間章 父談義
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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煉獄兄弟の父・愼寿郎は今、海野家の門を叩いていた。
息子の杏寿郎が目を覚まし、屋敷に戻ってきたのでそのお礼にきたのだ。
「はい」
門から女の童が出てくる。
〈海野家の式神か・・・〉
「どちら様でしょうか?」
「俺は煉獄愼寿郎という者だ、海野家前当主の瀬津寿殿にお会いするため参った」
「はい、承っております。どうぞ」
女童が愼寿郎を招き入れ、案内する。
瀬津寿は妻の安岐と隠居をしているため同じ敷地内ではあるが海野家の本家の館とは別のところに住んでいるのだ。
「愼寿郎殿」
「!」
声をかけられたので振り向くとそこには晴哉がいた。
〈瀬津寿の上の息子か・・・大きくなったな〉
晴哉と最後に会ったのは確か五年以上前だ、その時はまだ成人していないと記憶している。(大正時代の成人年齢は二十歳)
数年前に当主の座を瀬津寿から譲り受けたと聞いていたが、自分は新当主の挨拶の席にはいなかった。既に剣士を止めていたからだ。
「晴哉殿か」
「お久しぶりです、お元気そうで何よりです」
「ああ・・・」
四人兄弟姉妹の中で瀬津寿に一番良く似ている晴哉、当主となったからか徐々に貫禄が付き始めている。
晴哉は愼寿郎が『瀬津寿に会いに来た』と女童から聞き、後は自分が案内するからと下がらせた。
「この度は杏寿郎殿が大変だったそうで」
「ああ、だが瀬津寿殿と君や下の弟が奔走してくれたおかげで命を繋ぐことができた。ありがとう」
「いいえ、私は妹のためにしたことです」
「妹?」
「四年前、上の妹の椛は婚儀の席で鬼の奇襲を受け、大事な者が鬼となってしまった・・・ただでさえ望まぬ婚姻だった上に、その席で本当に恋い慕う男が鬼にされてしまった。
そして相手側に無礼を働いた、本来ならば狩られても仕方がない事です。
『鬼が人間に戻る』術は今に至っても解明されておりません、今生ではもう二人は結ばれないかもしれない・・・そう思うと私は哀れでならなかった」
「・・・・・」
「だから下の妹には同じ思いはさせたくなかった」
隣りを歩いている晴哉は当時のことを思い出したのか瞼を伏せた。
「その下の妹は杏寿郎と親しいのか?」
「我が家から鬼殺隊に託した剣士の一人です、杏寿郎殿とは柱合会議の際にお会いしています。
その時、彼が我が一門に興味を持たれたようでここに来られました」
「そうか」
「それに杏寿郎殿が好物と言っていたので我が家から唐芋をお屋敷にお届けしましたよ」
『そういえば』と思い起こす愼寿郎、確かに杏寿郎が今回の無限列車の任務に行った後に唐芋が自分の膳に入るようになった。
「あの唐芋は海野家のものだったのか・・・あれは旨かった」
「恐れ入ります」
歩きながら話していると本家の館から少し離れた場所に庵があった。
「父上、煉獄愼寿郎殿がお着きになりました」
晴哉が伝えると戸が開いた。
「おお、愼寿郎殿!良くいらっしゃったな!」
にこやかに笑いながら瀬津寿が出てきた。
「瀬津寿殿、書状でも伝えた通り本日は礼を言うために参った」
「そう固くならなくてもいい、お互い隠居した身だ。先日のように砕けた話し方をしてもいいぞ、ハハハハッ!」
「父上、愼寿郎殿が困っています。海野家の敷地内だからと言ってあまり力を抜き過ぎないでいただきたい」
「晴哉、お前は少し家の中では力を抜いた方が良いと思うぞ?」
「私は当主です、そして今は来客中です」
「堅い奴め」
「あらあら、当主だった頃のあなたにそっくりですよ」
男三人が奥を見ると瀬津寿の妻の安岐が出迎えに来た。
「愼寿郎様、お待ちしておりました」
「安岐殿、久しいな」
「ええ、お手紙をいただいたときは主人と一緒に喜んでいたんですよ。
ここで立ち話もなんですから上がって下さい」
中に招き入れる安岐。
「晴哉、あなたはどうする?」
「私は遠慮させていただきます、せっかくの機会ですから『子を持つ親同士』でお楽しみ下さい」
晴哉はそう言って去っていった。
「うふふ、気を遣って・・・誰に似たのかしら?」
「お前だ」
「あら、嬉しいことを言ってくれますね」
瀬津寿と安岐の様子を見て愼寿郎は妻が生きていた時の頃を思い出す。
感情を表に出すのが得意ではなかったが自分は妻を想っていた、今の二人と同じように。
「愼寿郎様、さあ、お入り下さい」
「あ、ああ・・・お邪魔する」
愼寿郎は手にしていた風呂敷を安岐に差し出した。
「つまらんものだが受け取ってもらいたい」
「まあ、何かしら!」
安岐は風呂敷を受け取るとウキウキした表情になる。
瑠火とは対照的にとても表情豊かな安岐、しかし自分としては瑠火の方が良いと思ってしまう。
頭の中ではあるものの惚気ている自分がやや恥ずかしくなってきた。