第76話 前触れ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「煉獄」
「?」
「やけに落ち着いているな、もしやあまね様が言われたこと既に知っていたのか?」
伊黒の問いに杏寿郎は何も言わずに少し口角を上げるだけだった、そこで皆理解した。
杏寿郎が引退をこの場で申し立てたのは最愛の人の最期を看取る場所になる覚悟も踏まえての事なのだと。
「あまね殿も退室された、俺も失礼する」
「おい、待てや」
富岡が帰ろうとするが不死川が止める。
「失礼すんじゃねぇよォ、俺たちの今後の立ち回りも決めねぇとならねぇだろうが」
「七人で話し合うといい、俺には関係ない」
「『関係ない』とはどういうことだ?貴様には柱としての自覚が足りぬ、それとも何か?自分だけ早々と鍛錬をつけるつもりなのか?会議にも参加せず・・・」
どんどん雲行きが怪しくなるが構わず部屋を去ろうとする富岡。
「テメェ、待ちやがれ!!」
飛びかかろうとする不死川を杏寿郎が止める。
「富岡さん、理由を説明してください。さすがに言葉が足りませんよ」
胡蝶も納得がいかない、いつもは富岡をからかっているが今は状況が状況だ。
「・・・・・・俺は、お前たちとは違う」
富岡が言ったのはそれだけだった。
「気に喰わねぇぜ・・・・前にも同じこと言ったなァ富岡。俺たちを見下してんのか!?」
「止めろ、不死川!」
「止めるんじゃねーっ!!煉獄!!こいつの考えを理解しろってのが無理なんだよ!!」
「あ、あああ!!はわわわっ!!喧嘩はダメだよっ、れ、冷静に!!冷静にねっ!!」
杏寿郎と蜜璃の二人がかりで不死川を止めようとするが彼はどんどん富岡に迫る勢いだ。
パアアァァンッ!!
その時だ、一つの大きな手拍子が響いたのは――・・・それはとてつもなく大きく、威圧のあるものだった。
「座れ、話を進める――・・・・私に一つ提案がある」
手拍子をした本人、悲鳴嶼が言葉を発した。
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「・・・・・・・・」
その頃、柱二人の後に回復した霧香は香炉家の療養所で例の薬を注射してもらっていた。
この薬は香炉家が百の年数をかけて研究したもので中身の薬剤などは極秘とのこと、しかし安全は保証付きとのことで投薬を続けている。
実は霧香がこの注射を打ち始めたのは遊廓の任務が終わって『痣』の発現が明確になった時だ。
晴哉から打つことを命じられて歌津羅を担当医にして処置してもらっている、確かにこの薬を打つようになってから『痣』が出ても後に体にかかってくる負担が少しずつ軽くなったように思える。一種の鎮静作用があるのかと考えるようにしていた。
そして今、いつもの注射の処置が終わって帰ろうとしている時だった。ある部屋から何かを感じ取る。
〈ん?知らない臭いがする〉
五大呪術家は五感に敏感だ、特に戦闘向きの焔家と海野家は代が変わってもそれは健在である。
知らない臭いを辿って着いたのは療養所の隅にある一つの研究室だった。
コンコン――・・・
扉が閉まっていたのでノックをしてみると女の声が聞こえた。
〈あれ?使ってる人いるんだ〉
『カチャリ』と開けてみるとそこには若い女が座っていた、そしてその傍らには珍しい髪色をした少年が立っている。
「!?」
女性の方は霧香の顔を見て驚いている。
「な、なんだお前は!?ここは香炉家の一部の者しか知らんはずだぞ!!」
少年が喰ってかかり、霧香を追い出そうとする。
「お止めなさい、愈史郎」
少年を止めた女が立ち上がる。
「あなた・・・海野霧香さんですか?」
「え?」
何故この女が自分の名前を知っているのか、困惑している霧香。
「初めまして、私は珠世と申します」
「はあ・・・」
「私は・・・あなたの先祖である夜霧様に助けていただいた者です」
「!?」
女は確かに『助けていただいた』と言った、だが彼女が生きていたのは三百年も昔だ。人間が三百年も生きられるわけがない。
「あなた・・・まさか鬼ですか?」
「はい、ですがご安心ください。私は鬼舞辻の支配から逃れています、ここをあの男に見つかる心配はありません」
「・・・・・・」
疑惑の目を向けるが珠世から鬼舞辻の禍々しい気は感じられない、きっと彼女の言っていることは事実だろう。