〈ちくしょうッ！もう毒を分解しやがったか！！〉

「いやあ、よく効いたぜ！この毒はなあ！」

〈再生しても動きはまだ鈍いはずっ！！〉


琴乃が一気に間合いを詰めて薙刀を振り下ろす。

「血鬼術――・・・『円斬旋回・飛び血鎌（えんざんせんかい・とびちがま）』」

「！」

腕を振りもせずに斬撃を広範囲に向けて放った。


「音の呼吸・肆の型――・・・『響斬無間（きょうざんむかん）』！」



ボゴン！ボゴン！ボゴオォン！


「きゃあっ！」


爆風によって妓夫太郎の斬撃から逃れられた琴乃。
天元も己の斬撃で負傷を逃れるが妓夫太郎の姿を見失ってしまう。


「雛鶴！」

「天元様、私に構わず鬼を捜してくだ・・・」


雛鶴に警戒を呼び掛けようとしたが一足遅かった、妓夫太郎は雛鶴の背後にいたからだ。

「よくもやってくれたなああ・・・俺はお前に構うからなああ」

「雛鶴―――っ！！」

天元は助けに行こうとするが堕姫の帯が邪魔をする。


『天元様、上弦の鬼を倒したら一線を退いて普通の人間として暮らしましょう』


ある日、雛鶴が言った。

『忍びとして育ち、奪ってしまった命が戻ってくるわけではありませんが・・・・やはりどこかできちんとけじめはつけなければ恥ずかしくて陽の下を生きていけない』

思えば彼女は嫁の中でも一番しっかりしていた、他の二人をまとめてくれていたのも雛鶴だ。

『でも、その時に四人が揃っていなくても恨みっこなしですよ』


蜻蛉が飛ぶ空の下で約束したこと、天元はよく覚えている。





「やめろ―――っ！！」





ビシッ！！



「！」



妓夫太郎の雛鶴を掴んでいた腕が裂けた、それと同時に建物が揺らぐ。
妓夫太郎はその場からすぐに距離を置いた。

〈何だあ？何が起こったぁあ？〉



「ゲホッ、ゲホゲホッ・・・」

「大丈夫ですか？」

「っ・・・あなた・・・」


雛鶴の後ろには霧香がいた。
彼女が『雪ばしり』で妓夫太郎の腕を建物ごと切断し、雛鶴を助け出したのだ。


「ここは危険です、離れていてください」

「逃がさねぇよお」

「雪の呼吸・参の型―――・・・『八星模様』！」


斬りつけてくる妓夫太郎を止める。

〈観ろ、もっとよく観ろ・・・ヤツの攻撃を観ろ！負傷を負わせる道を・・・隙を観つけろ！〉


もっと集中、意識を集中させろ―――っ・・・



霧香の瞳が変わる、澄み渡る水の世界を映す青い色に――・・・






続く