第69話 隠れた逸材
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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『落ち着け』
「!」
『落ち着くのだ、私と清明の愛しい子よ』
頭の中に柔らかい声が響く。
次の瞬間、意識が現実から飛んだ。
ピチャン・・・
『!』
気づけば霧香は水面(みなも)の上に立っていた。
『ここは・・・』
『我らの魂の世界じゃ』
声が響き、水の下から女が現れた。
『よお来た、私と清明の愛しい子』
『あなたは・・・』
その女の姿には見覚えがあった、自分の生家・海野家の蔵に保管されている絵だ。
水の上で踊る、そしてその表情は描いている者に向けられ、とても愛おし気に見ているあの女性。
『滝夜叉姫様・・・』
『ああ、良き賢き子だ。私が名乗らずともわかるとは――・・・』
滝夜叉姫は霧香の頬を愛おしそうに撫でた。
『そなたらの活躍、血を分けた子孫たちより見ているぞ。
三百年ぶりにあの男を倒す心意気の強い者が誕生し、私はとても嬉しく思う』
『え?』
『あの男はな・・・弱い男なのだ、他者を犠牲にしなければ生きてゆけぬ弱い男なのだ。清明も嘆いておった、人であるが故、己の欲望に走ってしまう気持ちもわからぬではないが、あの男は少々度が過ぎるとな。
本来なら初代たちが倒しておったはずなのだが・・・あやつめ、少し長生きしている間に姑息な手段を覚えていた』
苦々し気に呟く滝夜叉姫。
『あの・・・』
『ああ、すまぬな。つい昔のことを思い出してしまった・・・、本来ならばそなたらの時代まで続くことはなかったのだ。
しかし、これも縁か・・・再び、あの時と同じことが起きようとしている』
『同じこと?』
『痣者のことよ』
その言葉に体が固まる霧香、彼女の痣はもう背中から首の後ろまで広がり、肩から胸にかかりつつある。
『始まりの呼吸の剣士の時代・・・三百年前のことと同じことが今、現実に起きている。
鬼舞辻無惨を倒せる力を持った剣士がまた生まれ、今、追いつめている。
そなたを含めて、あの男の脅威になろうとしている』
『滝夜叉姫様・・・お願いです!』
霧香は彼女の手を握った。
『私は鬼舞辻無惨を倒すまで止まるわけにはいかないんです、家族や仲間、そして愛しい人と平和な世を迎えるまで止まりたくありません』
『しかし大きな負荷は後にどんな影響をその身に落とすかわからぬぞ?』
『それでも構いません、鬼舞辻を倒した後、寿命が半年・・・いいえ、ひと月になったとしても、あの男は滅しなければならないんです!私たちが鬼殺隊と五大呪術家が成し遂げなければならないことです!』
『・・・・・』
滝夜叉姫はじっと霧香を見ていた。
『そなたもアレと同じことを言うのだな』
『え?』
『心配はない、妖(私たち)の血やその力は元々そなたらの体に馴染んだもの。
妖の力を使ったとしても死にはせぬ、力の巡らし方はそなたが幼き頃、指導を受けているのだから』
そこで鱗滝の元へ出される前の訓練を思い出す、確かに力の巡らし方、気の巡らし方は父や母から受けている。
『己の血を・・・力を恐れるでないぞ、人間の血も妖怪の血も等しく、五大呪術家なのだ。
熱くなれども心は雪山のように涼しく冷静であれ、そなたも言ったように、倒れるべき悪はおのずとわかる・・・良いな?』
滝夜叉姫はそう告げると霧香の額をトンと小突いた。