間章 父娘
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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チョロチョロ・・・カコーン――・・・
鹿威しが鳴る。
「・・・・・」
霧香は茶室にいた。
父の瀬津寿に呼び出されたためである。
瀬津寿は茶の湯を点てている。
「今度の任務もご苦労だったな、生きて戻ってきてくれて何よりだ」
「ありがとうございます」
シャカシャカと規則正しく茶筅がお茶の粉とお湯を混ぜている音がする。
「まずはお前が回復した祝いだ、飲むと良い」
そう言って点てた茶を霧香の前に差し出した。
「頂戴します」
作法に則り、茶碗を持ち、回し少しずつ飲み干す。
「結構なお手前で・・・」
「そう固くならずともいい、今の私はただの引退したジジイでお前の父だ」
瀬津寿は自分ように茶を点て始めた。
「今日、お前を呼んだのは・・・杏寿郎殿のことだ」
「!」
『霧香、俺は君のことが好きだ・・・一人の男として君が好きだ』
『君の鬼に対しての愛情も、人に対しての愛情も、五大呪術家の責務を背負って奮闘している姿も・・・・ここでこうして「十七歳の女性」としている君も、俺はたまらなく愛おしいんだ』
猗窩座との闘いの後に杏寿郎に言われた言葉が思い出される。
「無限列車の任務に行く前に杏寿郎殿が我が家の畑に出向いた時があっただろう」
「はい」
「実はな・・・その時に杏寿郎殿に『お前を嫁に欲しい』と言われたのだ」
「え?私を・・・煉獄家の嫁に?」
「ああ、父親として一番お前には苦労をかけたと思っている・・・それ故、お前の婿となる男は『お前と共に生き抜く強さ』を持った者を望んでいた。
責任感の強いお前のことだ、嫁入りしても鬼殺隊は辞めないだろう?」
「はい・・・というより、私は鬼殺隊に入った時から嫁ぐことは考えていませんでした」
「・・・・・」
霧香の言葉に固まった瀬津寿だが、その後に豪快に笑い始めた。
「?」
「いやいや、すまん!お前らしいと思ってな!
だがな、杏寿郎殿はお前を『守る』と言ってくれたぞ」
「え?」
「俺が先ほど言った『共に生き抜く男』になる、その証明をしてくれるのならお前を嫁に出すと承諾した。
お前の心中はまだ確認していないが、お前はもう『煉獄杏寿郎』という男のことを理解しているのではないか?」
「・・・・・」
確かに最初こそ『柱なんて鬼を善悪もなく、ただ斬るために存在している』と思っていた霧香だったが、裁判の翌日に海野家に来た杏寿郎と話してみて、どういう人間かというのが少し見えた気がした。
そして無限列車の任務の後の禰豆子への接し方を見て『仲間、鬼殺隊の一員として認めてくれている』ことがわかった。
この人は人間であろうと鬼であろうと『しっかり見て判断してくれる』と感じた。
強いのはもちろんだが、炭治郎のように・・・心が優しく、愛情に満ち溢れている人なのだと。
「そうですね・・・『煉獄杏寿郎』という男は背中を預けるのに十分足り得る方だと思います」
「うむ、そうか・・・その顔では、気持ちの方も問題なさそうだな」
「へ?」
「『へ?』ではない、父親として気持ちが向かない相手に嫁がせるのも忍びないからな。
でもお前のその顔は『杏寿郎殿に好意を持っている』と思って良さそうだ」
「・・・・////」
瀬津寿はクスクスと笑っている。
霧香は今自分がどんな顔をしているのか、鏡がないのでわからないが、父のこの笑いっぷりだと・・・さぞ口を開けてポカーンと抜けた顔をしているのだろう。
「ククク・・・まあ、杏寿郎殿ならば心配あるまい。誰よりも一途な男の息子だからな」
瀬津寿は目を細めてそう言った。