第75話 小さな幸せ
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「先に好意を抱いたのは夜霧の方だった、『境遇が似ていた』ということもあるが継国縁壱という男が自分にとって『特別』になっていくのを感じていたようだ」
津雲は冬寿に従いながら夜霧とも行動を共にしてきた。
時間としては黒椎と紅虎よりも長かっただろう。
自分に『兄には内緒で』と縁壱について相談もしてきたくらいだ。
「縁壱・・・さんの方はどうだったの?夜霧さんはそうであったとしても彼の方は奥様のこともあったし、その・・・『親愛』という意味で接していたんじゃないの?」
津雲の話を聞きながら霧香は疑問を口にした。
「距離が縮んだといっても急激にではない、年数をかけている。
夜霧も縁壱が亡き妻のうたのことをまだ愛していると気づいていたからな。
あの子からズカズカと心に入り込むということはしなかった、二人は自然と・・・・流れるように深くなっていったのだ」
それは津雲も予想していなかったことだった。
なにしろその恋は夜霧のみが抱えているものだと思っていたからだ。
しかし今考えれば、縁壱の感情が変化するきっかけはあったのだ。
彼の双子の兄・巌勝(みちかつ)の存在だ。
巌勝は生家を継ぎ、戦に参加していた。しかし夜営していたところを鬼に襲われ窮地に陥っていた。
そこを救ったのが縁壱だった、まさか家を密かに出て行った実弟が十数年の時を経て己を助けてくれるとは夢にも思わなかっただろう。
巌勝はその後、継いだ家も妻子も捨てて鬼殺隊に入隊した。
縁壱は家の事を気にしていたが『息子に継がせてきた』という兄の言葉を受け入れ、喜んだ。それは夜霧と引き会わせるきっかけにもなった。
「夜霧殿」
「縁壱さん」
いつものように隊士の様子を見にきた彼女に縁壱は巌勝を紹介した。
「まあ、こちらがお兄様・・・とてもよく似ていらっしゃいますね」
兄弟である上に双子なので似ていないというのはないと思うのだが、この時、夜霧にとっては本当に『こんなに似ている兄弟がいる』ことを直視した瞬間だった。
「鬼殺隊と五大呪術家の隊士の繋ぎ役をしております、夜霧と申します。よろしくお願いいたします」
この時にはもう夜霧は頭巾のみで面を付けることは少なくなっていた。
そして巌勝が彼女に『異性として』の気持ちを持つのに時間はかからなかった。
出奔したとはいえ妻子がいた身の巌勝だが家同士の縁組、本心から惚れた相手ではなかった。
しかし夜霧の場合は違った、彼女の姿を見て日々接していくうちに巌勝は夜霧を愛してしまったのだ。
それは後に縁壱の心の変化に繋がる。
「同じ女を愛してしまうとは・・・兄弟ではあるが数奇な運命よ。
縁壱の兄も含め鬼殺隊の人材も充実しつつあり、討伐も順調に進んでいた。
そしてとうとうあの男が現れたのだ、縁壱と夜霧の前に――・・・」
「あの男とは、鬼舞辻か?」
「うむ、しかしその場で討ち取ることはできなかった」
「何故?」
「夜霧の話では鬼舞辻は『その場で己を肉片に変え、生き延びた』と言っていた。おそらく縁壱や夜霧に勝てぬことを察し、その場を逃れることを優先したのだろう。
大きな肉片は斬ったが残り数百の細かい肉片は逃してしまったと言っていた」
津雲の話を呆気に取られて聞いている一同、己の体を弾けさせ逃れる術を持ち合わせているなど誰にも予想はできない。
鬼舞辻無惨、どこまでも能力が底を知れない男だ。
「鬼舞辻を討ち損じたことを帰って報告した時、縁壱と夜霧は皆に責められた。
隊士の中でも腕利きの二人が鬼の首領を逃してしまったからだ」
「でも・・・それは二人のせいとは言い切れないわ。
当時の柱の方々や現在の柱の皆様、私たちでさえそのようなことが目の前で起きれば果たして討てたかどうかわからないし、何より二人は『超人』ではないわ」
琴乃の言うことも最もだ、いくら技が卓越していても継国縁壱は人間。
いくら妖の力が一族の誰よりも強かった夜霧もまた人間なのだ。妖怪であっても『完璧』などあり得ない。
しかし他の隊士たちは二人を責めた、その結果――・・・・継国縁壱は除隊、夜霧は水龍を同じく除隊、海野家での謹慎を余儀なくされた。
だが問題はここからだった、この時既に夜霧は子供を宿していたのだ。