第77話 覚悟
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「父さん、母さん」
「おう、来たか」
珠世と対面した霧香は翌日、瀬津寿と安岐に会いに二人の庵に出向いた。理由は珠世から聞き出せなかったことを知るためだ。
「さあ、お上がりなさい。今お茶を淹れるわ」
縁側からの来訪であるにも関わらず母である安岐が笑顔で迎え入れてくれる、囲炉裏の傍で父の瀬津寿も『おいでおいで』をしている。
「お前から文が来るとは驚いたぞ、どうした?刀鍛冶の里の任務も終わって今が休み処だろうに」
「・・・・・・」
安岐の淹れてくれたお茶を飲みながら話しかけてくる父、霧香は母の淹れてくれたお茶の水面を眺めていたが意を決して口火を切った。
「珠世さんに会いました」
その言葉に両親の雰囲気が少し緊迫した。
「「・・・・・・・」」
驚いてはない、おそらく香炉家に置いているということは『いつかこうなる』と思っていただろう。
「そうか・・・会ったのか」
「はい、しかし珠世さんは鬼です。しかも禰豆子と同じく鬼舞辻の支配から逃れられた唯一の存在――・・・、何故彼女をお館様と父さんを含めて五家の当主が望み、こちらに呼び寄せたのか、聞かせて欲しい」
「・・・・・・」
瀬津寿は湯呑を置いた。
「そうだな、お前にも『覚悟』を持ってもらわねばならないな」
「『覚悟』?」
「霧香」
父の表情が変わった、それは『当主であった頃の顔』だ。
「これから私がお前に聞かせることはお前たち華陽隊と柱以外には打ち明けてはならん、それが約束できるか?」
「はい」
「よし、鬼舞辻との決戦が迫っていることはお前も察していることだろう。
そこで産屋敷家では当主の輝哉殿を初め柱の方々が隊士の短期的強化の訓練を考えられている」
「短期的強化訓練・・・」
「そうだ、鬼舞辻は陽光を克服した竈門禰豆子を必ず狙ってくる。時間はそうそうかけられん。故に柱たち自ら継子のみならず鬼殺隊の隊士すべてを鍛えることにしたのだ」
「つっ・・・!」
「『柱稽古』、近日中にお前にも声がかかるだろう。心して挑みなさい」
「・・・、はいっ」
「そしてもう一つは五家の中で進められている計画だ、目的は皆同じ『あの男(無惨)を倒す』ためだ。
その第一段階として鬼の研究をしている香炉家と同じく鬼の身で医学に通じている珠世殿が協力し、鬼舞辻無惨を弱体化させる薬を開発している」
「!?」
『鬼を弱体化させる薬』、そんなものが果たして開発が可能なのか・・・。
「既に珠世殿は鬼の能力、血鬼術の進行を抑える薬を開発しているそうだ。我らも『鬼の毒を中和する薬』、『使役鬼の力を増幅させる薬』、『役目を終えた使役鬼を殺す薬』など数種類の薬品を開発してきた。
そして今回、使役鬼の血液ではなく、我らの支配を受けていない『鬼舞辻に近い者』の血液の予備を珠世殿が持っている。
我らはその情報を知り得た後、すぐに輝哉殿と共に彼女に遣いの鴉を向かわせた。最初は警戒していたようだが快く受け入れてくださった」
つまり珠世は自分が死ぬのも構わずに鬼舞辻を倒す薬の開発に協力してくれたのだ。
「そしてこの計画には蟲柱・胡蝶しのぶ殿と衣久も参加することとなった」
「え・・・?」
『衣久』・・・種の民となり、陰ながら五家を支えてきてくれた自分の大切な身内だ。
「何故です?何故衣久様が・・・」
「体質のため『種』の身分ではあるが彼女の医学知識は侮れない、しのぶ殿と一緒に素晴らしい薬を生み出してくれるだろう」
「し、しかし父さん!衣久様はもう前線を退いた方ですよ!父さんと母さんと同じく隠居されたではないですか!」
そう言った瞬間、瀬津寿の気配が変わった。
「つっ・・・!」
「あの男を倒すために『現役』も『隠居』も関係ない・・・」
瀬津寿の言葉が霧香の心臓を突き刺す。
「我らがこの時をどれ程待ったことか・・・・お前もそれは承知しているはずだ。
三百年前為せなかった我らが大業を果たす機会が今、大正の時代で再び廻った来たのだ。そうでなければ今まであの男のために犠牲になった者達が浮かばれん、人間も鬼もだ」
「・・・・・」
「衣久の事ならば心配はいらない、彼女も自ら名乗り出て来たのだ。五家の出だ、体が訛っても最期まで鬼狩りでいるつもりだ」
「っ・・・」
あの優しかった衣久が悪鬼を倒すために非情になる、時期はもう熟しつつあるのだと認めざるを得ない。
「それから五家の中でも今後の事を考えて片付けることがある」
「片付けること?」
「使役鬼の存在だ」
「え?」
「無惨を倒せば奴の細胞を継いでいる鬼たちは消滅する、あの男を倒せば鬼は一網打尽といっても過言ではない。
だが我らの使役鬼はその影響を受けない、彼らは我らの手で片付けなければならない」
「!」
考えていないわけではなかった――・・・鬼がいない世界、平和な世界。
そこには使役鬼の存在でさえあってはならないのだ、協力関係にあるがそれもいずれは切れる時がくる。
「その処置についてだが珠世殿と話し、鬼から人間に戻るか否かの選択肢も与えた」
「え?戻す薬があるのですか!?」
「珠世殿が研究されてあと少しのところまでこぎ着けたそうだ、場合によっては五家の鬼たちに投与することもできる。
幸いにも材料に問題はなかった、五家の方で用意できるものばかりだったからな」
「ならっ!」
「だが、その選択はあくまで『彼ら』がすることだ」
彼ら――・・・つまり使役鬼たちに決めさせるということだ。