第76話 前触れ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「じゃあ彼は・・・」
隣りの愈史郎を見るが・・・。
「愈史郎は私が鬼にしたのです、鬼舞辻とは関係ありません」
「え?」
鬼舞辻以外にも鬼を生み出すことができるのかと疑問が過った、しかし彼女の姿を見たところ医者だろう。ならば別の方法で『鬼を作る術』があっても不思議ではない。
「一つ聞いてもいいですか?」
「何でしょう?」
「あなたは『鬼を作る術』を施したのはこの少年だけですか?」
「はい」
「理由は?」
「命を救いたかったからです」
「貴様!先ほどから珠世様に失礼だぞ!!」
掴みかかってくる愈史郎、彼としては当たり前かもしれない。自分は元々病弱で助からなかった命かもしれない、それを助けてくれたのが珠世なのだ。恩人である彼女に無礼を働く人間は許せないと感じるのだ。
「愈史郎、おやめなさい」
「しかしっ!」
「この方は私の恩人の末裔です」
「!」
珠世は割烹着を脱ぐと霧香に近づいてきた。
「お顔をもっとよく見せていただけますか?」
「あ、はい」
珠世の手が霧香に触れる。
「似ています、本当に・・・」
まるで生き別れになった友を見ているかのような表情だ。
「あなたは夜霧さんによく似ておられます、髪を結えばそっくりでしょう」
夜霧――・・・、三百年前に始まりの呼吸の剣士・継国縁壱と今の海野家を作った直系の先祖。
「そんなに夜霧さんと私は似ていますか?」
「はい、そして懐かしいにおいがします」
「におい?」
「ええ、懐かしい血の臭いです」
「・・・・・」
きっとこの人と夜霧は種族は違えど良好な関係だったのだろう、もしくは共感できることがあったのかもしれない。
霧香は意を決してあのことを話してみることにした。
「私は・・・あなたが仰った海野夜霧と継国縁壱の間に生まれた子供の子孫です」
「!?」
その言葉に珠世がまた驚いていた、おそらく縁壱にも面識があるのだろう。
「そうでしたか・・・お二人の、それで懐かしいにおいが・・・これも巡り合わせでしょうか・・・」
そこで珠世は涙を浮かべている、彼女の表情から嬉し涙だろう。
「珠世様・・・」
愈史郎も驚いている。
彼女がここまで微笑んで涙を流している、無惨やその配下の鬼に追われる日々の中、こんな表情は初めてのように思える。
「お二人の繋がりがこのような形で巡ってくるなんて・・・お会いできて嬉しいですよ、霧香さん」
「・・・・・・」
この人は自分の先祖ととても親しくしていたのかもしれない、鬼と鬼殺隊の隊士なので関わる事が少なかったのであろうが少なくとも無惨を憎む同志なのだろう、直感だが霧香はそう思えた。
「珠世、さん・・・」
「何でしょう?」
「あなたは何故、香炉家の療養所にいらっしゃるのですか?」
「・・・・・・それは、私の口からはお話しできません。
でもこれだけは断言します、私がここにいるのは産屋敷家の要望であり、あなた方五大呪術家の要望であり、鬼舞辻無惨を倒すためであると」
「勝算はあるんですか?」
「はい」
「わかりました」
それだけ聞くと霧香は横にいる愈史郎を見た。
「つっ!?」
「あなたの敬愛する方を疑ってしまって申し訳ありませんでした」
謝罪をするとまた珠世に向き直る。
「珠世さん、ご協力感謝いたします。必ず一緒に鬼舞辻無惨を倒しましょう」
そう言って彼女は部屋を出て行った。
「何だ、あの女は・・・変な奴だ」
「愈史郎」
訝し気に言う愈史郎を嗜める珠世。
〈本当に夜霧様に似ているわ・・・〉
―― ご協力感謝いたします、共に鬼舞辻無惨を倒しましょう ――
三百年前、彼女の先祖も同じ言葉を言ってくれた。
生憎、彼女は志半ばで命を落としてしまったが巡りに巡り、今、彼女の意志を受け継いだ者に出会った気持ちの珠世だった。
続く