〈近距離で私の帯をっ！伸ばそうとする度に既に切断されていく！！〉

「オオオオオオ！！ぬぅうああ！！」

帯の邪魔も入らなくなった伊之助は堕姫に直進する。

〈マズい！〉

伊之助の二刀が堕姫の頸に迫る。


「今度は決めるぜ！」

「「行け！！伊之助！！」」

攻撃を避けるために上空に飛び上がったアカリと帯を全て打ち落とした善逸が叫ぶ。

〈斬れないわよ！斬れるわけがない！こんなガタガタの刀で！〉


バキャッ！


「陸の牙！」


伊之助が強く踏み込む。

ギャリリッ！

二刀が堕姫の頸を両側から挟み、食い込む。


「『乱杭咬み（らんくいがみ）』！！」




ザンッ！！




「・・・！！」



斬られた、柱でもない鬼狩りにまたしても自分の頸が斬られた・・・堕姫は衝撃を隠せない。


「よっしゃああぁぁ！！」


すると伊之助が堕姫の斬られた首を掴んだ。

「頸！頸！頸！くっつけらんねぇように持って遠くへ走るぜ！！」

「頼むわよ！伊之助！！」

「おうよ！」

「このっ！！糞猪！！放しなさいよ！！」

堕姫は髪を伊之助に向かって伸ばす、しかし伊之助は難なく断ち切ってしまう。

「ブワハハハッ！！攻撃にキレがないぜ！！死なねぇとはいえ急所の頸を斬られてちゃあ弱体化するようだな！！グハハハハ！！」

「何ですって！？」



―――――――――――――――

その頃、霧香は――・・・


「・・・・・」

「柱ならもう殺った、あとはお前たち雑魚だけだああ」

妓夫太郎の傍らを見ると天元が倒れている、しかも片腕を切り落とされた状態で・・・。

「お前も運がいいなああ、柱に守られてよおお」

「・・・・・」

「まあ、運が良いこと以外取り柄がねぇんだろうがなあ、可哀想になあ・・・まあ、どちらにしろ毒にやられてたしなあ、心臓も止まっちまってお陀仏だ」

霧香はただ茫然と天元を見ている。

「みっともねえなあ、みっともねえなあ・・・お前らは本当にみっともねえなあ、特にお前」


妓夫太郎は霧香を指す。

「お前が一番みっともねえ。
お前・・・『弟や妹を傷つけたり泣かせた悪鬼は斬る』とか言ってたよなあ？
でもお前とあの小僧、そして鬼の女は血縁の匂いがしねぇ・・・何でお前、血縁もない奴のこと守ってんだあ？」

「血が繋がっていようといなかろうと・・・炭治郎は私の弟弟子、同じ師匠の元で育った者同士、家族も同然だ。
そして禰豆子ちゃんは炭治郎の妹、だから彼女もまた私の『妹』だ。守る理由は十分だろう」

「そうかああ！！ひひひっ！だったら尚更みっともねぇなあ！！だって、お前守れてねぇじゃねえか！！」

「・・・・・」

「仕方ねえか、お前は人間・・・できることに限りがあるしなあ！」



「お前・・・」

「ああぁ？」

「さっき『妹をイジめた』とか言ってたな？」


ビキッ！！


霧香の目の周りに血管が浮き出る。

「『いじめ』の本来の意味、教えてやろうか・・・？

『自分より弱い立場の者に一方的に精神的、身体的に苦痛を与えること』、つまりお前らは自分より弱い立場の人間に精神的な恐怖と身体的な苦痛を味合わせてるんだよ、この何百年もの間にな！！」


ドゴッ！！


「！」


妓夫太郎の鳩尾を蹴り飛ばした霧香。

「私たちのように対等に力が張れるのならまだしも・・・お前らはずっといじめてるんだよ。お前たちもかつては同じだった人間を・・・」

〈速ぇえ！？〉

妓夫太郎の両腕を割く。


「お前の妹は『鬼同士の殺し合いが無駄』と言った」

いつの間にか拾っていた苦無を両腕に突き刺した。

「あ"あ"あああっ・・・！！」

「私から言わせたら『弱い立場の者を仕返しに踏みつける行為』の繰り返しの方がよほど無駄だな」

壁に貼り付けにされた妓夫太郎は霧香の変貌に戸惑っている。

〈どうなっていやがる・・・あいつ、匂いが変わったぞおぉ？〉

「それに・・・守れてないのはお前だ」

「！」

妓夫太郎は目を見張る。