第75話 小さな幸せ
名前変換
この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
詳しくは設定、注意書きをお読みください。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「・・・・そうか」
冬寿も心は決まった。
「君の心を疑ってすまなかった、許してほしい」
「・・・・・・」
「君への妹との約束、しかと伝えよう」
そう言うと津雲に目で合図を送る。
「「・・・・・」」
津雲は式神と共に二人の子供を連れてきていた。
「っ・・・」
縁壱は息を吞んだ――・・・似ているのだ、夜霧と自分に。
「あの子らは夜霧の子供たちだ」
「つっ・・・!」
「頼まれたのだ、昨夜・・・まだ容態が落ち着いている時にな」
―――――――――――
「兄上・・・」
「どうした?」
「頼みたいことがあるのです・・・」
「頼み?何だ?」
床に伏せたままの弱弱しい姿で冬寿を見る夜霧。
「継縁と朝霧をお願いします・・・、守ってやってください」
「何を言っているっ・・・あの子たちは母親であるお前が守らねばならん!
無論、伯父である私も協力する。だが、母親に勝るものではない。
夜霧・・・お前は体の回復させることを第一に考えるんだ」
手を優しく握りながら話す冬寿の言葉に夜霧は首を横に振った。
「私の命は・・・もう、消えます。
わかるのです・・・髪と瞳の色が変化してしまったのは、もはや次の代に私の力を受け継ぐ時なのだと・・・。
ただ、幼い我が子たちを置いて逝ってしまうのが私は心配なのですっ・・・」
黒い瞳から涙を溢れさせる夜霧。
「私は『あの男』を取り逃してしまいましたっ・・・討つ機会はあったのに、逃がしてしまったっ・・・。
これから先、また数多の命が犠牲になるかと思うと・・・口惜しいのですっ、そして自分が情けないのですっ・・・。
そして『あの男』がもし私の子供たちの存在に気付けば必ず抹殺しに来るでしょう、それだけはっ・・・何としても、阻止しなければなりませんっ・・・!
あの子たちは『未来の希望』ですっ・・・ですから、兄上・・・継縁と朝霧を、守って下さい・・・っ」
今込められる精一杯の力で冬寿の手を握る夜霧、しかしその力はあまりに弱かった。
水龍の鬼狩りとして戦っていた時の彼女は冬寿が唸るほど握力が強かったのにだ。
本当に妹の死期が迫っていることを認めざるを得なかった。
「わかったよ・・・・任せておけ。
あの子たちは私が責任をもって育て上げる、必ず守ってみせる。
他には何か頼みたいことはあるか?聞いてやるぞ」
「・・・・では、もう一つ」
――――――――――――
「妹のもう一つの頼みが・・・縁壱、君の事だ」
「私?」
「『継縁と朝霧の父親が海野家を訪ねてきたら迷わず二人を会わせて欲しい』」
「っ・・・!冬寿殿、ではっ・・・」
「ああ、気づいていたよ。君があの子たちの父親だということはな」
縁壱が夜霧の元に訪れなくなる数日前だった、夜霧が一晩だけ屋敷に戻らない日があったのだ。
謹慎を下された身のため、屋敷を空ける時は式神を付けるようにし、外泊をしないように言っておいた。
幼い頃から余程の事がない限り約束事を破らない夜霧が初めて決まりを破った。
その時の彼女は『知人に会いに行っていたが殊の外話が弾んでしまい、夕暮れ時になってしまった。そのため近くの宿屋に宿泊した』と言っていた。
一度だけ・・・たった一度だけのことだったので深く追及はしなかった。