第76話 前触れ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「そこが篩(ふるい)にかけられる所だと思います、そこで死ぬか、死なないか・・・それが『痣』が出る者との分かれ道です」
「心拍数が二百以上・・・体温の数値は何故三十九度なのですか?」
「胡蝶さんの治療を受けた時に体温計で僕の体温を測ったでしょう?」
そこで胡蝶は蝶屋敷で体温計でそれぞれの検温をしたことを思い出す。
「あの時、僕の体温は三十九度だったんです。そして『痣』が出ている時の体温もほぼ同じくらいだったと思います」
〈そうなんだ・・・〉
自分とは違い冷静に分析している時透に驚きと関心をしてしまっている蜜璃。
「おそらく華陽隊の三人も同じ状況下にあったのだと思います、妖の血の覚醒については何とも言えませんが、それも感情の昂り故からくる症状かもしれません。
アカリは僕と一緒に上弦の伍と対峙していましたから妖の血の覚醒と重なり『痣』も発現したのだと思います」
「チッ・・・そんな簡単なことでいいのかよォ」
「これを『簡単』と言ってしまえる簡単な頭で羨ましい」
「何だと?」
「何も」
不死川と富岡の間の空気が緊迫するが胡蝶が間に入る。
「では『痣』の発現が今後の柱の急務となりますね」
「御意、何とか致します故お館様にはお安心召されるようお伝えください」
『痣』の発現の訓練に皆、賛成と思われたが一人手を挙げる者がいた。杏寿郎である。
「奥方様、私事ですが申し上げたいことがございます」
「何でしょう?煉獄様」
「皆の士気が上がっている所で申し上げるのは心苦しいことですが、煉獄杏寿郎、本日付けで炎柱の席を退かせていただきます」
その言葉に柱一同は驚愕する。
「煉獄・・・てめぇ、どういうつもりだ?」
不死川が詰め寄る。
「これからって時によォ・・・柱の任務を退く?引退するってのか?」
「うむ!その通りだ!」
「ふざけんじゃねーぞ!!」
杏寿郎の胸倉を掴む不死川。
「不死川さん、落ち着いてください」
胡蝶が間に入る。
「煉獄様、理由をお聞かせください」
「はい、理由は二つ。
一つは私の婚約者である霧香のことです、彼女が『痣者』になったことは薄々気づいていました。そして今後のことを考えたのです、私は彼女と戦場を駆け、鬼を倒し、鬼舞辻を倒す。
互いの背中を任せ、預かり、共に生き残り、平和の世を添い遂げようと誓いました。ですが私は見ての通り、無限列車の任務で左目を失いました、体の負傷は治り、片目ながらも柱として任務をこなしてきましたが総力戦となると私は足手纏いになります。
第一線からは退きますが、隊士としてはこれから霧香と一緒に闘わせていただく所存です」
「つまり女のために柱の座は捨てるってことか・・・情けねぇな」
「どう思われてようと構わない、だが俺はそうすることで彼女の帰る場所になってやりたいんだ」
人間、誰でも自分の帰ってくる場所が欲しいと思うだろう。
霧香にとってそれは海野の家やこの鬼殺隊もあるが何より夫の自分がなってやりたいと思うのだ。
「しかし煉獄さん、あなたがお役目(柱)から去っては戦力が落ちてしまいます、その穴埋めはどうするおつもりですか?
まさか霧香さんや五大呪術家の方にお任せするつもりではありませんよね?」
「心配はいらん、胡蝶。そのことは既に解決済みだ」
胡蝶の問いに『問題なし!』と胸を張る杏寿郎。
「奥方様、先日藤襲山(ふじかさねやま)で一人の剣士が復帰試験を受け、突破したことはお聞きかと思います」
「はい、主人より聞いております」
「その剣士は私の弟、煉獄千寿郎にございます」
その言葉に今度は柱のみならずあまねも驚く、なんせ千寿郎は鬼殺隊入隊から任務に参加する頻度があまりにも少なすぎたのだ。
「で、では・・・主人の言っていた藤襲山で行う特別な訓練というのは」
「弟を鬼舞辻との決戦のために鍛えるものです」
あまねは呆然としてしまった、確かに輝哉から一人の剣士が藤襲山で試練を受けるのは告げられていた。
内容は到って簡単で『七日七晩生き残る事』だ、最終選別の決まりと違いはない。
だがそこで一つ違うのは参加するのはその隊士一人であること、もう一つは藤襲山にいる鬼が通常よりも多いということだ。
中には血鬼術に長けている者も何体もいるという、どこからそのような鬼を手に入れて来たのか、そこまでは輝哉は話してくれなかったが、そんな中、千寿郎は試練を受け、突破したのだ。しかも五体満足のまま。
「煉獄、お前の弟は呼吸が使えなかったのではなかったのか?」
「伊黒、それは本人の気持ち次第だ。そして呼吸を教える者の心構え次第だ・・・あの子が炎の呼吸を使えなかったのは半分は俺のせいだ。
俺の未熟さが招いたことだ・・・しかしある協力者のおかげで千寿郎は無事に炎の呼吸を体得した!藤襲山の試練を突破したことを含めて鬼殺隊の隊士に復帰しても問題ない戦力の持ち主だ!
そして理由の二つ目が千寿郎のことです、私も炎の呼吸を継承者ですが弟の千寿郎にもその継承をさせたいと思っています。
そのためには時間が欲しい、千寿郎を私に劣らぬ炎の呼吸の使い手に育てるためにも一線を引かせていただきたい」
お館様、奥方様、そして柱の皆にはご苦労をおかけするが何卒、ご理解願いたい」
杏寿郎は深々と頭を下げる。
「煉獄様・・・頭を上げてくださいませ」
あまねの声に杏寿郎は頭を上げる。
「貴方様の願い、主人にしかとお伝えいたします。お返事は後日、文にてお伝えいただきたく思いますがよろしいですか?」
「はい」
「ですがこの場で私から申し上げます」
「?」
「これはあくまで私個人の言葉だとお受け取り下さい。
先の藤襲山での試練、とても厳しいものだったと報告を受けています。何でも予期せぬことが起きたとも聞いております」
「・・・・・」
その『予期せぬこと』は杏寿郎は知っているようだ。
「それでも千寿郎様は無事試練を突破されました、滅した鬼は半数以上だったそうです、鬼殺隊の戦力として十分だと思われます。
私はきっと煉獄様と同じく鬼殺隊の一員として立派にお役目を務められると思います」
「そのお言葉、この杏寿郎しかと胸に刻みました。弟に変わり御礼申し上げます」
杏寿郎は微笑み、会釈した。
「では煉獄様の申し立てにつきましては私の方で預からせていただきます。
ただし『痣』の発現の訓練につきましては一つお伝えしておきたいことがあります」
あまねはあることを柱たちに伝えて退室した。