第41話 戦いの果てに
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「悔しいよう!悔しいよう!何とかしてよォ!お兄ちゃあん!!死にたくないよォ!!」
「・・・・!」
自分の顔も崩れてきている妓夫太郎は堕姫を見ている。
「うわああぁぁ!!死にたくない!お兄っ・・・」
堕姫は完全に塵となった。
「梅!!」
それは妓夫太郎の口から自然と出ていた。
そう、堕姫の本当の名前は『梅』だ。
『堕ちた姫』なんて酷い名前ではなかった、いや『梅』という名前も思い出してみれば酷いものだ。
彼女の名前は死んだ母親の『病』の名前を取ってつけられたのだから。
妓夫太郎は人間だった頃のことを思い出していた。
羅生門河岸――・・・
遊廓の最下層で二人は生まれた、そこは子供は生きているだけで金がかかるので迷惑千万。
それだけ困窮した地域だったのだ。
妓夫太郎は生まれてくる前に殺されそうになったこともあり、生まれてからも邪魔でしかなく何度も殺されかけた。
枯れ枝のように細い体の妓夫太郎だがそれでも必死に生き延びてきた。
『虫けら』と言われようと、『ボンクラ』と蔑まれようと、『のろまで腑抜け』、『役立たず』と罵られようと・・・醜い容姿であるが故に殴られ、石をぶつけられようとも・・・。
そんな自分を変えるきっかけになったのは『梅』、妹が生まれてからだ。
汚く醜い自分とは違い、可愛く生まれてきた梅。彼女は成長と共に美しくなり、自慢の妹だった。
それと同時に自分が他の人よりも力が強いことに気付いて遊廓の取り立ての仕事を始めた。
すると蔑んでいた者達が違う意味合いで自分を恐れ始めた。
『強者』として自分に媚び諂うようになってきた、初めて自分の醜さを誇りに思えた。
美しい妹は自分の劣等感を吹き飛ばしてくれた、良いところに気付かせてくれた。
兄妹二人ならこれからの暮らしが良いものになると確信していた。
しかし、それは脆くも崩れ去った。
ある時、妹が客である侍の目玉を簪で突いて失明させてしまい、その報復として縛り上げられ生きたまま焼かれた。
妓夫太郎が戻った時には、梅はもう丸焦げだった。あの美しい姿はどこにもなかった。
梅(妹)の損失は妓夫太郎の最後の精神を壊すには十分だった。
「わあああ!!やめろやめろやめろ!!俺から取り立てるな!!」
今まで自分に周りがどんな『幸』をくれたというのだ。
いくら望んでも望んでも払いのけられた、そんな自分にようやく手にした『幸』を何故奪う?奪われなければならない?
『神も仏もない』と妓夫太郎はあらん限りの声で泣き叫んだ。
すると妓夫太郎の背中に鋭い一撃が奔った。
「こいつで間違いないか?」
「はい!そうでございます!
感謝いたします、厄介払いができて良かった!本当に狂暴でねぇ、取り立て先で大怪我させたり、最近ではもう歯止めが効かなくて困ってたんですよ。
梅のことは残念でしたけど、可愛い子が見つかったらまたご紹介しますので」
「・・・・・」
背中にじわりと温かい感触がする。
血だ、自分は斬られたのだ・・・後ろで会話する二人のうち、男の方に・・・。
もう一人は自分と梅が働いている遊廓の女将だろう、そしてこの侍が・・・。
『鬼に堕ちてでも「妹のことを殺した奴」が許せなかったんだろうな』
ああ―――・・・そうだ、許せなかった――・・・
梅を殺したこの男も、俺を厄介払いしたこの女も、俺たちから何もかも奪っていくこの世間も・・・全部、許せなかった!!
妓夫太郎は瀕死の状態でありながらその侍と女将を殺した、自分たちから『幸』を取り立てた怒りをまずはこの二人に晴らした。
それから丸焦げの妹を抱えてどこを歩いたのかは覚えていない。
覚えているのは雪が降って真っ赤な自分と真っ黒な妹を白くしていったことだ。
とても白く、冷たい雪が・・・自分たちを白くしていく。
どうしてだ――・・・何故、自分たちはこんな目に遭う?
人生は『禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如し』、良いことも悪いこともかわるがわる来るはずなのに・・・何故、自分や妹には『悪い』ことしかこないのか・・・。