第79話 柱稽古・その2 時透無一郎
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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その日の夜、ホクホク顔の無一郎が屋根の上にいた。
「時透様」
「あ!霧香!」
上がってきた霧香に笑顔を向ける無一郎。
「上機嫌ですね」
「うん、ちょっとね」
そう言うと横に少しずれた。
「座りなよ」
「ありがとうございます」
彼女が座り込むと二人で夜空を見上げた。
「君たちの力には驚かされるよ、柱合会議からまだ一年も経っていないのにここまで昇ってくるなんて」
「いいえ、私たちは運が良かったんですよ。強敵に出会えたこと、戦って生き残る力を持っていたこと、そして頼れる仲間がいたこと・・・最終選別の時の自分には考えられなかったことです。
でも今思えば、私がここまで来れたのは運命(さが)かもしれません」
「運命(さが)?」
「ええ」
星空を見上げていた彼女の顔が厳しいものになる。
「おそらく私は・・・既に鬼舞辻無惨に出会っています」
「!?」
「私も初対面の時は気が付きませんでした、でも・・・無限列車の時に対戦した上弦の鬼・猗窩座の血の匂いがあの時の男に近いことを思い出したんです。
今思えば、あの男に出会った時、体中を悪寒が奔りました、気味の悪さを感じたです。そして同時に激しい怒りを感じました、初めて会った人に対して失礼かと思いましたが、あれは私の体に流れる『海野』と『継国』の血が彼を『鬼舞辻無惨だ』と教えてくれていたのでしょう」
「どんな人だったの?」
「ある意味紳士的な温厚な男性に見えました、女性と見間違えるほどの美青年・・・でも、どこか拒めない、圧倒的さを感じさせる雰囲気を持っていました。特に目が、印象に残っています」
赤い、人間の鮮血のように赤い目・・・まるで獲物を狙う蛇の様な目だ。
「あちらはおそらく私の事を感づいていると思います、私の顔を見た時に『自分の知人に似ている』と言っていましたから」
「それが夜霧さんだとしたら・・・」
「ええ、無限列車で私を狙ってきたことも頷けます」
霧香は拳を握る。
「今度会った時には逃しはしません、お二人の無念は・・・私が必ず!」
三百年前、無惨を討ち損ねたため汚名と除籍になり、そして離れ離れになってしまった夜霧と縁壱。
もし討ち果たせていたら使役鬼の問題はあっただろうが二人で我が子たちと一緒に小さいながらも幸せに暮らしていたのではないだろうか。
それを考えると悔しくて堪らないのだ、弱く儚い人間の人生をも踏みにじり、闘いに明け暮れる者達の小さな幸せさえをも打ち砕く、そんな男が・・・。
「霧香」
「!」
「一人で考え込まないで、戦うときは僕たちも一緒だ」
無一郎が霧香の手を握る。
「君は一人じゃない、僕たちがいつも一緒だよ」
「・・・はい、ありがとうございます」
「うん」
無一郎の表情は本当に柔らかくなった、刀鍛冶の里で最初に会った時とは雲泥の差に思える。
上弦の鬼との戦いで記憶が戻り、海野家と海野家の鬼たちを交えた話し合いで彼の中の心の器が満たされていっているようだ。
「華陽隊はもう次の稽古場に行けるよ、明日、最終調整に入るね」
「え?もうですか?」
「うん、君も琴乃さんもアカリも僕の言ったことちゃんとできてるし、そもそもそんなに指摘する部分もなかったし」
「でもまだ(明日で)三日目・・・」
「大丈夫だって!本当にできてるから!」
ニッコニコで答える無一郎。
「あ、でも千寿郎くんはあと一日か二日くらいここにいてもらうよ。
彼も飲み込みは早いけどまだ君たちよりは鍛錬が足りない、煉獄さんにはとてもお世話になったから。
それに煉獄さんが千寿郎くんを『自分に劣らない剣士にして送り出す』と言っていたからその手伝いをしたいんだ。彼が最終決戦で死なない様にね」
「時透様・・・」
「大切なお兄さんに家族を失って欲しくないからね」
家族を失う悲しみは自分がよく知っている、千寿郎にも杏寿郎にも同じ思いはしてほしくない。
そのために自分はできるのは千寿郎を強敵に出会っても生き残れるように鍛えることだ。先にも柱が待っている、そこに行っても千寿郎がめげないためだ。
「ありがとうございます・・・重ねてお礼申し上げます」
「いいんだよ、さあ、今日はもう休もう。明日の調整もあるししっかり休息を取らないとね」
無一郎が立ち上がると霧香も立ち上がった、夜も更けていくので二人は館の中に入っていくのだった。
「あれ?アカリは?」
「そういえばいないわね、どこ行ったのかしら?」
彼女の布団は敷いてあるものの姿を見た者はどこにもいなかった、その理由を知ることになるのは翌日の華陽隊最終日、調整を受け終わった後、次の稽古場に向かおうとしていた三人に無一郎が無意識にポロッと言った一言でバレてしまったのだった。
続く