第43話 夢の背中
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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それは春の良い日和の天気だった――・・・
「・・・・・」
ある小屋の一室で女性が布団にくるまって寝ていると奥から盆を持った男性がやって来る。
手には三つの湯呑に急須、おにぎりがのっていた。
「お茶が入りましたよ」
「ああ、ありがとう」
持って行った先は縁側で一組の男女が座っていた。
男性は傍らに刀があるので武士だろう、女性は観世水の羽織を着ている。
「すみれちゃんはとてもいい子ね」
女性が腕の中で『すぴすぴ』と寝ている赤子を見て話しかける。
「おそらく安心するんですよ、申し訳ない。女房も寝てしまって・・・客人に子守りをお願いすることになって」
「気にするな、疲れているのだろう」
「ええ、子供を産むだけでも大仕事なのに日夜世話をするというのは大変なことだから」
「ああ、親というものはそういうものだろう。休ませてやらなければ倒れてしまうぞ」
女性から自分の赤子を抱き上げる父親。
「これを飲んだら帰ろうか」
「ええ」
「そんな!もっとゆっくりしていって下さい!あなた方は俺たちの命の恩人です!
あなた方がいなければ俺どころかこの子も生まれてはいなかった」
「いいえ、命の恩人だからといっていつまでも至れり尽くせりをさせてしまっては私たちも心が痛むわ。
この子が成長する時はもっと大変になるんだから今のうちに蓄えられるものは蓄えておかなければね。
このおにぎりはあなたが精力を付けて、もっとお仕事を頑張るために食べなさい」
女性がにっこりと笑う。
「・・・・わかりました、ならばせめて、あなたの事を後世に伝えます」
「必要ない」
「しかし・・・後を継ぐ方がいなくて困っておられるのでしょう?しがない炭焼きの俺には無理でもいつか誰かが・・・」
「必要ないんだ」
男はきっぱりとそう言った。
「炭吉、道を極めた者が辿り着く場所はいつも同じだ。時代が変わろうともそこに至るまでの道のりが違おうとも、必ず同じ場所に行きつく」
湯呑を置くと刀を持つ。
「お前には私が何か特別な人間のように見えているらしいが・・・そんなことはない。
私は大切なものを何一つ守れず、人生において為すべきことを為せなかった者だ。
何の価値もない男なのだ、私は・・・」
そう言って男は立ち上がった。
「つっ・・・」
そんなふうに言わないでほしい、どうか――・・・
頼むから、自分のことをそんなふうに――・・・悲しい、悲しい・・・
炭吉と呼ばれた赤ん坊の父親はその言葉を否定しようとしたが・・・。
「駄目ですよ、そんなふうに言っては・・・」
女性がやんわりとした口調で窘める。
「あなたはあなたらしく、できることをしましたよ」
「?」
「・・・・」
「それは――・・・」
〈・・・・・〉
そこでその光景は消えた――・・・
いや、夢だったのだ・・・炭治郎が見ていた、不思議な、でもどこか懐かしい夢。
―――――――――――――――
「炭治郎、まだ意識が戻らないなんて・・・大丈夫かな」
その頃、蝶屋敷には霧香と杏寿郎が見舞いに来ていた。
「胡蝶によれば君が飲ませた万能薬のおかげで命に別状はなかった、戦闘に参加させなかったことで回復の速度も順調だそうだ、もうすぐ目も覚めるだろう」
杏寿郎が優しく霧香の肩を叩く。
「竈門少年なら大丈夫だ、自分の弟を信じろ」
「杏寿郎さん・・・そうですね、炭治郎は強い子ですから」
杏寿郎の励ましの言葉にニッコリ笑う霧香。
そこへ―――・・・
「ああ――!!霧香さん!!」
なほが駆け寄ってきた。
「なほちゃん?どうしたの、慌てて・・・」
「炭治郎さんが!炭治郎さんがっ!」
切羽詰まったなほの顔に霧香は顔を真っ青にさせた。
「なほちゃん!早くっ!」
先に行っていたと思われるきよが迎えに来た、その両目には大粒の涙を浮かべている。
「・・・・・・」
「霧香!」
霧香の体は自然と動いていた。