間章・富岡義勇
名前変換
この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
詳しくは設定、注意書きをお読みください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はあ――・・・」
四日目の外出時、彼は桟橋の上でため息を付いた。
「俺は最終選別を突破していない」
「え?最終選別って藤襲山のですか?」
「そうだ、あの年に俺は・・・俺と同じく身内を鬼に殺された少年・錆兎という宍色の髪の少年と共に選別を受けた。
十三歳だった、同じ年で天涯孤独で仲良くなった、錆兎は正義感が強く、心の優しい少年だった。
あの年の選別で死んだのは錆兎だけだった、彼があの山の鬼をほとんど一人で倒してしまったんだ。
錆兎以外の全員が選別に受かった――・・・・俺は最初に襲いかかってきた鬼に怪我を負わされて朦朧としていた、それを助けてくれたのも錆兎だ。
錆兎は俺を別の少年に託して助けを呼ぶ声の方へ行ってしまった、気がついた時には選別が終わっていた。
俺は確かに七日間、生き延びて選別には受かったが鬼を一体も倒さず、助けられただけの人間が果たして選別を通ったと言えるのだろうか。
俺は水柱になっていい人間じゃない、そもそも他の柱と対等に肩を並べていい人間ですらない。俺は彼らとは違う、本来なら俺に鬼殺隊での居場所はない」
「・・・・・」
炭治郎は黙って聞いていた。
「これでわかっただろう、稽古は柱につけてもらうのが一番いい。
俺には痣も出ない、錆兎なら出たかもしれないが・・・もう俺に構うな、時間の無駄だ」
炭治郎は何も言えなくなってしまった、しかし後ろに急に引っ張られた。
「炭治郎、少し後ろにいてくれる?それからこれ、預かっといて」
霧香が前に出た、そして自分の日輪刀を炭治郎に渡す。
「それから後ろ向いてて見ていて気分いいものじゃないから」
それだけいうと足早に義勇に近づいていく。
バキャッ!!
「!?」
「つっ!!?」
一瞬だった、炭治郎も義勇も何が起きたのかわからなかった。
「そんなことのためにその少年の名前を使うな!!」
鈍い痛みを頬をに受けて倒れ込んだ義勇は痛みを負わせた本人である霧香を見た。
「自分は水柱になっていい人間じゃない?鬼を一体も倒さなかった人間が選別を突破したといえるのか?
じゃああなたは選別が終わった後、何もしなくて今日まで来たのか!
そんなに『居場所がない』なんて言うなら選別が終わった後に切腹でも何でもすればよかっただろう!
それもせずに隊服を着て任務をこなして成果を上げて十二鬼月を倒してお館様から『水柱』を任せられたのは誰だ!!あなたでしょう!富岡義勇!
なのに今更・・・水柱になっていい人間じゃないとか、炭治郎が水柱になればよかったとか・・・ふざけるな!!甘ったれるな!!」
「!」
彼女は泣いていた、青い目から涙がボロボロ零れていた。
「錆兎は・・・錆兎はっ・・・」
同じ十三歳の時、真菰の訃報を聞いて狭霧山で選別前に自害しようとした自分に錆兎は怒った。命を・・・育ててくれた命を捨てようとした自分を怒ってくれた。
「錆兎が皆のために犠牲になった言い方っ・・・しないでください!!
彼は『繋いでくれた』んです、あなたたちの命を・・・あの窮地から次の場所へ・・・だからそんな、悲しい事に錆兎の名前を出さないでくださいっ・・・・」
「!」
そして霧香は座り込んで声を押し殺して泣き出した、そんな彼女を炭治郎は感じ入ったように見ていた。さらに義勇に問う。
「義勇さん・・・」
「?」
「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」
「!」
――パアァン・・・
また強い衝撃が奔った、でも今度は物理的にではない・・・心に響いたのだ。
『自分が死ねばよかったなんて二度と言うなよ、もし言ったらお前とはそれまでだ、友達も辞める』
数年前の錆兎との会話を思い出す。
『翌日、祝言を挙げるはずだったお前の姉もそんなことは承知の上でお前を鬼から隠して守ったんだ。他でもないお前自身が姉を冒涜するな。
お前は絶対に死ぬんじゃない、姉が命がけで繋いでくれた命を――、託された未来を繋ぐんだ。いいな――・・・お前も繋ぐんだ、義勇』
〈ああ――・・・そうだ、そうだな・・・錆兎〉
義勇は霧香に殴られた口の端から出ている血を拭いながら立ち上がった、何故忘れていたのだろうか、絶対忘れてはいけなかったのに――・・・。
「つっ・・・ふえっ、グズッ・・・錆兎・・・錆兎っ・・・」
ずっと泣いている彼女を抱き締める義勇。
「すまなかった――・・・」
「っ・・・!」
「確かにそうだ、あいつは俺の命を繋いでくれたんだ――・・・それを俺が否定してはならなかった、本当にすまなかった」
「ふうっ・・・うわああぁぁ・・・っ、ああぁぁ・・・」
今度こそ霧香は声を上げて泣いた、全く同じとは言わない、けれども鬼によって失った者たちから自分たちは託されている。
どんな形で在れ、それをわかってほしかった、思い出して欲しかった。
錆兎が言ったように少し荒療治になってしまったが霧香の願いは義勇に届いたようだ。
しかしここで困ってしまったは炭治郎である、泣いてしまった姉弟子とそれを慰めている兄弟子。