第83話 最終稽古・悲鳴嶼行冥
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「『始まりの呼吸の剣士』たちの寿命が短かったことはあなたも知っていますね」
「はい」
「その原因の一つとして体を酷使したことを私は考えています。
特に感情的や一時的な勢いに身を任せれば無理な体の使い方が多くなり命が削られていく。
それはあなたも上弦の鬼との戦いで薄々感づいていますね?」
確かに上弦の鬼との戦いで痣者となり妖の血が覚醒した時から体の内部が痛むことがあった。
「私たちは呼吸を極めて闘ってきました、そのため肺や心臓に負担がかかっているのです。
肺や心臓は呼吸をするにあたって重要な臓器です、血液を循環させるだけでなく、体にある他の臓器にも深く関わっています。
肺や心臓に負荷をかけるということは血管を通して他の臓器にも負荷をかけるということです、さらに血管と同じく神経が多く通っている脳にも負担になります、それをまず認識してください」
「はい」
「よろしい、体の臓器に負担がかかると五感が麻痺し、失われていく。
それを緩和させているのが今、あなた方に処方している飲み薬と注射です」
「え?」
「あなたもお気づきかと思いますが、あの薬は一種の鎮静剤です、臓器の働きがある一定以上にならないようにするためのね。
先程も言ったように体を酷使すれば戦いが終わった後に必ず『後遺症』という形で体に残るでしょう。
私はあの男を倒して平和な世が訪れた時、それを成しえてくれたあなた方には少しでも長い時間、その幸せ噛み締めてもらいたい。
そしてあなたの大切な人たちにも、愛する人にもその子らにも・・・・」
かつての自分を思い出しているのだろうか、自分が死した後、現在まで血筋を残すために奮闘してくれた身内たちのことを・・・。
どれほど苦しかっただろうか、怖かっただろうか、不安だっただろうか・・・。
あまねや津雲も言っていたが縁壱が亡くなってから日の呼吸狩りが始まり、鬼殺隊は一時期壊滅状態までに追い込まれた。それでも根気強く耐え忍び、大正まで存続させ、また鬼舞辻を討つ好機を手に入れた。
「今のあなたの体は二段階の負荷がかかっています、第一段階は『痣』によるものです。
今回の柱稽古で気づいていないかもしれませんがあなたの痣は色が濃くなっています。それはあの男を倒すための強さを手に入れた証ですが自分の体の負荷が重くなっていることも意味します。
第二段階は『妖の血』です、滝夜叉姫様は元々の血筋と仰いましたがその血が本能的な感情を剥き出しにすれば『痣』のこともあり、体にかける負荷を増長するでしょう。
無害なものが有害になることもある、それをまた忘れてはいけませんよ」
「はい・・・しかし、私はその意識がわかりません。そもそも痣や妖の血は制御できるものなのでしょうか?」
「確かに・・・制御できるものではありません。ですが一つの目安になるものはあります」
「え?」
「アレです」
彼女が指したのは『霧香の心の核』だった。
「無限列車の時に夢鬼に破壊されそうになったあなたの心の核です、よく見てごらんなさい」
心の核は半分は白く、半分が黒く色づいていた。
「まだ無限列車の時は『痣』も『妖怪の血』も覚醒していなかったため色づきも半透明でしたが、力が表に出てきたためそれに比例して色が濃くなってきたのです。
おそらく体の能力が頂点に達した時、あの核の色は完全に染まるでしょう、まるで八卦の陰陽のように」
「では・・・今はまだ完璧ではないということですか?」
「ええ、まだ体が本当の限界を迎えてはいないということです。
ですがそれを知ったからといって過信してはいけません、闘い方によって色づくのが急速に早まることになります。
『限界』を迎えた後は『衰える』だけです、今は濃白と漆黒で美しく色づいていますが徐々に薄くなり半透明になり、やがて色が消えて周りの景色が見えてくる・・・・完全な透明になった時、あなたの命が消えます」
「!?」
「いくら薬を使ってもそれは後遺症を遅らせているだけ――・・・稽古をするには問題はありませんが休息も十分に取る事、それは柱の方々も一緒です、わかりましたね?」
「はい」
話を終えた夜霧は『フウー・・・』と息をついた。
「あなた方もこの機を逃すつもりもなく、此度は柱共々一丸となって稽古をしている。
私どもの頃と比べて結束が固くなったことは喜ばしい事、しかしあの男自身の力は三百年経った今も衰えることはない。
それを分かっているからこそ五家も動いている、しかし一番過酷なのは実際にあの男とその配下である残りの上弦の鬼と戦うあなた方。
その中でもあなたは滝夜叉姫様に言ったように己を犠牲にしてでも勝利を選ぶでしょう、たとえ平和な世を生きるのが短くなったとしても・・・」
「・・・・・・」
「いいですか、それは私も許しません。
たとえ五体満足で帰ることができなかったとしても、残りの人生をしっかり生きなさい、愛する人と―――・・・決して私のように諦めてはいけませんよ」
涙を流して伝えてくる夜霧、その姿を見て霧香はまた胸が少しだけ痛くなるのだった。