第73話 海野家の闇
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「瀬津寿のように子供たちにたいして『各々の才能を伸ばしてやればいい』と考えられる者であれば良かったのだが・・・あ奴らの父親はそうではなかった。
『何故、兄ある冬寿は妹の夜霧よりも劣り、姿恰好も人間に近いのだ』と毎度毎度息子を罵った。
そのこともあり夜霧は冬寿と距離を置いていたのだ。
その頃、夜霧は水龍の鬼狩りであったが影の役目。戦国の世で言うならば『忍び』として立ち回っていた、秘密裏に多くの情報を集め、必要ならば鬼を狩り、名を受ければ一族の裏切り者の始末も請け負っていた」
〈そんな・・・女の子にそんな酷いことまでさせるなんてっ・・・〉
話を聞いていてだんだん悲しくなってくる蜜璃。
「冬寿も海野家の次期当主として水龍の頭を勤めてはいたが影の夜霧の活躍が当主である父親の耳に入るといつも罵倒されていた。
ついには『お前が女子で夜霧が男児で生まれてこればよかった』と言われてしまった。
しかし冬寿は夜霧を憎まなかった、むしろ『汚れ役をさせてしまい申し訳ない』と言っていた」
「冬寿殿は夜霧様と距離を縮めようとされていたのですか?」
「というより冬寿は初めから距離を置こうとはしていなかった、夜霧の方が逃げていたのだ。
あの子は才能はあっても心根が優しい子じゃったからな、自分のせいで兄が酷い目にあっている現実を直視できなかったのだろう。
そしてついに事件が起きてしまった」
『事件』という物騒な言葉に一同固唾を呑む。
「夜霧が父親を殺害してしまったのだ」
これは海野家の冬寿以降の当主たちには何も知らされていなかったことだ。
あの事件が起こる数日前、冬寿と夜霧の父親は病の床に伏していた。
病状も芳しくなく、もともと癇癪持ちであったことから冬寿へ罵声を上げるたびに体力を奪われていった。
そして翌日のことだ、夕方任務を終えた冬寿が報告をするために父親の部屋に行くと様子がいつもと違うことに気が付く。
まず気配がない、そして声をかけるといつも不機嫌な声で返答があるのにそれも聞こえない。
寝ているのかと思ったがすぐに障子を開けると父が青白い顔をして横たわっていた。
抱き起してみると既に体温が失われていた。
冬寿はすぐに母親を探した、父の世話はほぼ母親がしていたからだ。
しかし、母親に聞いても昼には意識があったというばかり。
だと残るは―――・・・・。
「冬寿が次に疑うのは一人しかいなかった。
任務から帰った夜霧に母親と一緒に問いただすと認めたそうだ。
『薬を盛って父親を殺した』とな、理由は同じ憎い存在であるにも関わらず兄だけに体罰を与える父親が許せなかったとのことだ」
夜霧は処罰を受けることを覚悟して殺害に及んだ、母親も兄も海野家でも影の存在とされている自分を処断することができて肩の荷が下りるだろうと思っていた。
だが、冬寿が口にしたのは意外な言葉だった。
―― 父親は病死、葬儀は身内だけで執り行う。一族でそう徹底させろ ――
つまり夜霧が行ったことを抹消するということだ、母親も反対するかと思いきや兄と同じく夜霧を処断しないことを選んだ。
こうして夜霧は冬寿が当主の座に着いた後も引き続き、水龍の影の役割をこなしたのだ。
「信じられねーな、その冬寿とかいう兄貴は・・・身内が殺されれれば処断するだろうに」
天元の言うことも最もだ。
「冬寿は悔いていた、自分が男児としても次期当主としても情けなく、妹に『父殺し』をさせてしまうほど弱い自分がな。
本来ならば自分が父を止めるべきだった、いいや早くに隠居させていればよかったと嘆いていた、それで夜霧を処断することはどうしてもできなかった。
母親も日頃から子供たちに冷たくする夫を憎んでいた、妻だから母親だからと耐えなければならなくとも娘にこんなことをさせてしまったことが冬寿と同じ感情にさせてしまったのだろう。
そして夜霧に言ったのだ。
『お前が死ぬというならば自分たちも死ぬ』とな、自分の命を一つと考えるな、兄と母の命だと思えと言い聞かせた。
兄と母が逝ったならばお前の好きにしろと――」
冬寿は何とか妹に生きていて欲しいと思い、縛りにも近い言葉を使い言い聞かせたのだろう。
辛い気持ちは自分も背負う、だからお前の命を失う悲しみは背負わせないでくれと。