第63話 炎が舞う
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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『鷹場』とは鷹を訓練させる場所のことで燕薇の祖父や父親たちは大名家から『気に入った』と声がかかった場合、献上していたのだ。
「ふむ、あの鷹はなかなかいい」
若様は燕薇が訓練をしていたマシロに目をつけた。
マシロは見た目も美しいがとても賢く、狩りの腕前も確かなものだった。
若様も訓練を見てそれが分かったのだろう、すぐにマシロを献上するように伝えた。
「はあ、マシロをですか・・・しかしあれは娘の大事な鷹でして・・・」
「若様がご所望なのだ、いいから屋敷まで連れて参れ」
「そう言われましても・・・」
父親も娘とマシロの日頃の仲の良さは知っている、生まれてからずっと世話をして一緒に暮らしてきたのだ。
自分が育てた鷹なら多少の踏ん切りはついたかもしれない、しかし娘が手塩にかけて育てたと言ってもいい。
そんな二人を引き離すなどとてもできなかった。
「どうかご勘弁ください、マシロだけはどうか・・・他の鷹でマシロにも劣らないのもいますのでその鷹を献上させていただきます。
ですから若様にそのようにお伝えしてくださいませ」
父親はそう言って何とか若様の家来たちを帰らせた、だが若様が『どうしてもマシロが良い』と聞かず、自分の実母と父親である当主まで巻き込んで手に入れようとしてきたのだ。
家来だけならどうにかできたかもしれないが領地の当主が出てきてしまっては拒否はできない。
父親は仕方なく燕薇を一山超えた場所にある村に住む(燕薇の)母親の実家に向かうように言いつけて家を空けさせるとその間にマシロを若様に渡す手段を取った。
何も知らない彼女は久しぶりの母親の実家に行ける事、親戚に会えることを楽しみに出かけていった。
そして数日後、帰って来た彼女が見たのは悲惨なものだった。
まず目に入ったのは家の前に倒れている血まみれの父親と祖父の姿だ。
「おとう!じっちゃん!」
二人の側に座り込み様子を窺う、背中や胸部から血まみれだ。斬り殺されている。
次に家の中に入った、母親、祖母、兄弟たちも全員血まみれで倒れている。
「おっかさん!ばあちゃん!」
草鞋のまま中に入り込む、母親と祖母も息がなくぐったりしている。
「う・・・」
「!」
微かに声が聞こえたので振り向くと一番下の兄がまだ息があるようだ。
「兄ちゃん!どうした!!何があったんだ!?」
兄を抱き起して詳細を聞こうとする。
「わか・・さ、ま・・・が・・・きた・・・」
途切れ途切れに言う兄の話ではマシロを所望していた若様が来て、父と祖父がマシロ籠の中に入れてを引き渡そうとしたそうだ。
だがずっと焦らされていたためか若様がマシロに触れそうとした時、激しく抵抗したため怪我をしたのだという。
それに怒り癇癪を起した若様が父と祖父を斬殺、家来に家族皆殺しと飼っている鷹たちも雛もろとも殺してしまえと命じたそうだ。
兄は伝え終わった後、事切れた。
燕薇がすぐに鷹部屋に行くと鷹たちが雛を含め惨たらしい姿で死んでいた。
そしてマシロも――・・・
「・・・・・・」
籠の外から何度も刺されたのだろう、綺麗な羽根は血みどろだった。
「マシロっ・・・」
籠の蓋を開けてマシロの死体を抱き上げる。
「痛かったろう・・・怖かったろう・・・」
死んで固くなった体を抱き締めて泣く燕薇。
「可哀想に――・・・」
その時だ、背後からあの男が声をかけてきた。
「家族も友達も喪って――・・・一人残されてしまった」
「・・・・・・」
無惨だ、鬼舞辻無惨が彼女の前に立っていた。