第34話 三夜通い
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「でも姉弟のように仲が良いっていう風に見えていたのも本当よ、これからも仲良くね」
「はい、ありがとうございます」
「お役目っていうのは『行方不明になった人たち』と関係あることなの?」
「はい、須磨さんのことも含めていなくなった人たちは必ず見つけ出します」
「そう・・・それを聞いて少し安心したわ」
ホッと胸を撫でおろしている鯉夏。
「実はね、私・・・明日にはこの街を出て行くの。こんな私でも奥さんにしてくれる人がいて・・・今、本当に幸せなの。
だからこそ残して行く他のみんなが心配だった、でも私には調べる術もなかった」
「そうだったんですか・・・でも無理もありません、あなたはこれから自由に生きるんです。
どうか幸せに、笑顔で暮らしてください」
鯉夏の傍に寄り、包を渡す。
「あなたは結婚したい人はいるの?」
「え?///」
「その顔はいるのね・・・あなたなら大丈夫、炭ちゃんのこともあんなに可愛がってるんだもの、きっと旦那さんに尽くすいいお嫁さんになるわ」
霧香の顔に触れる鯉夏。
「あなたや炭ちゃんに会えなくなるのは寂しいわね・・・」
悲しそうな顔をしている鯉夏を見て、自分の中の寂しい思いが溢れてくる霧香。
しかしそれはすぐに緊迫感へと変わる。
「どうしたの?」
「鯉夏さん、私から離れないでください」
日輪刀を構えて背後の襖を睨みつけた。
「隠れてないで出てこい、忍び込んでいるのは分かっている」
「?」
困惑している鯉夏と彼女を背中に庇う霧香。
「鬼狩りかい・・・あのガキだけじゃなかったんだね」
「!?」
襖の奥の闇から美しい女が現れる。
「善逸くんを隠したのもお前か?」
「そうよ、鬼狩りと分かった以上嗅ぎ回られたら迷惑だしね」
女の目には『上弦・陸』の文字がある。
「上弦の鬼か」
「そうよ、あたしは堕姫。さあ、そこを退きな。あたしはそこの鯉夏に用があるんだ」
「喰う気か?」
「そうよ、そいつは今夜までしかいないからね・・・忘れないように喰っておかないと、ねえ?」
シュルルルッ!!
堕姫の帯が向かってくる。
「っ!」
ザンッ!ザンッ!
「ふ~ん、思ったより速い動きだね・・・でも、人間一人を庇いながらどれだけ保つでしょうねえ?」
「つっ!」
また帯が向かってくる。
「雪の呼吸・参の型――『八星模様』!」
あくまで鯉夏と自分の周囲に来た帯のみを切り払う。
しかし堕姫は霧香の連続技の一瞬の隙をついて鯉夏に帯を伸ばす。
「きゃあっ!」
ガシャンッ!
鯉夏の腕を引き、共に倒れたため帯は鏡を貫く。
「フフフ、いただき・・・」
「!?」
倒れた拍子に別の帯が鯉夏を縛り上げる。
「無駄だったわね、いくら速いといってもこの程度・・・柱じゃなきゃアンタたちなんて簡単に折れる小枝同然よ」
堕姫が嫌な笑みを浮かべる。
「『柱でなければ小枝も同然』?
甘く見られたものだな、私たちも・・・」
「?」
「そんなに『見くびる』のが好きなら存分に見ろ、そしてしっかりと改めるんだな」
「何をよ?」
「『過去の認識を真に受けていた自分』をだ」
霧香の体に闘気が込み上げる。
―――――――――――――――
その頃、京極屋では楼主である旦那が亡くなった女房のお三津の着物を手にしていた。
着物は亡くなったお三津が来ていた時のもので一部が流れた血で染まっていた。
「お三津」
旦那は蕨姫を恐れていた、彼もまた彼女が『人間ではないこと』に薄々気が付き始めていた者の一人だ。
しかし口外しなかったから今のところは生きられている、だが、蕨姫に問いただしたお三津は死んだ。
おそらく殺されたのだ、蕨姫に・・・。
でも自分には愛する妻を殺されても怒る度胸すらない。
相手は『人間ではない』のだから・・・。
「つっ――・・・!」
その時だ、喉元にヒヤリと冷たい感触がしたのと同時に後ろから声がした。
「善逸と雛鶴はどうした?簡潔に答えろ、問い返すことは許さない」
それは男の声で地底から出ているように響いてくる、全身から嫌な汗が噴き出す。
「ぜ、善逸は消えた・・・雛鶴は病気になって切見世へ・・・」
切見世とは遊女の最下級といわれる『鉄砲遊女』が男の相手をする女郎屋のことである。
主に体が弱くなったり、病気に罹り、遊廓では使い物にならなくなった女の行き場所だ。