第46話 半妖
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「!」
「どうした?響凱」
その頃、海野家の鬼灯では津雲と響凱が鍛錬をしていた。
夜の帳の中、鬼灯の灯りが二人を照らす。
「霧香が泣いているような気がした・・・」
響凱が鼓を打つ手を止める。
「霧香の心が泣いている、感じるのだ・・・小生と霧香を繋いでいる呪(まじな)いを伝って流れ込んで来る」
響凱が心臓のあたりに手を当てる。
「・・・・・」
使役鬼は代々主である陰陽師の霊力を受けて契約を紡いでいる分、直系の主の心の変動に敏感だ。
特に響凱は霧香と主従以上に兄妹のように仲が良い。その分、強く感じるものがあるのだろう。
「・・・・・」
津雲は常々考えていたことを口にした。
「響凱」
「ん?」
「お前は五大呪術家について、どこまで知っている?」
「ざっくばらんしか聞いていない。
始祖の父は安倍晴明、母は妖怪の娘たち、発祥は平安時代、安倍晴明と娘たちの子らが初代となり産屋敷家と協定を結び、我ら鬼舞辻によって変貌した鬼に加え、悪霊、妖鬼などを祓う役割を担っていたと」
「そうか、わしも海野家に来たのは鎌倉の時代間近故、平安時代――・・・つまり一族の始まりの仔細を話すことは難しいが・・・いい機会かもしれん」
自身の庵に響凱を招き入れる。
「ここに座ると良い」
座敷に響凱を座らせる。
「少し昔話をしようか、お前も遠からず知ることになるだろう」
「何を?」
「五大呪術家の歴史をだ――・・・発祥は関西・京都の地だ。
当時、都となる平安京は山城国(現在の京都)にあったからな。
五大呪術家はお前も聞いての通り、五つの家に分かれている。
占星術を使う海野家、武器を鍛造する黒鉄家、祈祷除霊をする焔家、特殊物資の栽培をする岩倉家、特異医術・薬品の開発をする香炉家。
各々が互いに兄弟であり、その親族として協力し、安倍晴明の保護の元、暮らしてきたのだ。
清明が存命だった頃、安部一族の活躍を影で支え続けて来た」
「では、安倍晴明が陰陽師としてその名を知られることが出来たのも・・・」
「ああ、半妖の子孫の支えがあってのことだ・・・だが、安倍晴明が亡くなった後に事態は一変した。
初代たちと晴明と北の方の間に生まれた子供たちとの関係は良好だった、一部を除いてな。
悲しいことに良き理解者ばかりではなかった・・・」
清明の正室である北の方は生来の怖がりで夫の仕事も内心では納得はしていなかった。
紙の式神にも怯える、そのため使役した妖ものなどはもっての外だ。
彼女は同じ『安倍晴明の血を受け継いでいる』とはいえ五大呪術家の子供たちに対して良い顔はしなかった。
父親の清明のように陰陽師に憧れ、五大呪術家を『家族』だと認める子供たちもいれば、北の方のように異形を嫌う子供たちもいたのだ。
その異形を嫌う子供たちの行動で五大呪術家の子供たちの存在は当時の帝や一部の家臣に知られることになってしまう。
「つまり、腹違いの兄弟たちに五大呪術家は売られたと・・・」
「ああ、悪い言い方だが・・・もっと悪いことが起きた。帝が五大呪術家を私物化したのだ」
『己の周囲へ及ぶ脅威を祓うために働け』
帝が異形を嫌う清明の子孫と結託して五大呪術家に課したのが『自分に及ぶ災厄の除外』だ。もし断るならば日の本すべてに五大呪術家の事を知らせ、人間からも妖ものからも迫害されるようにしてやる。
その代わり、要求を受け入れるならば彼らの存在を知る家臣を一掃し、一族の存続を許すと脅してきたのだ。
『現在を犠牲にした未来の一族の存続』と『現実の一族の危機の回避した後の破滅』、選択肢など五大呪術家にはなかった。
晴明はもう亡くなっている、今の自分たちを『家族』と認めてくれている安部家の子孫たちには残念ながら晴明のように彼らを救う力はなかった。
彼らは屈辱を覚悟で要求を受け入れた。
こうして五大呪術家は帝の災厄を祓う『影の鬼狩り』として百数十年間、生きることになってしまった。
響凱は聞かされたことに愕然とした、自分が知りえないのは仕方がないにしろ五大呪術家の始まりにそんなことが起きていようとは・・・最悪、自分は霧香と出会うことはできなかったということだ。
「なんということだ・・・五大呪術家の平穏を壊したのが、腹違いとはいえ同じ父の血を引く兄弟たちだったとは・・・」
「うむ、今の五大呪術家から見てみれば想像もつかぬであろう。
わしが使役鬼として平安京で暮らしていた時もまだ一族は帝の支配下にあった。あれはひどいものだった・・・、呪術家の力で災厄を振り払っていた帝だが反対に邪魔に思った人間に対して妖ものを差し向けたりもしていた、その責めを負い、処断された五大呪術家の者たちも多くいた。
その中には、わしが代々仕えてきた当主の親族もいた・・・主が泣き崩れる姿は今も記憶に鮮明に残っている」
『一族存続のため』とはいえ、理不尽な扱い・・・。
「そんな時だ、あの一族が現れた」
「あの一族・・・?もしや――・・・」
「ああ、産屋敷家だ」
鬼殺隊の最高責任者で『お館様』と呼ばれる産屋敷家当主。
『先見』、いわゆる『未来予知』のような能力ができる一族でその能力のおかげで平安時代より地位を確立していった。
海野家の『占星術』とは違い、人の相を見て予知が見える。それは能力を持っている側からすればとても強力な武器となる。
「当時まだ妖の血も濃いため歳を取るのも遅かった初代たちは北の方の血筋家を宗家、自分たちを分家と区別され、宗家の末子を妻や夫に迎えて子を成し、一族を増やしていった。
宗家は陰陽術を嫌ったため学者や歌人などで権力を得ていき、分家は『影の鬼狩り』の役目を果たすため陰陽術の力を極めてきた」
しかしながら天才と凡人は紙一重、秀でている者が出てくる一方、どうしても技が習得できない者も出てくるのは仕方のない事・・・。
そこで五大呪術家が新たに設けたものが『種(たね)』だ。
現在の五大呪術家の各々の畑を守る一団、一族から力のない者が送られる最下層といわれることもあるが彼ら(呪術家)にとっては無くてはならない存在だ。