第30話 太陽が見えた
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この小説の夢小説設定鬼滅の刃のIFストーリー(もちろん二次創作)
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「っ!?」
気が付くと廊下にいた。
どうやら病室へ向かう通路に繋がっていたようだ。
「さあ、こちらです」
歌津羅は人気のすくない病室に入って行く。
杏寿郎も千寿郎も中に入って見るとそこは個室で寝台に霧香が眠っていた。
顔色は那津蒔から聞いていたように良さそうだ、呼吸もしている。
だが、意識が本当にないように見えた。呼吸も『寝ている』という穏やかなものではなく、息をしているかしていないか近づいてみなければわからないくらい小さいのだ。
「私は席を外します、お帰りの際は外にいる者を呼んでください」
「わかった、ありがとう」
歌津羅は病室を出て行く。
杏寿郎は寝台の横にある椅子に座った。
「千寿郎、お前も座るといい」
「はい」
千寿郎は椅子に座っても霧香を見ている。
「この方が霧香さんですか?」
「ああ」
杏寿郎から話は聞いている。
最初は表情の読めない娘だったが鬼殺隊や役目から離れると花のように綺麗な笑顔を咲かせると・・・。
そして何より鬼のことを大切にしていると、自分は『鬼』とは倒すべき相手としか思っていなかったが霧香は善鬼と悪鬼を見極め、善鬼を『家族』と呼び、悪鬼を斬ることによって救う。杏寿郎は『相当の覚悟』がなければできないと言っていた、この女性は本当にそんなに強い心を持っているのだろうか?
「『意外』そうだな、千寿郎」
「え?す、すみません・・・こんなに華奢な女性が兄上の言ったように過酷な道を歩んでいるようには見えないので」
「『過酷』?霧香がか?」
「はい、鬼を『家族』と呼ぶのはそれほど信頼関係や周囲の言葉も背負うということです。
それはとても過酷だと僕は思います・・・」
「ハハハハッ、確かにな・・・俺も思った。
鬼と人間が信頼関係などあり得ないとな・・・だが、霧香と彼女の家族の鬼が『そうではない』と証明してくれた」
裁判の時の霧香と響凱の事を思い出す。
「あの時、鬼は霧香を喰わない様に自分の腕に噛み付いた。
家族の縁を断つ術を施され飢餓状態でありながらも、柱が『本能を出せ!』と囃し立てても・・・鬼は必死に耐え、耐えきれなくなった時でさえ己の腕を噛んで偲んだ」
「鬼が・・・本当ですか?」
「ああ、俺がこの目で見た。それほどこの少女が鬼に対しての愛情は深いのだ」
杏寿郎は目を細める。
それを表情を見た千寿郎は兄は本当にこの人を想っていると確信した。
「兄上!僕にこの人のお世話をさせてください!」
「いいのか?家のこともあるだろうに」
「大丈夫です!兄上の大事な方のお世話、是非僕にさせてください!」
「うむ、良く言ってくれた、千寿郎!俺もしばらくの間、任務はないだろうからここに通おうと思っている、一緒に来よう」
「はい!」
兄弟そろって微笑むと杏寿郎は霧香を見つめた。
〈霧香・・・早く君の声が聞きたい、笑顔が見たい、料理が食べたい。
早く目を醒ましてくれ、戻ってきてくれ・・・〉
霧香の頬を撫でながら杏寿郎は強く思った。
――――――――――――――
「!」
霧香は目を覚ました。
ピチチ・・・ピヨピヨ・・・
サラサラサラ・・・コポコポ・・・
サ――ッ・・・
「ここは・・・」
『生死の境目の世界だ』
「?」
振り返るととても懐かしい人物が立っていた。
「お祖父ちゃん?」
『その呼び方・・・あの頃と変わらないな』
その人物は海野家の先々代の当主で霧香の祖父だ。
「どうしてここにお祖父ちゃんが?」
『お前と話をしたくて来たのだ、お前が黄泉の国に行く前にな』
祖父は空間を見た。
『お前には生と死の狭間の空間はこのように綺麗な場所だと思っているのだな』
「え?」
『ここは死んだ者の想像した風景をそのまま映し出す、お前の心には青空の広がる森林のような光景を想像していたのだな。
実に綺麗な世界だな・・・』
祖父が亡くなった時、自分はまだ幼い子供だった。記憶も朧気だったが、父のような言い回しをする声が鮮明に残っている。
なのですぐに祖父だと分かったのだ。