響凱によって落下することは免れた炭治郎たが足に残っていた半天狗の分身の鳥獣鬼の細胞から生えた頭に攻撃されようとしている。


スパッ！


「！」


攻撃を放とうとしている鬼の頭部を響凱が手刀で斬り払った。

「だ、駄目だっ・・・そいつは、斬ったら分裂するっ・・・」

「！」

確かに頭部は二つに分かれて各々口から音波攻撃を発生させる。
しかし・・・炭治郎はあることに気付く。


威力が落ちている。


そこで一つの結論が出た。


半天狗の体の分裂は無限ではない、おそらく今、霧香や禰豆子、玄弥が戦っている舌に『怒』と『楽』の印がある鬼が順を追って強く、今自分と相対している『喜』ともう一人、一緒に分裂した『哀』は力が劣る。

炭治郎は自分の足についている方の口めがけて刀を突き出した、ところが細胞は炭治郎の足を離れ、刀に巻き付いた。
そして後ろに気配が・・・。

上にいた鳥獣鬼が降りてきたのだ、また口が開かれる。また音波攻撃がくる。


「つっ」


しかしその攻撃は炭治郎の前に出た響凱が受けた。


「響凱！」

「小僧、止まるなっ！ここであやつを仕留めろ！」


響凱の体は一部音波で欠損したものの再生して元に戻る。

「ふむ・・・お前か、あの方の言っていた陰陽師に飼われているという鬼は？」

「（ピクッ）」

鳥獣鬼の言葉に響凱の眉が動く。

「弱者に飼われるとは・・・不憫よう、しかしそれを殺すのもまた喜ばしい事よ！恥知らずを抹殺できる！」


〈コイツっ・・・何にも知らないくせにっ・・・〉


響凱を馬鹿にするということは姉弟子である霧香や五大呪術家の人々を馬鹿にすることだ。
今まで自分が彼女らにどれだけ助けられたか、そして使役鬼たちがどれほど救われたか、何も知らずに『恥知らず』と罵る鬼たちが憎いと思う炭治郎。

〈倒さなければ！コイツだけでも！〉

そう思った時、刀が軽くなった。
見れば絡みついていた鬼の細胞が消えている。

「小僧、余所見をするな！」

「！」


響凱の声でハッとした時には胸部に攻撃を受けていた。

「ハッハッハッ！！」

鳥獣鬼は愉快そうに空を舞う。

「どうだ？俺の爪は？この速度の切れ味！！
金剛石をも砕く威力だ！震えるがいい！歓喜の血飛沫をもっと上げてみろ！！」

炭治郎の胸部に三筋の爪痕が残され、血が滴り落ちる。

〈しかし――・・・・〉


鳥獣鬼は響凱をチラリと見た。

〈あの鬼め・・・儂が小僧を裂こうとした際、背後から血鬼術で攻撃してきよったわ〉

そう、響凱は炭治郎を狙う鳥獣鬼を背後から狙い打ちするために腹の鼓を打った。
その証拠に翼に響凱の血鬼術の爪痕が残っている。

〈まともに喰らうのを避けるために角度を変えたせいで小僧に入る攻撃も浅くなってしもうたわ・・・なかなかどうして目障りよ〉

「相手は二人だ、間違えるなよ」

「？」

そこに炭治郎が言葉を発した。

「それから血飛沫を上げるのは・・・お前もだ」

「！」


気づけば自分の顔に縦一線の切り込みが入った、攻撃を受けつつ、炭治郎も自身の攻撃を与えていたのだ。

「っ・・・・小僧――――っ！！」


鳥獣鬼は再び口を炭治郎に向けて開いたのだった。