第64話 自分の力を人のために
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「ぐあっ!!」
あばら屋を守っていた鉄穴森の鉈が折られて、受けた攻撃を受け切れずに中に倒れ込んでしまう。
「こんなあばら屋を必死で守ってどうするというのだ?
もしやここにいるのは里長というわけではあるまいな?」
ジャッ、ジャッ・・・ジャッ・・・ジャッ・・・
「?」
玉壺が怯えながら後退る鉄穴森の姿を見ると奥にまた人の姿が見えた。
その人物は刀を研いでいる、一心不乱に『ジャコジャコ』と刀を研ぎ続けている。
「んんん?」
よく観察してみると若い人間の男であることがわかる、歳は四十手前の肉体。
〈里長とは思えん、一介の刀鍛冶か・・・〉
そしてその横には、もう一人男がいる。
男は磨き上げた刀剣に鍔を取り付けていた。
「おい、そこの人間ども」
玉壺は声をかけるも返事は無かった。
「作者は誰なのだ?どのような方がこの刀を・・・何故、自分の名前を刻まずにこの『一文字』を・・・いや、分かる・・・わかるぞ」
「・・・・・」
もう一人の男も刀に鍔を付け終えたようで柄を取り付ける作業に取り掛かる。おそらく二十代の若い男だ。
〈こいつら!!〉
玉壺は衝撃だった、この男たちは自分の存在に気付かない程に集中している。
それが玉壺の中で苛立ちに変わる、自分でも作品に対してここまで集中したことはなかった。
作品の情熱に対して、芸術家に対しての心情が負けている気がしたのだ。
「つっ!」
咄嗟に玉壺は壺から金魚を出し、二人に攻撃した。
「鋼鐵塚さん!笙殿!」
鉄穴森が駆け寄ってくる。
パキッ―――・・・
その時、鋼鐵塚の仮面が割れて崩れ落ちた。笙の体にも金魚の攻撃による負傷が見られる。
〈こ、この男・・・!手を止めぬ!!〉
普通なら命惜しさに逃げるものだが二人は手を止めない。むしろ刀を蘇らせるためにさらに心血を注いでいる。
「自分の名を刻まなかった理由・・・この一文字、この一念でのみを込めて作られた刀なんだ。ただ一つ、これだけを目的として打った刀」
鋼鐵塚は刀を研ぎながら刀に込められた真意を見極めようとしている。
〈き、気に食わぬ・・・殺すことは造作もなきことだが、何とかしてこの男に刀を放棄させたい!!この集中力を切りたい!!〉
芸術家の矜持が傷ついたようだ、玉壺は数本ある拳を握り締めている。
「さて――・・・」
すると笙が立ち上がった、鍛えていた刀を鞘に収めて―――・・・。
「笙殿・・・?」
「すまないな、鉄穴森。無理させたな、俺の刀の御守りまで頼むことになるがお前はもう休んでな」
自分の磨き上げた刀を鉄穴森に渡すと玉壺と鋼鐵塚の間に立ちふさがる笙。
「悪いが鋼鐵塚は真っ直ぐな男でな、刀に対する愛情が深い分、些細なことは気にすることもなく作業をするんだよ」
「さ、些細なことだと!?」
「ああ、お前みたいなのは今の鋼鐵塚にとっては些細なことだ」
コキコキと拳を鳴らしながら小屋の壁に立てかけてあった棍棒を手に取る笙。
「お前が探している権現門黒鉄家の鍛冶師ってのは俺だ」
「!」
「『鋼は命に尽くす』、俺たちはその教えを先祖代々受け継いできた。お前らを滅するためにな」
ゴンッ!
棍棒を地面に突き立てると玉壺の体に圧がかかる。
「実践に出るのは二年振りだが、体慣らしにはちょうどいいだろう。
鋼鐵塚を殺したいなら、まずこの俺を倒してもらおうか」
「ば、馬鹿な!鍛冶師にこんな力があるかけが・・・」
「権現門黒鉄家は老若男女問わず力が強ぇんだよ、それをこれからとくと叩き込んで教えてやるよ」
笙はニヤリと笑った。