第74話 日輪と月光
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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あなたは・・・
私と出会えて・・・
幸福(しあわせ)でしたか?
二人の出会いは偶然に偶然が重なったものだった。
炭治郎たち時代より約三百年前、所謂――、『始まりの呼吸の剣士』たちが生きた時代。
戦国時代――
その時代のある夜に一人の男と一人の女が出会ったのだ。
「・・・・・・」
この男は継国縁壱、数ヶ月前に妻と子を失ったところを鬼殺隊の柱に発見され、組織に加わった者である。
この日、縁壱は鎹鴉より指令が下り鬼を狩ってきた帰りであった。
夜が明ける時間ではあったもののまだ周辺は薄暗い、山道を降って来たからということもあるが足場に気を付けながら彼は帰路を歩いていた。
ピシャッ・・・ピシャッ・・・
「!」
その時だ、自分の歩いている茂みの向こうから水音がした。
夜明け前とはいえ、この薄暗い山に水音・・・獣がいるわけでもない。
「・・・・・」
縁壱は不思議に思い、茂みを掻き分けて水音のする方に行ってみた。
歩いていくとちょうどそこは川辺だったようで水音は川上の方から聞こえてきた。
パッシャッ・・・ピチャピチャ・・・
水音が近い、しかし様子見をするために縁壱は茂みからそーっと水音を出している正体を観察し始めた。
薄暗いといっても輪郭ははっきり見える、人だ。だが鬼という可能性もある。もうしばらく様子を見る。
水音を立てている人物はどうやら何かを洗っているようだ。
〈こんなところで何を洗っているのだ?〉
より疑問を感じた縁壱は観察を続けていると周囲が明るくなり始めた。
〈!?〉
明るくなり始めたことで相手の姿がより鮮明になってきた。
水音を立てていたのは、年若い女だった。
そして洗っていたのは自分の体だった、手ぬぐいを濡らして自分の体を拭いている。
そして彼女は結い上げていた髪を解き、髪を洗い始めた。
「・・・はあ――・・・」
水の冷たさのためか息をつく。
「気持ちいい・・・」
うっとりした口調で洗い続け、頭を上げて濡れた髪の絞って水気を取っていく。
「水はやっぱり気持ちいい・・・安心する・・・」
〈!〉
彼女が絞った髪を揺らめかせた縁壱のいる茂みの方に顔を向けた。
その瞬間、縁壱は彼女に一瞬だが見惚れた。
朝陽が昇って明るくなっていたため彼女の姿もはっきりと見えた。
藍色と白の混じった髪色、まるで七夕の夜の空と天の川ようだ。
そして透き通った青い瞳、澱みのない晴天、水鏡のような水面のような色だった。
〈綺麗だ・・・〉
縁壱の第一印象はまさにそれだった。
彼女が何者であるか考える前に、まずその容姿に見惚れてしまったのだ。
しかしそこで注意力がぶれてしまったのかうっかり物音を立ててしまう。
「!?」
〈!?〉
彼女も音に気付き、何者かが潜んでいると察したのだろう。身なりを簡単に直してその場を去ってしまった。
「・・・・・・・」
彼女が去った後、縁壱は複雑な気持ちのまま茂みから出てきた。
「女子の禊ぎを見てしまうとは・・・申し訳けないことをした」
今まで女人は母と妻のうたのことしか知らなかった縁壱、成り行きとはいえ女性の裸(正確には背中だが)を見てしまった自分が情けない。