第81話 柱稽古・その4 伊黒小芭内
名前変換
この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
詳しくは設定、注意書きをお読みください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
蛇柱・伊黒小芭内の柱稽古は太刀筋矯正だ、つまり刀を振るう時の無駄な動きを省き、的確な一撃を相手に打ち込む訓練。
しかしこれは霧香にとっては造作もないことだった、何故なら彼女の技は――・・・。
〈雪の呼吸・漆の型――・・・〉
「『星氷柱(ほしつらら)』」
「!」
張り付けにされている隊士と隊士のほんの細い隙間、それを的確に狙い霧香は突いてくる。躱してもまた正確に振り込んでくる。
「お前・・・目が良いな」
「これまでの経験の賜物ですっ・・・おかげ様で」
この時点で稽古二日目、無一郎の攻撃も早かったが伊黒の太刀筋はまた変則的なものだ。しかも何もない道場とは違い、言ってしまえばここは障害物だらけ。
戦場で例えるならだだっ広い草原と密林地帯、そう考えれば動きが変わるのも無理はない。
障害物があるということは大振り、大技は使えない。ならば相手の急所を最小限の動きで的確に討ち、倒さねばならないのは容易に想像がつくのだ。だが相手は柱、上弦の鬼と同じくらいの気構えでいなければこちらがやられる。
今は上弦の鬼と戦っているという気持ちを・・・あの時の気持ちで霧香は戦っているのだ。
といっても初めて伊黒の太刀筋を見た時に戸惑ったのもまた事実、蛇のようにうねる剣筋、蛇柱と呼ぶに値する技だと思った。
しかし見方によっては伊黒の攻撃がそれほど正確だということだ、伊黒が見ているのは『隙間』ではなく、その先の相手の『急所』、そこを突くためにはどのように刀を振ればいいのか。
そう考えれば今まで狙っていた、首、肩、脇腹、脚などの攻撃の場所から闇雲に攻撃していないことはわかる。
あとはその太刀筋を見極める目だ、無一郎の時もそうだが相手の攻撃が視えなければ話にならない。
「・・・・・」
小芭内と霧香の訓練を見ている千寿郎(打ち身あり)は彼女の成長振りに驚いている、いくら自分より多くの任務をこなしてきた人だとしても入隊から一年足らずでここまで成長できる者が何人いるだろうか。
「雪の呼吸・壱の型――・・・」
「つっ・・・」
「『群雲(むらくも)』」
トン――・・・
霧香の攻撃が伊黒の首筋で止まった、一撃が入ったことにより稽古の終了だ。
「フン・・・お前の稽古は終了だ」
「ありがとうございました」
「フン」
面白くないとでも言うようにそっぽを向いてしまう小芭内。
「おい」
「え?」
道場を出ようとする霧香を呼び止める。
「煉獄との婚約、おめでとう・・・・式には呼べ、甘露寺と一緒に必ず行く・・・」
「!」
「あいつは必ずお前を幸せにしてくれる、だからお前も自分の命尽きるまであいつと添い遂げろ・・・」
以前、杏寿郎が言っていた。伊黒と杏寿郎とは父・槇寿郎を通しての付き合いだと――・・・幼い頃から知っている間柄で仲良くしていると言っていた。杏寿郎の性格だ、彼のことを弟子の甘露寺と同じように大切にしてきたに違いない。でなければ不器用ではあれど『おめでとう』という言葉や『添い遂げろ』という言葉はでないだろう。
「・・・はい、私は杏寿郎さんと自分の命尽きるまで共にいるつもりです。約束、しましたから」
「そうか・・・無用な言葉だったな」
「いいえ、嬉しいですよ」
「煉獄と千寿郎を思ったまでのことだ」
「だとしても私の家族に心のこもった言葉をかけくれたことが嬉しいんです・・・ありがとうございました」
「フン――・・・」
お辞儀をして道場の扉へ歩き出した霧香は千寿郎の隣りで歩みを止める。