第75話 小さな幸せ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「その後、君が海野家に来たのは一度だけ・・・それを考えたら納得がいったよ」
「・・・・・・」
「あの日、夜霧から『屋敷へ来るのを止めて欲しい』と言われたんだな」
縁壱は頷いた。
おそらくこの時にはもう二人は体の契りを結んでいたのだろう。
夜霧が亡くなってしまった今、確かめようがないが、彼女は縁壱とうたに対して申し訳ないと思っていたのかもしれない。
彼女の独りよがりかもしれないが妻を想っている縁壱と交わるというのは『裏切り』だと思い込んでしまったのかもしれない。
「夜霧殿」
彼女の顔を優しく撫でる縁壱。
「私はうたの事を忘れたことはない。
だが、あなたへの気持ちにも嘘偽りはなかった」
涙を滲ませる。
「あの夜のことを・・・私は後悔していない、してなどいるものかっ・・・」
縁壱は巾着袋ごと夜霧の手を握り、彼女の額に自分の額を重ねて泣いている。
嗚咽を漏らす度に涙が夜霧の顔を濡らす。
「・・・・・・」
『あの子たちはあの方が人生で何より願っていた小さな幸せなのです、どうかあの子たちをあの方から奪わないでください』
―― 小さな幸せ ――
家族を持って平穏な人生を送る。
妻がいて、子供がいて、成長を見守り、巣立たせ、一緒に歳を取り、天命を全うする。
人間が送る普通の日常、だが縁壱はそれとは正反対の人生を歩んできた。
幼くして家を離れ、うたに出逢い夫婦になる、子供を授かるも鬼に殺され、その後は戦いの中に身を投じることになる。
平穏とはかけ離れた人生だ、そんな中で出逢った夜霧と彼女との間に生まれた二人の子は縁壱にとって『小さな幸せ』なのだ。
「黒椎、紅虎・・・津雲のところにいるあの子たちを連れてきてくれ」
「「はい」」
二人は子供たちを抱きかかえて連れて来ると縁壱の横に座らせた。
「おじうえ」
「このひとはだれですか?」
二人は不思議そうに聞いてくる。
「この人はね・・・お前たちの父上だ」
「「!」」
『父』だと聞いて二人は目を丸くしている、それもそのはずだ。母親の夜霧からは『父親は遠くにいる、もしかしたら生きては会えないかもしれない』と聞かされていたからだ。
「お前たちの母のことを知らせたら戻って来てくれたんだよ」
「「・・・・・」」
冬寿の言葉にまだ信じられないのか目をぱちぱちさせている。
そんな二人に縁壱は優しく声をかけた。
「私は・・・縁壱という」
「よりいち?どうかくのですか?」
朝霧がきょとんと問うてくる。
「『縁(えにし)』に数の『壱(いち)』と書いて『縁壱』だ」
「『えにし』!では、あにうえといっしょですね!あにの『つぐより』にも『えにし』というじがつかわれています!」
「そうか・・・名付けたのは母上か?」
「はい!わたしたちのなまえはははうえがつけてくれました!」
「そうか、良い名を付けてもらったな」
「えへへ!!」
朝霧の頭を撫でてやると先ほどまでの緊張した表情から笑顔になる。
朝霧は夜霧にとても似ている。
そして未だ緊張して固まっている継縁を見る縁壱。
「継縁、こちらにおいで・・・私に顔をよく見せてくれないか?」
「・・・・・」
戸惑い気味に近づいてくる継縁。
自分の子供の頃とそっくりだ、このくせっ毛も瞳の色も・・・・。
「・・・つっ・・・!」
「つっ!」
「わあ!?」
縁壱はたまらず二人を抱き締めていた。