第75話 小さな幸せ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「謹慎の処分が下ってから夜霧様は我ら住処である鬼灯の近くに住まいを移され過ごされていた。
我々も夜になれば度々訪れていました。しかし少し経った後、体調を崩され寝込まれました。医者に診せた結果、告げられたのが・・・『懐妊』でした。
その報せを聞いた時、冬寿様はまるで動揺していらっしゃらなかった、おそらく見当がついていたのでしょう。
そして同席していた津雲殿、黒椎と私に向かってこう仰いました。
『密かに継国縁壱を捜し出してこい』と――・・・」
おそらく父親である彼にも知る権利はある、そう思っての命令だろう。
そし十カ月十日を経て、夜霧は子供を産んだ。その子供たちは皮肉にも父親である縁壱と同じく『双子』であった。
「まさか・・・これも因果と言うべきなのか、継国縁壱と夜霧様のお子が双子だったとは――・・・」
「唯一違うのは縁壱と巌勝のように同じ顔をしていない双子だったということだ。
子供は男児と女児で『継縁(つぐより)』と『朝霧(あさぎり)』と名付けられた。
子供たちの存在を知るのは俺と津雲のオヤジさんと紅虎、そして冬寿様だけだった。
夜霧の事も除隊後は海野家の方で隔離して過ごさせていたし、子供たちのことも一切外には漏らさなかった。
その裏で俺たちは縁壱を探した、五年間かけてようやく捜し出した」
―――――――――――――
「よお」
「・・・・・・」
縁壱を捜し出したのは黒椎と紅虎だった、彼は鬼殺隊を除隊した後、とある山小屋に住んでいた。
「こんなところにいたとはな」
「黒椎と紅虎・・・久しいな」
ゴツッ!!
縁壱が言葉を発した次の瞬間、黒椎の拳が彼の右頬を殴りつけていた。
「『久しいな』じゃねえ!!テメーッ!!」
「っ・・・」
「何でっ・・・何で夜霧の所に来なかった!?」
黒椎は夜霧の体の不調が今までの疲労の積み重ねや鬼舞辻を取り逃がしただけのものでないことは気づいていた。
『縁壱』という男に会えなくなってしまったこと、もう亡き人だとしても愛する妻を裏切ることをさせてしまったことに対して思い詰めていたのも要因だろう。
だからこそ黒椎は許せなかった。
縁壱は『あんな軽いことを平気でする男』とは思っていなかった、信じていたからだ。除隊したとはいえ関係が絶たれるわけではない。
でも縁壱は鬼殺隊を去ってからある時期を境に夜霧に会いに来なくなってしまった。黒椎と紅虎は主である夜霧が縁壱を愛しているのは知っていたし、縁壱の気持ちも同じ男性として薄々気づいていた。
押しかけることではないが少なくとも近くに居を構えてもいいはずだ、だが縁壱は遠方に住んでいたのだ。
「黒椎、よせ」
再び殴ろうとする黒椎を止めたのは紅虎だった。
「冷静になれ、会いに来なかった理由は少し考えればわかるだろう?」
「わかるから何だってんだ!?普通惚れた女なら人目を避けてでも見に来るもんだろ!!
お前は違うのか?紅虎!!たとえ相手と言葉を交わすことができなくても見守るって思う気持ちは湧かないっていうのかよ!?」
「・・・・・・」
紅虎も黒椎が言いたいことはわからないではない、自分も今、縁壱に対して怒りの感情が湧いているからだ。
縁壱のことだ、会いに行っては夜霧を困らせると思ったのだろう。
「私も・・・この男を許すつもりはない・・・」
拳を握り締める紅虎。
「だが、どうするかは冬寿様と夜霧様が決めることだ。私たちはただ『命じられたこと』を果たせばいい」
そう言うと黒椎を引き離し、縁壱を立ち上がらせた。
「お前に報せたいことがある」
「?」
「夜霧様が体調を崩され、床に伏している。香炉家の医者の見立てではもう長くはないそうだ」
「!?」
紅虎の言葉に縁壱の瞳に絶望の色が滲んだ。