第6話 鋼の剣士
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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私は小さい頃から力が強かった。
両親の話では物心をつく年齢で黒鉄家の自分の一つか二つ年上の子供たちと腕相撲をして一番になってしまったそうだ。
普通ならこの時点で『怪力女』と馬鹿にされ嫌われるものだが、黒鉄家は違った。
権現門黒鉄家は五大呪術家の中で『金』を司る一族。
主に陰陽師の鬼狩りの武器を造ってきた、産屋敷家と協定を結んだ後も刀鍛冶の里の者たちと協力をして鬼狩りの刀を造り続けた。
武器を造るというのは力のいる仕事で、熱した鉄を金槌で打ち、冷やし、削る。
その他にも鉱山に昇って鉄や鉱石を取ることも多い。
なので黒鉄家は武器の扱いはもちろんのこと、身体能力向上にも力を入れていた。そのため五つある家の中では一番身体的能力が高いのだ。
重たくて危険な薪割りや井戸の水汲みも子供から大人の女性までなんなくこなせてしまう。
そして一族の中でも数十年に一度は人並み外れた剛力の者が生まれてくる。
我が家では自分がその力の持ち主だった。
小さい頃は自覚はなく『ほんの少し周りのみんなよりも力が強いだけ』と思っていた。
しかし、成長するにつれて腕相撲が組み手となり、割るものが薪ではなく岩になった。
身体が丈夫で力が強いことは嬉しく思えたが、どうしても釈然としない自分がいた。
だって周りの女の子はこんなに力は強くない。
みんなは自分のことを羨ましがるけど、自分は周りが羨ましい。
適度の丈夫さと適度の力強さが羨ましい。
それに鍛冶場はあまり女性が入るところではない、実際に私は武器造りはさせてもらえないのだ。
そして権現門の陰陽術の修練、黒鉄家の女性は鍛冶場に入ることはできないため主に陰陽術の方で才能を開花させていた。
自分に向いた武器を鍛造し、陰陽術を使って極める、傍から見れば『こんなに恵まれている一族』はないだろう。
しかし自分の『剛力』という体質は厄介なもので武器を長年使い続けることができなかった。
力に耐えきれずにすぐに割れたり、折れたり、欠けたりしてしまうのだ。
特に鬼狩りの武器は敵である悪鬼を一撃で仕留めるような切れ味を求められる。
だが切れ味に優れた武器は薄く、軽いものなので『剛力』の力を凌ぐだけの耐久性がないのだ。
そのため修練で何本も武器を破壊した、その度に造り直してもらったのだ。
「はあ・・・・」
あれは十三歳の頃だっただろうか、もう何百本目かわからない自分の武器を破壊して、次の武器が届くまでため息をついていた日だ。
「琴乃」
「兄さん・・・」
実家の縁側でしょげていた琴乃に話しかけてきたのは二つ年上の兄の笙(しょう)だった。
「武器が壊れてしまったのか?」
「うん・・・もう数え切れないくらい壊した」
琴乃の隣りに座った笙。
「兄さんも昨日まで鬼狩りの特訓だったんでしょ?」
「ああ、篠熊さんの所に行って来たよ」
篠熊蒲生(ささくま がもう)、岩の呼吸の使い手で兄の師匠だ。
「呼吸の会得は難しそうだよね」
「ああ、俺も師匠に教えてもらって長いが・・・なかなか身につかない。同期の悲鳴嶼の方が余程飲み込みが早いよ」
苦笑する笙。
「『悲鳴嶼』って誰?」
「ああ、俺と同じくらいに習い始めた男でな。悲鳴嶼行冥という奴がいるんだ、とても良い体格で力も強い、まさに岩のような男だ」
『岩のような男』と聞いて自分とどちらが強いのだろうと少し興味が湧いた。
「だが根が優しい奴でな、師匠の元に来る前は孤児を引き取って育てていたらしい」
「え?じゃあ、今その子供たちはどうしてるの?」
「鬼に殺されたそうだ、悲鳴嶼は運悪くその場にいなくてな、一人を除いて全員が殺された」
「っ!」
「自分の家族も病気や飢えで失っている悲鳴嶼にとって『無くなるはずがなかった命を奪われた』のは、さぞ鬼に対する憎悪も深いだろうな」
「・・・・」
「あいつはもう岩の呼吸を会得した、近いうちに師匠から最終選別に出る許可が下りるだろう」
「兄さんは?」
「俺は・・・」
何かを言いかけたが笙は『何でもない』と濁し、その場を去った。
そしてそのすぐ後だった、笙が篠熊の元を去り、本家に戻ってきたのは・・・。
理由は『最終選別の許可が下りなかった』と両親から説明された。
笙はすぐに鍛冶場に入り、武器造りと陰陽術の修練に励んだ。