「グルルルルッ・・・」


禰豆子の目の色が変わる、口から涎を垂らして遊女に襲いかかる。
しかしそんな禰豆子を止める者がいた、炭治郎だ。

「だめだ！！耐えろ！！禰豆子！！」

日輪刀の峰で禰豆子の口を抑える。


「グアアアッ！！」

「辛抱するんだ！禰豆子！」

自分の体で禰豆子の体を縛るようにしがみつき、抑えつける。

「ごめんな！戦わせてごめん！」

炭治郎は禰豆子がどんな目にあったか、考えただけでも心が痛む。
そこら中から禰豆子の匂いがするからだ、どれだけ堕姫に斬られたことか、苦しかったことか・・・。

「禰豆子、眠るんだ！もう闘う必要はないッ！眠って回復をっ――・・・」

「グアアアッ！！」

「つっ！！」

禰豆子が炭治郎ごと天井を突き破った。

「ぐあっ・・・！」

禰豆子の怪力と天井を突き破った際の衝撃をまともに喰らった炭治郎、負傷している身には耐えがたいほどに痛い。
でも放すわけにはいかない、今放しては、妹は確実に人を喰ってしまう。

そしてさらに最悪なことが起きた。


「よくもまあ・・・やってくれたわね」

堕姫が追いかけてきたのだ。

「そう、その娘・・・血鬼術も使えるの。
鬼だけ燃やす奇妙な血鬼術、しかもこれ・・・なかなか治らないわ。

ものすごく・・・もの凄く癪に障るわっ・・・」


肌が焼け焦げ、内側の肉が見えている。
目を見開き、牙を見せ、血管が浮き出ている・・・怒っている。

マズい、非常にマズい・・・ここには自分たちだけではない、一般人もいる。
そして自分は妹を抑えるので精一杯だ、余力がない。


どうする・・どうする？どうする！？



シャラリ・・・


「！？」

「おいこれ、竈門禰豆子じゃねーか、派手に鬼化が進んでやがる」

目の前に天元が現れた。

「え？え？」

「『え？』じゃねーよ、お館様の前で大見栄切ってたくせ、何だ？この為体は？」

「す、すいません・・・？」


じとーっと見られて小さくなる炭治郎。


「お前、柱ね！そっちから来たの、手間が省けたわ！」


堕姫が嬉しそうに語尾を上げる。

「うるせぇな、お前とは話してねーよ、失せろ」

しかし天元は目に入っていないとばかりにあしらう。

「お前・・・『上弦の鬼』じゃねぇだろう、弱すぎなんだよ。俺が探ってたのは『お前』じゃない」




その時だ、視界が揺れた。


「え・・・」

天元を見ていた堕姫だがいつの間にか天井が見えていた。












続く