第65話 霞の晴れた先
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「お前に何ができるって言うんだよ!!」
「!」
「米も一人で炊けないような奴が剣士なる?人を助ける?
馬鹿も休み休み言えよ!本当にお前は父さんと母さんにそっくりだな!!」
「兄さん・・・っ」
「・・・楽観的過ぎるんだよ、どういう頭してるんだっ・・・」
ギリギリと包丁を強く握り締める有一郎。
「具合が悪いのを言わないで働いて具合を悪くした母さんもっ・・・嵐の中、薬草なんか採りに行った父さんもっ・・・。
あんなに止めたのにっ・・・!!母さんにも、休んでって何度も言ったのに!!」
「・・・・・」
「いいか?無一郎、人を助けるなんてのはな・・・選ばれた人間にしかできないことなんだ・・・。
先祖が『剣士』だからって『子供の俺たち』に何ができる?!」
途端、凄い形相で振り返る有一郎。
「教えてやろうか?できること・・・俺たちにできること。
『犬死』と『無駄死に』だよ!父さんと母さんの子供だからな!!」
そう言い切られた、否定できなかった。
実際、無一郎は自分自身が『何もできない』と思い込んでしまったからだ。
『子供の自分たちに何ができるのか』とその問いの答えを見いだせなかった。
その日を境に有一郎と無一郎は互いに会話をしなくなった、幾度も通い続けたあまねに有一郎が水を浴びせようとしたことを止めた際に喧嘩になったこと以外は・・・。
そしてある暑い夏の夜―――・・・・二人の運命が変化した。
その夜はとても蒸し暑く、気温と蝉の鳴き声に二人とも苛々していた。
そして少しでも涼を取るために戸を開けて眠っていたら・・・・現れたのだ。
『鬼』が―――・・・
鬼は有一郎に襲いかかり、その叫び声に無一郎も起き上がった。
見れば兄の左腕が引き裂かれていた。
「うるせぇうるせぇ、騒ぐな。
どうせお前らみたいな貧乏な木こりは何の役にも立たねぇだろ。
いてもいなくても変わらないようなつまらねぇ命なんだからよ」
鬼は深手の有一郎と寄り添う無一郎に向けてそう言い捨てた。
玉壺の言葉に反応したのはこの時の言葉だ、命を見下す言葉。
無一郎は傷ついた有一郎と傷つけた鬼を交互に見る、そして目の前が真っ赤になった。
生まれて一度も感じたことのない、腹の底から噴き零れ出るような・・・激しい『怒り』だった。
その後は無我夢中で何も覚えていない、とてつもない咆哮が上がった。
それが自分の喉が発していることにも無一郎は気づいていなかった。
次に意識が定まった時には鬼は死にかけていた、自分は右手に木槌、左手に斧を持っていて鬼の頭を潰し、胴体や手腕に朴杭を打ち込み、足を斬り落としていた。
しかし鬼は死なずにいる、だが身動きが取れないのか再生はしていても苦しんでいた。やがて朝陽が昇り、鬼は塵となって消えた。
「・・・・・・」
無一郎は家に戻ろうとしていた。
身体が重い、鉛を引きづっているように重い、すぐ目の前に家が見えるのになかなか辿り着けない。
無一郎は気づいていなかったが彼の体も傷だらけだった、鬼と闘ったことあり重症だ。むしろこれほどの傷を負っているのに動いているのが不思議なくらいだ。
「っ・・・っ・・・」
ようやく戸口まで来た時には歩けなくなり、這いずって進んでいた。
囲炉裏の傍で倒れている有一郎を見れば何かを呟いていた。
〈兄さん・・・生きてる・・・兄さん・・・〉
まだ息があることに喜んだ無一郎、どんなに自分に冷たくあろうとたった一人の肉親。もういなくなって欲しくない、たとえ嫌われていても傍にいたいと強く願う無一郎。