第31話 温かい人
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「!?」
「ごめんね、私じゃ千寿郎くんのお母さんのような温かさは出せないかもしれない。
でも、千寿郎くんは本当に『頑張ってる』って思う。お母さんが亡くなっても煉獄さんと力を合わせてお屋敷のことや剣の稽古、勉学・・・いろいろなことをちゃんとこなしてきたと思うよ」
「霧香さん・・・」
「寂しくても、辛くても、お母さんが大切に想っていたお父さんを支えたくて・・・煉獄さんが見ていないところでも自分自身でたくさん頑張ってきたんだよね!えらいよ、千寿郎くん!」
千寿郎の中で何かが溢れた。
「あ・・・」
ボロボロボロ・・・
気づけば涙が零れていた。
「せ、千寿郎くんっ!?ご、ごめん!私何か変なこと言った?」
泣かせてしまったことに焦っている霧香。
「い、いいえ・・・いいえっ・・・大丈夫です、あなたは何も、おかしなことは・・・言って、ません」
両手で涙を拭う千寿郎。
「で、でも・・・」
「嬉しかったんですっ・・・」
「え?」
「今まで兄と一緒に頑張ってきました。父上のことも、煉獄家のことも・・・母が守りたかったものを一緒に守っていこうと兄と約束したからです。
・・・・でも、僕は正直・・・力不足だと思っていました。
稽古をしても結果が出せず、父上の前に行くと震えてしまい、兄上のように毅然と振る舞うことが出来ずにいました。
僕はずっと兄の足手まといになっているのではないかと・・・思う事がありました。
そんな僕を兄上は愚痴一つ言わず、笑みを絶やさずに励まして支えてくれました」
「千寿郎くん・・・」
霧香はたまらず抱きしめていた。
「!」
「『足手まとい』だなんて思わないで、あなたは精一杯頑張ってるんだから。
煉獄さんが千寿郎くんを支えてくれているように、千寿郎くんが煉獄さんを支えてきたんだよ」
「僕が・・・兄上を?」
「うん、だから今まで頑張ってきたことを否定しないで。これからもっと強く、大きくなれるんだから・・・大丈夫だよ、大丈夫」
霧香は千寿郎の背中をポンポンと優しく叩いた。
「つっ・・・!!」
千寿郎は霧香の背中に両手を伸ばして抱き締め返した、小さく嗚咽も漏らし、病院服が濡れるにも構わずに泣いていた。
――大丈夫だよ、大丈夫
この言葉に胸につかえていたものがとけて流れ去ったように感じた、涙と一緒に外に流れているような感覚だ。
〈兄上、あなたの仰る通り・・・霧香さんは温かいです・・・本当にとても温かい〉
千寿郎の嗚咽はしばらく続いた、霧香も落ち着くまで背中を擦る。
〈よもやよもやだ・・・〉
それを数分前に来た杏寿郎が姿が見えない様にしながら壁に背を付けて聞いている。
〈瀬津寿殿といい、那津蒔殿といい、霧香といい・・・何故、人の心を掴むのがこれほど上手いのか?これではもう海野家には頭が上がらないかもしれんな〉
父・愼寿郎を説き伏せた瀬津寿、千寿郎とすぐに打ち解けた那津蒔、そして自分に恋心を抱かせた霧香。
繋がりが薄かったとはいえ、こうも次々と手玉に取られては杏寿郎も男が廃る。
せめて微々たるものでも霧香に迫りたいものだと考え、ある決意をした。
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「グズッ・・・申し訳ありません・・、僕・・・」
「いいよ、今まで我慢してたんだから。
私の前でよければたくさん泣いて、愚痴も言って、怒ってもいいよ?」
「そ、そんな・・・それこそ申し訳ないです!」
「でも煉獄さんには言いにくいでしょ?」
「うっ・・・はい・・」
「なら、私のところにおいで。私でなくても海野家に行ってもいいよ、那津蒔兄さんも千寿郎くんの話を聞いてくれると思うし、晴哉兄さんや椛姉さんも・・・たくさん聞いてくれるし、話した後は笑顔になれると思うよ」
〈この人は・・・〉
どこまで自分の心を軽くしてくれるのだろうかと千寿郎は真っ赤になった鼻をスンスンさせながら『ふにゃり』と笑った。