第34話 三夜通い
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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新造としてお披露目をして三日目、杏寿郎は約束通り来てくれた。
「ようやく近くで君を見れるな」
三会目は遊女と客が馴染みとなり、距離を詰められるようになる。
杏寿郎は改めて霧香の姿を見た。
伸びきっていない髪にかつらを足して結い上げ、白粉や紅を使用して綺麗に化粧をしている。
「普段とは印象が違うな」
「私もまだ変な感じがしているんです、普段は化粧も何もしないから・・・上手くできているといいのですが」
「・・・・」
杏寿郎は霧香の肩を抱き寄せる。
「大丈夫、とても綺麗だ」
「・・・・///」
恥ずかしくて杏寿郎の胸に顔を埋める。
―――――――――――――――
荻本屋でも三会目を迎えていた。
「悲鳴嶼様・・・本当に来てくれたんですね」
お酌をしながら話しかける小鎖音こと琴乃。
「当たり前だ、君は笙からの大事な預かり人だ。危険な目には遭わせられない」
「ふふふ・・・責任感が強いですね」
口ではそう言ったものの悲鳴嶼にとって琴乃のいつもと違う声音に惹かれたのも事実である。
「君は隊服でも華やかな服装をしているようだがもともとそういったものが好きなのか?」
「いいえ、でも私は女ですから。
『剛力』の力を持って生まれたといっても女です、だからそれを恥じることなく生きたいんです。なので普通の任務の時も敢えて袴などの姿ではなく裾の長い着物を着ているんです」
「なるほどな、君らしくていいな」
「ありがとうございます、では私の方からも一言よろしいですか?」
「ああ、何だ?」
「隊服ではない悲鳴嶼様はとても新鮮です、素敵ですよ」
「ん?そうか?」
「はい、兄から悲鳴嶼様の昔のことは少し聞いています。前まではこんな姿で過ごされていたんですね、子供たちと一緒に、明るく楽しく」
「・・・・・」
悲鳴嶼の目から涙が流れた。
「ごめんなさい、あなたの過去を思い出させてしまいましたね・・・でも、今のこの生活はあなたにとって大事なものではありませんか?
楽しいと感じることはありませんか?」
「・・・・・・」
自分の目の下を何かが触れた、それは自分の流した涙を拭ってくれている。
「たとえ危険と隣り合わせでも・・・私は今の生活や出会えた仲間のことが大好きです、大切です。
もちろんあなたのことも・・・出会えてよかったと思っています」
「琴乃ーー・・・」
「あなたはとても優しい、涙もろい、でもそれが私にとっては『誰よりも強いもの』だと感じます。
子供たちもそんなあなただから頼り、慕い、日々の生活の中で笑っていたのでしょうね。今の私と同じように・・・」
ああ、何故だろうか・・・この娘は自分よりも遥かに力が強いのに、自分よりも何倍も優しく脆いのに・・・・。
「ありがとう・・・」
「!」
再び涙を流して悲鳴嶼は彼女を抱きしめていた。
―――――――――――――――
―京極屋―
「・・・・・・」
「ねえ、どうしたの?」
こちらも三会目の夜。
無一郎は篝火新造ことアカリに話しかけた、今日の彼女はいつもの覇気がなく、顔も背けたままだ。
「・・・・」
「泣いてるの?」
「っ・・・!」
アカリの肩が震える。
「何かあったの?」
「・・・・・・善逸が、私の弟弟子が、いなくなったんですっ」
「弟弟子?」
「あなたが一昨日に廓の外で会った金髪の子・・・私と一緒に来たんですっ・・・」
「どうして消えたの?」
「二日目の昼に姉役の花魁と揉めて気絶して・・・でもあの子、そんなに弱い子じゃない!
じゃなかったら『ここまで』生き残れているわけないものっ」
アカリは口では善逸の悪口は言っているものの彼の人一倍努力してきたことは認めていた。
自分も同じく努力をして報われてきた者の一人だからだ、そして雷の呼吸で壱の型しかできなくても六連技を生み出すまで成長したのだ。
回復訓練や身体、技能向上訓練も続け強くなっていることも知っている。
『怖い怖い』とは言っていても善逸は『やる時はやる男』だということをアカリも知っているのだ。
第一人に気を遣うのが常の善逸が自分に一言も告げずに姿を消すのは信じられないことだ。
「宇随さんには言ったの?」
「はい・・・鎹鴉経由で伝えました、明日には残りの二つの廓にいる組にも伝わるはずです」
「そっか」
無一郎は考えた、こんなとき自分はどうすればいいかわからない。
今まで他人には興味を示して来なかった、すぐに忘れるからだ。
でもこの少女、焔アカリだけは忘れることができない。彼女は自分の中で何らかの形で残り続ける。
無一郎はアカリの手を握った。