間章 ご挨拶
名前変換
この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「では、勤め以外の時だけ・・・名前で呼ばせていただきます」
「ずっとでもいいぞ?」
「それは・・・ちょっと、あの・・・一応、上司と部下ですから。
お勤めの最中に柱を名前で呼ぶのは、その・・・恥ずかしいです///」
「・・・・・」
杏寿郎は、じーっと霧香を見ている。
〈自覚がない分、厄介だな〉
霧香は絶世の美女というわけではない、でも無理に飾るわけでもなく、媚びを売るわけでもない。素朴な女性だと杏寿郎は思っている。
末っ子として生まれた彼女だが『人に頼る』ことはあまりしない。
だから、彼女の甘える姿や恥ずかしがる仕草はとても可愛らしいのだ。
本人は自覚無しだが!(だからこそ杏寿郎は不安)
「いきなり変えていくことはない、ゆっくりでいい」
「はい、ありがとうございます」
「うむ、そろそろ中に入ろう。父上も待っているからな」
「はい」
「千寿郎、那津蒔殿たちも入ってもらおう」
「はい!兄上!」
「あ、あの・・・これ羊羹です!私と衣久様(いく:伯母さんの名前)で作りました!」
ももが手にしていた風呂敷を差し出す。
「ありがとうございます、食後にみんなで食べましょう」
千寿郎が受け取り、一同屋敷の中に入った。
―――――――――――――――
「父上!霧香が来ました、那津蒔殿も一緒です!」
「ああ」
煉獄愼寿郎、杏寿郎と千寿郎の父親に初めて顔を合わせた霧香。
〈煉獄家の男児は何故こうもそっくりなんだろうか〉
正直な感想だった、三人揃って髪の色も目の色も顔つきもそっくりだ。
「君は嘘がつけないな」
「え?」
「『素直な子』という意味だ、私たちを見て『そっくりだ』と思っただろう?」
「・・・・」
黙っている霧香に苦笑をする愼寿郎。
「改めて名乗ろう、煉獄愼寿郎だ」
「海野霧香です、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした」
「いいや、復帰してから任務が続けて舞い込んできたんだ。仕方のないことだ、私も――・・・柱だった頃はそうだった、だから気にするな」
少し愼寿郎の表情が曇ったのを霧香は見逃さなかった。
「那津蒔殿、先日は杏寿郎が世話になったな」
「いいや、こちらも大事な妹婿を救えて何よりですよ。血液採取の後の体調はいかがですか?」
「問題ない、血中の酒の濃度を薄めるための薬を貰い、飲み続けてからは身体が軽い。
あれから酒を控えるいい機会になったと思っている、ありがとう」
「それはよかった」
那津蒔はニカッと笑うと千寿郎の肩を叩いた。
「では、俺たちは千寿郎の手伝いをするんで少し席を外します。煉獄家の嫁になる霧香に嫁入り前の話でも聞かせてやってください。
千寿郎、台所に行くぞ~!案内してくれ~!杏寿郎、お前もだぞ~!」
「「?」」
「もも、手土産を忘れずにな」
「あ、はい!」
那津蒔は千寿郎と杏寿郎を連れて部屋を出た、ももも後ろから追いかけて行き、部屋には愼寿郎と霧香だけが残された。
「どうしたんだ?」
「・・・・」
直接的にではなく間接的に『機会』を作ることが上手い那津蒔、霧香は今、ここで席を外した意味がわかった。
「おそらく・・・愼寿郎様のお顔が変わったからだと思います」
「?」
「先ほど・・・柱だった頃のことをお話されていた時に少し、表情が曇りました」
「!」
「初対面で不躾ですが・・・奥様のことでしょうか?」
なるほど、聡い娘だ。瀬津寿のように変化に敏感である。
「ああ・・・瑠火は私にとって最愛の妻だった、それが病に罹り、私より先にあの世へ逝ってしまった。年上の私よりも先に・・・」
僅かだが目に涙が見える。
「私が任務に赴いている最中に妻は・・・瑠火は逝ってしまった。私は妻の死に目にも会えなかった。
当時、炎柱の書を呼んで自分の限界を感じ、絶望していた私にとって妻の喪失はこの世の全てを怨み、自暴自棄になるには十分なものだったのだ」
「そうですね、杏寿郎さんや千寿郎くんにとっても同じものだったと思います」
「・・・・・」
「杏寿郎さんは私の父にこう言ったそうです」
『父は母をとても愛していました、大きな存在でした・・・その母を失い、また炎柱の書のこともあり、父の中の炎が小さくなってしまった。
でも、俺は父に再び昔のように笑って欲しいと思います!今はまだ、その時でなくても・・・いつか、昔のように・・・あの強く、凛々しく、優しい父上に・・・っ』
「杏寿郎がそんなことを・・・・」
瀬津寿の前で泣きながら零していた姿が目に浮かぶようだった愼寿郎。