〈ば、バカなっ！腕一本しか無えんだぞ、ありえねえだろうが！！ふざけんなよなああ！！〉

驚こうが、否定しようが天元の攻撃は妓夫太郎の血鬼術を全て打ち消している。
毒で体の動きが鈍くなろうが、新たに左目を失おうが天元の攻撃は緩まない。

「！」

譜面による天元の攻撃に左手を斬り落とされる。


「今だ！跳べェェ！！」


琴乃が飛び上がり、薙刀を振り下ろした。

〈フンッ！お前は力が強い分動きは鈍いだろうがああ！！〉


妓夫太郎は残った右手の鎌で琴乃の左肩を貫いた。

「ぐっ！」

〈毒でお前もお陀仏だああ！このまま鎌を引き下ろして殺してやるぜええ！〉


しかしそれは叶わなかった。

「何ッ・・・！！」


琴乃が妓夫太郎の右手首を掴んでいる。

「お前、毒が効かねぇのかああ！？」

「んなわけないでしょうが・・・でもね、あなたを倒すためなら少量の毒くらいは受けても問題ないわよ！！」

「！」


琴乃の背後に型の体勢を取った霧香がいる。


〈しまったああ・・・この女は俺の動きを固定するためにワザと鎌を受けたのかああ！〉


「雪の呼吸・弐の型――・・・『霙（みぞれ）』！」



ズシャッ！！


霧香の日輪刀が妓夫太郎の頸を貫いた。


〈コイツ・・・！！空中でどうやったらこんなに勢いが・・・〉

貫かれながらも霧香の背後を見る妓夫太郎。

〈ネズミ！？〉

そう、霧香が空中で勢いをつけられたのは空中に同時に飛び上がったムキムキ鼠たちに押してもらったからだ。



ゴシャッ――・・・！！


貫いた勢いで転倒する霧香。


〈貫かれただけなら大丈夫だ！！妹の方ももう回復する！！〉


妓夫太郎の思った通り、堕姫も自分の頸を回収してくっつけていた。

「あの怪力女っ！！落とし前はつけさせてもらうわよ！」

走って向かってくる堕姫、さらに帯を天元と琴乃に伸ばそうとする。

「お兄ちゃんはやらせないんだから！！細切れになれっ！！」

堕姫の帯が揺らめいた時・・・。


「だからアンタは学習しないっていうのよ」

「！」


ガシッ！！


「！？」

「油断大敵」

妓夫太郎の頸に刺さった霧香の日輪刀の柄を琴乃が掴んだと思うと地面に向かって頸木のように固定した。

「があっ・・・ぐおっ！！」


ミシミシッ・・・！


妓夫太郎の頭を片手で鷲掴む、琴乃の握力に妓夫太郎の頭蓋骨が悲鳴をあげている。


「これで終わりよ、あなたも・・・あなたの妹もね」

「！」


「お兄ちゃああん！！」



「光の呼吸・伍の型―――・・・『一線一瞬』！」

「鋼の呼吸・陸の型―――・・・『金鬼丸（ごんおにまる）』！」


高速の一閃と力強い一撃が二人の鬼の頸を刎ねた。
二つの頸は胴体から距離を置いたところに転がり落ちる。


「キャ―ッ！！やったわあの子たち！！斬りましたよォ！！雛鶴さんッ！！草葉の陰から見てくださいね！！」

「アンタ、意味わかって言ってんの！？馬鹿！！」

「え？」

「雛鶴さん！まきをさん！須磨さん！」

「終わったのか？」

「あ！煉獄様！悲鳴嶼様、時透様、炭治郎くんも！」

廓の人々を避難し終えた四人が合流してきた。