第62話 柱になりたい理由
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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玄弥が鬼殺隊に入ったのには確固たる理由があった、そして目標があった。
それは柱になり、兄である実弥に認められること。
そして過去に自分が兄にしてしまったことを謝罪することだった。
不死川兄弟の実母はとても小柄だった、兄弟は早い段階で母親の体よりも大きくなった。
それは父親譲りだと思われる、彼らの父親は体格も良く背も大きかった、しかしどうしようもないろくでなしで人の恨みを買い、兄弟が幼い頃に刺されて亡くなったのだ。
そんな父親はよく家族を叩いたり殴ったりしていた。
小柄な母親はそんな子供たちを身を挺して庇ってくれた、そんな母親を玄弥は『すごい人』だと純粋に尊敬していた。
父が亡くなってからしばらくしたある日の晩のことだった、母の帰りがいつもよりも遅く、心配した兄が探しに出て行った頃、次男である玄弥は他の兄弟たちの世話をしながら帰りを待っていた。
弟や妹たちの不安なのかなかなか寝付くことが出来ずに朝方まで起きていた。
そしてふいに家の戸が叩かれた、弟妹たちは『母親が帰って来た』のだと思い、戸に集まる。
「待て!!開けるな!!母ちゃんじゃないかもしれな・・・」
この時代はまだまだ治安が良くなく、人攫いなども多かった。なので子供だけの家は不用心に人が来ても戸を開けるなと言われていた。
不死川兄弟の家も例に洩れず母親が言い聞かせていたので玄弥が止めようとした、しかしことは一瞬だった。
「!?」
戸が吹っ飛び、何かが家の中に入り込んできた。戸の側に集まっていた弟妹を引き裂いて――・・・。
玄弥自身も顔に傷を負ったが軽傷で入ってきたものの正体を探ろうとしたが薄暗くて見えない。
「グルルル・・・」
「つっ!」
中に入ったモノは自分を狙っている、大きさは野犬ほどだがとてつもなく速い。
ソレが自分に襲いかかろうと向かってきた時、兄の実弥が飛び込んできた。
「玄弥、逃げろ!!」
「兄ちゃん!!」
実弥はソレを掴んで家の外に押し出した。
「就也!」
玄弥はすぐに自分が抱いていた弟の名を呼んだ、しかし弟の体からは血が流れている。おそらく自分が襲われた時に一緒に裂かれただろう。
「弘!こと!貞子!寿美!」
他の弟妹たちも傷を負っている。
「傷口を押さえろ!すぐに医者を呼んでくるから!!あと少し頑張るんだぞ!!」
そう言って玄弥は外に飛び出した。
「!?」
しかしその先でさらに驚愕のものを見た。
鉈を持って血まみれな兄と同じく血まみれで横たわっている母だった。
「・・・・・母ちゃん!!」
玄弥は母親を抱き起した。
「うわああああああ!!母ちゃん!!母ちゃん!!」
揺さ振っても起きなかった、母からは呼吸は聞こえず体も冷たくなっていた。
兄が母親を殺したのだと玄弥はすぐに理解した。
「何でだよっ・・・!何でだよ!!何で母ちゃんを殺したんだよ!!うわああああ!!!」
玄弥は実弥を涙を溢れさせた目で睨んだ。
「人殺し!!人殺し――――っ!!」
その時のことを玄弥はずっと悔いていた。
あの時、わけのわからぬまま下の弟妹が殺され、自分の死を悟った。それ故に混乱したのだ。
でも後々冷静になればわかったことだ、家に突如侵入してきたあの野犬だと思っていたのは―――、鬼となった自分たちの実母だ。
玄弥も苦しかっただろうが最愛の母親を自ら手にかけた実弥はどんな気持ちだっただろうか―――打ちのめされているところに必死で守った弟から『人殺し』と非難されて、どんな気持ちだっただろうか。
父親が死んでこれから自分たちで家族を守っていこうと約束したばかりだったのに。