第63話 炎が舞う
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「憎いだろう、お前の家族や友を奪った奴らが――・・・」
「・・・・・・」
『憎い』
自分の大切にしていたものを奪われて憎悪を抱かない者なのこの世にいるのだろうか?
いや、そんなはずはない。
憎い・・・憎い・・・憎い憎い憎い、憎い!!
『憎悪』の感情が理性を支配した時には彼女は鉈を持って走り出していた。
そして若様一行が宿泊している旅籠へ乗り込んだのだ。
もちろん旅籠内は騒然、家来たちは若様を守ろうと刀を抜いて燕薇に斬りかかる。
しかしいくら斬っても彼女は足を止めない、若様目掛けて一直線に走り抜けた、間に立ちふさがる家来は腕、肩、首、顔を斬り付け排除する。目的は仇討ち、若様の命だ。
「うわあああ!!来るなああァァ!!」
若様は情けない程に泣きながら後退る、燕薇のあまりの迫力に腰も抜けてしまったようだ。
山奥の娘には到底成しえないことだろう、だが人間の心というのは執念が強ければ強い程、その想いが体を突き動かす。
「・・・・・・」
「ひっ、ひいいぃぃぃっ・・・・!!」
家来たちを鉈で斬り倒して、血まみれになりながらも血走った目で自分に向かってきた燕薇を若様は怯えながら見上げていた。
「あああああぁぁぁっ!!鬼いぃぃっ!!鬼だあぁぁ!!」
そう叫んだ若様の首を燕薇は鉈で思いきり斬り落とした。
それからどうやって戻って来たのかは覚えていない。
彼女は父と祖父の亡骸を家の中に引きづりながらも運び入れ、最後にマシロを抱き上げて家の中に入った。
家族の骸が倒れている中で自分も倒れた。
今になって体中から痛みを感じる。
腕、肩、背中、顔、足――・・・浅手深手はあれど多数の箇所を斬られている。
よくこれでここまで戻って来れたものだ。
「みんな――・・・仇は討ったよ・・・これで、私・・・も・・・」
意識が薄れ始めてきた、そこへ外から何やら音が聞こえたかと思うと中に何かが投げ込まれた。
火の着いた油瓶だ、どうやら息子を殺された領主と奥方が家来に『焼き落として完全に殺してこい』と命じたのだろう。
木造の家はみるみるうちに燃えていく、しかし不思議なことに熱さも感じられなくなった。
〈これでいいんだ――・・・これで――・・・〉
これで自分は家族の待つあの世に行ける。
そう思った時だった。
「お前を死なせるのは惜しい」
再びあの男が現れたのだ。
「私が助けてあげよう、お前のその執念、興味深い」
そう言って無惨は彼女の傷口に自分の血を落としたのだ。