第77話 覚悟
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「・・・・・皆は何と答えたのですか?」
父のこの言い方ではもしかしたら既に鬼たちには通達が言っているのかもしれない、霧香は恐る恐る聞いてみる。
「彼らの答えは―――・・・・全員、『否』だった」
「!」
「薬を投与されたら無惨との戦闘には参加はできない、そして投与をしたとしても拒絶反応が起きて死ぬかもしれないと伝えた。
だが、彼らは『最期まで鬼であり続け、自分の家の主に尽くす』と言っていた」
「霧香、少し前にあなたの円盤を預かったでしょう」
「!?」
そう、実は霧香は刀鍛冶の里での任務が終わって帰還した際に五家の隠し経由で円盤を実家に預けていた。
「ま、まさか・・・」
「・・・・・」
「あの子たちもまた最終決戦に向けて動いているわ」
あの子たちとは海野家の鬼たちであろう、最近は鬼灯への出入りを禁じられていたため話していなかったが・・・。
「どうする・・・つもり、何ですか・・・」
「それは言えないわ、教えられる段階ではないの」
「どうして?!五家の中で動いていることでしょう!?五家の出身である私が何故、聞くことができないの!?」
「知らぬのはお前だけではない、華陽隊の全員に伝えていない。
この計画は私たち五家の長と上層部、そして輝哉殿しか知り得ぬことだ。
彼女らの円盤も加津地殿、鉄斎殿の命で本人の手から離されている。彼女らの鬼も今回の鬼舞辻の決戦に備えで動いている。
だが違うのは私たちからの命令ではない、本人たちからの申し出で動いていることだ」
彼らからの申し出・・・、一体何を申し出たというのか。円盤を取り上げられている以上、響凱もおそらくその中に入っているはずだ。
「父さん、母さん・・・教えてください!彼らは一体、何の備えで動いているというんですか!!」
「「・・・・・・」」
二人は口を噤んだままだった。
「安岐も言った筈だ、教えることはできん・・・・その答えはこれからの『戦(いくさ)』でわかる」
「つっ!!」
霧香はその場を去った、両親の気持ちは変わらないと分かったからだ。でも鬼灯には入れない、他の五家の者に聞いても無駄だろう。
もどかしい気持ちを持ったまま霧香は走った、そして行きついた先は――・・・・。
「はあ・・・はあ・・・」
「霧香」
狭霧山だった、急に来訪した弟子に少し驚いた鱗滝だったが彼女を家に上げて茶を淹れた。
「急に申し訳ありません、師匠・・・・」
「いや、大丈夫だ」
そうは言ったものの彼女の様子の変化は一目瞭然だった。
「呼吸が乱れているな」
「・・・・・・」
当然、走ったので乱れてはいる。だが鱗滝が言っているのは『心の呼吸の乱れ』だ。冷静ではないと動揺しているのがわかったのだろう。
「師匠・・・私は、わからないのです・・・」
「・・・・・・」
「鬼のいない世界・・・・平和な世の中・・・その空間に使役鬼がいてはならないのはわかっていた・・・・分かっていた、はず、なんです・・・っ」
でも彼らはずっと一族のために身体を張ってくれた戦友、家族も同然・・・その存在を今更消せるのか、そう問われたら霧香は難しい、割り切れる自信がないのだ。
〈私は響凱を・・・殺せるのだろうか・・・〉
かつて自分が斬った手鬼とは違う、あいつは『兄弟の仇』だった・・・だが、響凱は『家族』だ。家族を自分は斬れるのだろうか・・・。
炭治郎には『家族を守れ』と言ったのに自分はその『家族を殺す』のか・・・。
「私は・・・っ、どうしようもない・・・大馬鹿者ですっ・・・・!
下の者には恥がないように大きく見せるようにやってきてっ・・・上の者には規律を乱さぬように、侮られない様にっ・・・芯の通った一人の剣士だと見せておいて・・・っ、実際は、腑抜けの大馬鹿者ですっ!!」
頭を垂れて泣きながら声を絞り出す、結局自分は七年前と少しも変わっていない。誰かに身を委ねなければ何もできない、一人では何もできない優柔不断な小さな人間だ。
そんな霧香を見て鱗滝は立ち上がると彼女の隣りに膝をついた。
「確かにお前は小さい」
「・・・・っ」
「だか、それは決して『優柔不断』だからではない。お前は『背負い過ぎる』のだ、全ての事を己で解決しようとする」
「・・・・・?」
「水も注ぎ過ぎれば溢れる、器が小さすぎれば過ぎるほど外へ流れ出てしまう。
お前の小さな背中で背負えないほど鬼舞辻と五大呪術家の問題は巨大なものなのだ、千年もの間繰り広げられてきた戦いだ。それを十七、八のお前に背負いきれるわけがない」
鱗滝は霧香を抱き締めた。
「一人で抱え込むことはない、お前には仲間がいる家族や華陽隊二人、炭治郎や禰豆子、柱、お館様、隊士の皆、そして儂もいる。
だからそんなに悩むことはない、自分を責めることもない、これから挑むことは皆と一緒だ」
「師匠・・・」
「次の戦いは誰もが険しく辛い経験をするものとなるだろう・・・そのための覚悟をしなければならない。
だが、忘れるな。お前は『独り』ではないのだ。自分の一族と家族を信じることだ、いいな」
ポンポンと背中を擦ってくれる、それはまだ狭霧山にいた時、怖い夢を見た時や泣いて帰ってきた時に鱗滝がいつもしてくれた仕草だ。
この仕草に何度安心させられたことか――・・・それは今もまったく変わらない、このごつごつした大きい手は不思議と自分を落ち着かせてくれる。