「てる子、声を出さないでね。今・・・私たち二人の前に目の前に鬼がいる」

「つっ・・・」

てる子は叫びそうになるのを自身の手で押さえて耐える。

「いい子だ、私たちから少し距離を取って・・・」



チャキ・・・



炭治郎と霧香は日輪刀を抜いた。


――――――――――――――――


「死ぬゥゥ～～～っ！！！死ぬ死ぬ死ぬっ！！死んでしまうぞっ！！イヤアアァァァァ――――ッ！！炭治郎と霧香さんが消えたァァァ――――ッ！！」

「うるさいわよ、善逸！少しは黙りなさいっ！！」


アカリに『ゴツン』と鉄拳制裁をされる善逸。


「それにしても困ったわね・・・霧香と炭治郎くんを探す仕事も増えちゃったわ」

「そんなことを言ってる場合じゃないですよおぉぉぉぉ！！霧香さんの話だと根源の鬼以外にも何体かいるんですよね！？」

「まあ、そうね・・・五人くらい」


「うおわああァァァ――――！！無理無理無理！！根源以外にあと五体もやっつけるとか無理ィィィィィ！！！」

「だから黙れって言ってるでしょうがっ！！」


またギャイギャイ騒いでるアカリと善逸。

「う～ん・・・どうしようかしら～？これだと遅かれ早かれ――・・・」






ズルズルズルズル・・・


「ん？」



「「シャ―――ッ・・・」」




琴乃の視線の先には長い手を壁に這わせている鬼と目玉をギランギランと見開いた鬼がこちらを見つめている。

「さしずめ、手長鬼（てながおに）と割目鬼（さきめおに）ってところかな・・・」

背中に挿した棍棒を取り出す。

「アカリ、善逸くん、ケンカは後にした方が良さそうよ～」

「「え？」」

二人も鬼のことに気付いたようだ。

「ほら見なさい！アンタのせいでバレたじゃない！！」

「何で俺のせいなんだよォォォ―――！？」

「一番騒いでたのアンタでしょうがっ！！」

「アカリ！」

「つっ！」



「ヒヒヒヒ・・・人肉だ、子供と女・・・これは良いっ！！」

「どちらも極上だ・・・内臓に！肉に！血！食い放題だ！！」




割目鬼は舌なめずりしながら突っ込んでくる。


「ったくもう！！善逸！後で覚えてなさいよ！！」

日輪刀を抜くアカリ、そして割目鬼の猛進を棍棒で受け止める琴乃。

「坊や、名前は？」

「正一・・・」

「善逸くん、正一くんを連れて逃げなさい」

「へ？」

「それとも残る？」



「遠慮しまああァァ―――――――――すっ！！」




男の子を連れて『すたこらさっさー！』と逃げる善逸。


「逃がすかあァァ！！」


割目鬼を止めている琴乃の上を手長鬼の手が伸びて追い越し、善逸に迫る。


「ギャアアアァァ―――！！来ないでください―――ッ！！」


善逸の頭を手が掴もうとした。


「つっ！？」


ザンッ――・・・ボトッボトッ！


「アンタの相手は私よ」

「なっ！あのガキ、いつの間に・・・！！」


手長鬼は手を伸ばす速度についてこれたアカリの脚力に驚いている。