第64話 自分の力を人のために
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「ゴボッ・・・」
無一郎は最後の呼吸を使い切り、窮地に陥っていた。
視界が狭窄してきた、このままでは死んでしまう。空気が尽きた。
『自分の終わりを自分で決めてしまってはだめだ』
幻覚の炭治郎がまた語り掛けてくる。
〈君からそんなこと言われてないよ〉
『絶対どうにかなる、諦めるな。必ず誰かが助けに来てくれる』
〈何それ・・・結局は人任せなの?一番駄目だろう?〉
『無一郎、一人でできることはほんのこれっぽっちだよ。だから人は力を合わせて頑張るんだ』
〈でも誰も僕を助けられない、みんな僕より弱いから・・・僕がもっとちゃんとしなきゃいけなかったことなのに判断を間違えた。
自分の力を過大評価していたんだ、無意識に・・・柱だからって〉
『そんなことはない、現に彼女は君を助けようとしてくれたじゃないか』
炭治郎はアカリを見る。
『無一郎は何も間違ってない、大丈夫だよ』
〈いいや、いくつも間違えたから僕は死ぬんだよ。アカリだって・・・僕が巻き込んだ〉
そう思って死ぬ覚悟が決まった無一郎は静かに目を閉じた。
その時、水の牢の中に刃物が差し込まれた。
「死なせない!!時透さん頑張って!!絶対出すから!!俺が助けるから!!」
小鉄だ、彼が刃物を使って水の牢を破ろうと必死になっている。
〈僕が斬れないのに君が斬れるはずがない。
僕なんかよりも優先すべきことがあるだろう、里長を守れ。
そんなこと君には無理か・・・せめて持てるだけの刀を持って逃げろ〉
その時、小鉄の後ろからあの魚の化け物が近づいてくる。
〈つっ!何してる、後ろだ!!〉
水中で声を発せない無一郎は必死に小鉄に伝えようとするが、無理だった。
アカリの使役鬼の燕薇も毒の症状で体が満足に動かせないようだ。
「つっ!!」
〈・・・・つっ!!〉
そうこうしているうちに小鉄は攻撃を受けてしまう。
「ギャッ!!痛っ・・・!!」
身体を押さえて蹲る小鉄。
「つっ・・・うわあ、血だっ!!」
〈何をしてる!!何をしてる!!早く逃げろ!!早くしろ!!〉
水の中に閉じ込めながらも無一郎は心の中で必死に小鉄に叫ぶ、しかし次の瞬間に彼の鳩尾に魚の怪物の攻撃が貫いた。
鳩尾だ、急所を刺された。あんな少年では出血を大量に流して死んでしまうだろう。
〈どうして・・・っ!君じゃだめなんだ!どうしてわからない!!〉
傷口を押さえて早く逃げて欲しい、自分を見捨てろ、助けようとするなとそればかりを願う無一郎。
しかし小鉄はヨタヨタと近づいて水の牢に口を当て空気を中に送った。
「!」
『きっと大丈夫』
「っ!」
今度は炭治郎と一緒に霧香の幻覚が現れる。
『情けは人の為ならず、あなたなら大丈夫』
にっこり微笑む霧香。
『人のためにすることは巡り巡って自分のためになる』
すると二人は霞に包まれた、そして一人の男性と女性に変わる。
『そして人は自分ではない誰かのために信じられない力を出せる生き物なんだよ、無一郎』
小鉄が送ってくれた空気を肺に取り込み、再び呼吸を取り戻した無一郎。
〈・・・・知っている〉
―― 霞の呼吸・弐ノ型 『八重霞(やえかすみ)』 ――
無一郎の剣技が水牢を斬り破った。
思い出した、霞の中から現れた男性。
自分の亡き父親だ、彼は炭治郎と同じく赤い瞳を持ち主だった。
女性の方はわからなかったが、どこか懐かしい感覚がした。おそらく宿で霧香の言葉に反応したのも彼女から聞いたのかもしれない、彼女もまたかつて知っていた人物なのかもしれない。
「ガハッ、ゴフッ!」
肺に入ってしまった水を吐き出す無一郎。
〈アカリはっ・・・〉
彼女はまだ水の牢に囚われたままだ、しかしまだ自分は体が動かない。
そこで動いたのはまだ毒の侵食の少ない燕薇だ。
彼女が必死に伸ばした手から炎が迸り、アカリを囚えている水の牢に巻き付き、蒸発させていく。