間章 希望と意志
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「何で?」
「杏寿郎様は私の初恋ですっ!」
「へえ~・・・」
相槌は打っていてもアカリの手は放さない無一郎。
「じゃあ、君の恋は実らなかったんだね」
「しれっと酷いこと言わないでください!!」
柱であっても言って良いことと悪いことがあると腹の中で我慢しているアカリ。
「だって実際、あの人・・・」
「『あの人』ではなくて『煉獄杏寿郎』様ですっ!!」
「・・・煉獄さんは君の仲間の彼女を選んだんだ。数年前から(?)の付き合いなんだろうけど、結果として君は意識されてなかったってことでしょ」
「つっ!」
アカリの目がカッと見開かれたかと思うと『パシンッ』という音が響いた。
「・・・・」
無一郎が自分の頬に手を当てる、ジンジンと痛みが反響してくる。
「否定しないでよっ・・・あなたに何がわかるのっ・・・?」
「・・・・・」
「私は、杏寿郎様の助けになりたくて・・・役に立ちたくてここまで来たの・・・」
アカリはポロポロ涙を流している。
「本当はあの人の継子になりたかった!でもあの人が・・・杏寿郎様が『他の呼吸を知って見聞を広めろ』と仰ったから、私は自分の呼吸を編み出して、最終選別を突破してここまで来たの!!
もし継子になれなくてもあの人の傍で役に立てるように!そして想いを打ち明けても恥ずかしくない剣士であるように!
でも、その目標が断たれるなんて・・・そんなの悔しいじゃないっ!!」
「・・・・・」
「私の知らない間に『好きな人』が取られるなんて悔しいっ!納得できない!!
だから戻って話を聞きたいっ!二人と本音でぶつかりたいの!私の本音をぶつけたいの!!」
お互いに心のわだかまりを無くしたいという意味もあるのだろう。
アカリにとって杏寿郎は剣士になるきっかけをくれた人だ、『初恋』のこともあるが『彼を守る役目』を誰かに譲らなければならないというのも簡単にはいかないものだ。
「時透様、非礼をしたことはこの場で謝ります・・・でも、あなたは自分の仰ることをよく考えるべきです。今、あなたの仰ったことは人ひとりの大切な『想い』を踏みにじる等しいものです」
「『想い』?踏みにじる?」
「そうです、あなたもご自分の剣士になった理由を貶されたらお怒りになるはずです。
あなただって『誰かの役に立つため』、『鬼の被害から人々を救いたい』とそういった思いがあるから鬼殺隊に入ったのではありませんか?」
「それは・・・」
「私は『大切な人を鬼舞辻や奴の配下によって失うのは嫌だ』と思ったから鬼殺隊に入りました、そしてその『大切な人の中で最も想う人』が納得できない理由で離れようとしている」
無一郎の手を振り払うアカリ。
「言っておきますが私は霧香を責めに行くのではありません。
それに時透様には関係のないことですから引き留めないでくださいませ、では失礼します」
そう言うとアカリは蝶屋敷へ戻って行った。
無一郎はアカリに叩かれた頬からまだ手を放せずにいた。
いつだっただろうか・・・自分も誰かに『否定』されて怒りを感じたことがある。
誰だっただろうか・・・いつだろうか・・・目を閉じてみるが思い出せない。
そもそも無一郎には過去の記憶がない、そして出来事を忘れてしまう記憶障害を持っている。
でもアカリの『怒りの顔』と『嘆きの顔』はまだ目を瞑った脳裏に浮かび上がる、はっきりと・・・。
「焔アカリ・・か・・」
無一郎は追うことはせずにそのまま自分の館に帰って行った。
―――――――――――――――
一方、時間は少し前に戻る。
蝶屋敷の洗い場では琴乃と悲鳴嶼が片付けをしていた。
「申し訳ありません、柱である悲鳴嶼様にこのようなことを・・・」
「いいや、気にするな」
井戸から水を汲んでくれた悲鳴嶼から桶を受け取って盥に流し込む。
「実はお前と話がしたかったのだ」
「・・・・・」
その言葉に琴乃の動きが止まった。
「笙は息災か?」
「・・・ええ、お聞きとは思いますが今は、我が家で祖父の後を継ぐために鍛冶師として頑張っております。
おかげさまで黒鉄一族の中でも指折りの名人となりました」
「そうか、お前の日輪刀も笙が鍛えたそうだな」
「はい・・・『命に尽くす刃を鍛える』のが自分の願いであり、夢であると日々修行を続けた賜物です。
あの仕込み棍棒には戦いの最中、兄の愛情や思いを強く感じます。妹として心強いです」
琴乃は食器を洗い始める。
「私は・・・笙に申し訳ないと思っていた」
「・・・・」
「一介の寺子屋で読み書きを教えていただけの自分と代々続く由緒正しい陰陽師の家を持つ笙が同じ師匠の元へ弟子入りし、私の方が最終選別の許可をもらった・・・共に修練を積む中、笙が自分の『剣士としての才能』に苦しんでいたのも知っている。
だから笙が『師匠の元を去る』と言ったときも私は引き留めなかった。
笙に対しての申し訳なさともしかしたら心の中で私を恨んでいるかもしれないと・・・そんな気持ちがあったからだ」
琴乃は洗う手を止めずに悲鳴嶼の話を聞いている。
「お前は兄を差し置いて最終選別を突破し、柱になっている私をどう思っているのかは知らん。
だが、これだけは言わせてほしい・・・私は今も笙と一緒に闘っている。
あいつの『剣士』としての願いを一緒に背負っている、私が柱になれたのも笙の願いあってのことだ、だから・・・感謝している」
悲鳴嶼は涙を流す。