間章 父談義
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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三人は庵の中に入り、客間として使用している部屋に腰を下ろした。
安岐は愼寿郎の手土産の風呂敷包みを開いた。
「まあ、新しくできたお店のお饅頭だわ!ここの美味しいって聞いていたから気になっていたの!」
中の箱を取り出した安岐は店の名前を見た瞬間、キラキラした表情に変わった。
彼女は海野家の中でも甘味好き、瀬津寿が当主だった頃も噂のお菓子の情報を仕入れていたくらいだ。
「すまんな、愼寿郎殿」
「いいや、安岐殿が気に入ってくれたようで良かった」
「私、お茶淹れてきますね。待っててくださいな」
饅頭を持って子供のように出て行く安岐を見送って互いに小さく噴き出す。
「ったく、幾つになってもあれは変わらん」
「変わらないのは何よりだ、俺のようになっては安岐殿や晴哉殿たちも悲しむだろう」
「・・・・・」
愼寿郎の言葉に頷きこそしなかったものの苦笑した瀬津寿。
愼寿郎は改めて頭を下げた。
「瀬津寿、今回のことは本当に感謝している。杏寿郎のこともそうだが、俺のところに来て、俺を改心させてくれたことは何度頭を下げても、謝意の言葉を言っても足りん」
「いいや、お前は変わろうと思えば変わることができたんだ。
ただ息子たちにしてきたことがある手前、戻すことができなかっただけだ。俺はその手助けをしたまでだ、お前は自分で戻ってきたんだ。まずは自分を褒めてやれ」
愼寿郎のつむじを眺めながら言う瀬津寿。
「だがな、愼寿郎・・・これだけは言っておく。
『二度目』はないと思え、お前が再び堕ちれば、もう這い出せなくなるぞ。
瑠火殿と息子たちに恥じぬ生き方、そして煉獄家のことを考えるなら、もうつまらんことで己を見失うな」
「ああ、わかっている・・・俺は『始まりの呼吸』にこだわり過ぎたのだ、本当に愚かだった。
炎の呼吸は煉獄家が生み出したもの、それを極め続ければよかっただけなのだ。
お前の言う通り、俺は大きなものを掲げ過ぎたのかもしれん」
「まあ、それもお前が純粋に愛した結果だがな。剣術も瑠火殿も・・・お前は柱だった頃から真っ直ぐだった、杏寿郎殿と同じくな」
「ああ・・・俺にとって過ぎた息子だ、杏寿郎は」
「ハハハハッ!お互いに『優秀』な子供を持つと大変だな!」
晴哉、那津蒔、椛、霧香、それぞれ違った才覚で芽吹いた子供たち。
瀬津寿はどの子も『優秀』だと思っている、それは瀬津寿自身、子供は比べるものではないと思っているからだ。
人間は生まれながらにして違うのだ、育った環境、人間、触れるもので子供の成長は早くもあれば遅くもなる。
各々の子供が違っていいのだ、みんなが違って、みんながそれで良い。
それからお茶を淹れて来た安岐が合流し、久方ぶりに話に花を咲かせていた。
「そういえばお前の下の子だが・・・」
「千寿郎か?」
「ああ、その千寿郎という子が那津蒔に懐いているそうだ」
聞いて愼寿郎も驚く、人見知りする方だと思っていた千寿郎が短時間に懐く相手など多くはない。
しかも那津蒔は杏寿郎と歳が近いといっても三つくらいは上のはずだ。
「あいつは杏寿郎殿とどこか似ているところがある・・・故に千寿郎くんも馴染むのが早かったのかもしれんな。
娘の霧香が香炉家で療養しているが杏寿郎殿と那津蒔と一緒に世話をよくしてくれているそうだ」
「そうか・・・」
それで毎日、昼餉を用意した後に二人揃っていなくなるのかと知った愼寿郎。
「今度、千寿郎くんも連れて来るといい。晴哉や椛も喜ぶだろう」
「ああ」
杏寿郎もそうだが千寿郎も最近表情が明るくなったように思える。
それは自分の血を取りにきたあの那津蒔という青年の他にもその霧香という娘も変わるきっかけになったのだろう。
「俺の家は家族揃ってお前たち家族に助けられているな」
「気にするな・・・『人』は互いに支え合うものだ、お前たちは今までが内側に籠り過ぎたんだ。もっと外を頼ればいい」
「フッ・・・そうだな」
茶を口に含んで笑う愼寿郎。
「ところで杏寿郎殿からは聞いたのか?」
「ん?何のことだ?」
「実は・・・」
瀬津寿が言いかけた時、鎹鴉が飛んできた。
「あれは・・・杏寿郎の鴉だな」
「カアァ――!杏寿郎様カラノ手紙!瀬津寿殿宛ニ手紙ッ!」
「ほう」
要から咥えていた手紙を手に取ると中を開けて黙読する瀬津寿。
「ふむ・・・」
「どうしました?あなた」
「どうやら杏寿郎殿が先走ったらしい」
「まあまあ!」
瀬津寿や安岐は把握しているようだが愼寿郎は何のことかさっぱりだ。