間章 希望と意志
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「杏寿郎様!」
「!」
アカリが蝶屋敷へ向かったのは夕方だった。
「アカリか!無一郎に連れ出されたようだが、どこに行っていたんだ?」
弟の千寿郎を連れてニコニコしながら話しかけてくる。
「・・・・・杏寿郎様」
「ん?」
「お話があります」
アカリの真剣な顔に何か察したのだろう、千寿郎に先に行くように促した。
そしてある程度千寿郎が遠ざかった後にアカリに向き直った。
「どうした?」
「霧香のことが好きなのですか?」
「・・・・無一郎に聞いたのか?」
「はい」
いつもはあまり曲げない眉を八の字に曲げて軽くため息をついた杏寿郎。
「ああ・・・そうだ、俺は霧香を好いている。一人の女性として」
「っ・・・、やはり、そうなのですね・・・」
アカリは両手を握り締める。
「霧香は何て?」
「・・・・・それは、教えられない」
「!」
「これは俺と彼女のことだ、君が間に入ることは許さない」
「・・・・」
確かに『人が人を好く』ことは自由だが『割り込む』ことは自由ではない。それが他意があっては尚更だ。
「では、あと二つ答えてください」
「何だ?」
「霧香のどこに惹かれたのですか?」
「ふむ・・・難しいな」
考え込む杏寿郎、だが答えは呆気ないものだった。
「強いて言えば『俺の一目惚れ』だ」
「!?」
「俺は裁判の日、彼女の内面を垣間見たあの時にもう恋をしていたのかもしれん・・・役目を背負っている彼女と鬼を『家族』と呼んだ素の彼女を同時に見て、惹かれたのだと思う」
裁判のあの時、自らの意見を相手の自分を見てはっきりと口にした霧香、響凱を見守り、泣いて喜んだ霧香、そして今回の無限列車で猗窩座と闘った霧香。
どんな時でも芯を鈍らせずに真っ直ぐであった凛とした姿、そんな彼女に杏寿郎は惚れたのだ。
「そうですか・・・。
では、二つ目です・・・私もあなたが好きです、一人の男性として」
「!」
虚を突かれたが杏寿郎はすぐに落ち着けた、アカリの気持ちには何となく気が付いていたからだ。
「そうか、ありがとう・・・だが、その想いには答えてやれない。すまん」
杏寿郎は頭を下げる。
アカリも杏寿郎の態度に自分が彼に向けた恋情が知られていたのを感じ取り、思わず泣いてしまった。
「いつからですか・・・?」
「君と俺が幼い頃、家同士で付き合いがあった時からいつも俺の所に来るところから好かれているんだろうというのは気づいていた。
だが、それが異性に対する想いだと気づいたのは君が『継子にしてくれ』と俺に言いに来た時だ。
あの時、俺は他の呼吸を見て見聞を広げてほしいと答えた。それは紛れもない本音だ。
だが同時に『兄以外の男を知らない』状態で恋愛をしてほしくなかった、視野が狭くなるからな。
もっとたくさんの老若の男性と接して心を成長させてほしいと俺は思ったんだ、それを越えて尚も俺を好いているのならばその時に俺なりの答えを伝えようと思っていた」
「・・・・・」
もしかしたら杏寿郎の言ったことは結果的に良かったのかもしれない。
自分もまだ幼いが彼もまだ二十歳の青年、まだまだ人間を、異性を知るには時間がかかるだろう。
そして霧香という女性に出逢い恋をした、同じような印象の女性は今まで接したこともあるだろう、でも彼の『恋情』の気持ちを一歩前に踏み出させたのは霧香なのだ。
実際、アカリ自身が霧香に少しずつ心を開いているのも事実だった。
というのもアカリは普段『嫌い』、『敵』だと印象深く思った人間には心を見せない様にしているからだ。
最終選別の時、海野家の娘が来ると聞いたアカリは『落ちこぼれ=弱者、関わるだけ無駄』だと思っていた。
しかし実際に会った霧香は『弱者』ではなかった、輝哉から『華陽隊』の名を貰い、一緒に行動していると益々自分が彼女を誤解していたと思えた。
彼女は『弱者』ではなく『弱者から這い上がってきた者』だった、だから鬼に対して救済と処断の線引きを明確にでき、さらには心を見通す力が強い。
それは人間に対しても同じこと、初対面の不死川にも杏寿郎にも物怖じせずに立ち向かった。
アカリではそんなことはできなかっただろう。