴嶼様は鬼殺隊に入る前は寺子屋みたいなところをやっていたって〉
「だが、ある夜・・・言いつけを守らず日が暮れても寺に戻らなかった子供がいて、鬼に遭遇した。
そしてその子供は自分が助かるために寺にいた私と八人の子供たちを鬼に食わせる約束をしたのだ」
「え・・・?」
信じられないことだ、家族として助け合ってきたというのに自分が助かりたいがために他の者を差し出すなど・・・行冥が人間不信になるのもわかる。
「私が住んでいた地域では鬼の脅威の伝承が根強く残っていた、そして夜は必ず藤の花の香炉を焚いていた。
だがその子供は香炉の火を消して始末してしまい、寺の中に鬼を招き入れた。
あっという間だった・・・すぐに四人が殺された。
残った四人も何とか守ろうとしたがそのうちの三人の子供は私の言うことをきかなかった。
当時の私は食べるもの少なく、痩せ細っており気も弱かった。大きな声も出したことおはなかった・・・さらには目も見えぬような大人など何の役にも立たない、それがあの子たちなりの判断だったのだろう。
言うことをきいてくれたのは一番年下の沙代だけだった、沙代だけが私の後ろに隠れた、他の三人の子供たちは私を当てにはせずに逃げて暗闇の中で喉を掻き切られて死んだ」
行冥の声に力が入り始めた。
「私はっ・・・沙代だけは何としても守らねばと思い、戦った。
生き物を殴るのもアレが初めてだった、感触は地獄のようだった・・・あの気色の悪さを私は一生忘れないっ・・・生まれて初めて全身の力を込めて振るった拳は自分でさえも恐ろしい威力だった。
鬼に襲われなければ、私は自分がこれほど強いということを知ることはなかっただろう。
私は・・・夜が明けて鬼が消えるまで鬼の頭を殴り、潰し続けた。
あの夜、私は山ほどのものを失い、傷つき、命をかけて沙代を守った――・・・そのつもりだった、だが・・・駆けつけてきた者達にあの子はこう言った」
『あの人は化け物!みんなあの人がっ・・・みんなを殺したっ・・・!』
「何てこと・・・」
「・・・・・」
「酷いわ、そんなっ!」
「良いのだ、焔・・・・まだ四つの子供が恐ろしい目に遭ったのだ、無理もない。子供とは・・・そういう生き物だ、しかし私は、それでも沙代にだけは労わってほしかった。
『私のために戦ってくれてありがとう』と・・・言ってほしかった、その一言があれば私は救われた。しかし子供はいつも自分のことで手一杯だ」
既に夜が明けていて鬼の姿は消えていただろう、そんな中子供たちの屍と泣き叫んでいる子供と一緒に血まみれの男がいれば誰でもその男が殺したと思い込んでしまうだろう。
行冥はその思い込みで投獄された、だが輝哉のおかげで助けられたのだという。それ以来、彼は疑り深くなってしまった。
どれ程、善良な人間でも土壇場で本性が見えてしまうということを知ってしまったからである。